Yahoo! JAPAN

“サケが遡上してくると人も来る”苦境を乗り越えた「サケのふるさと 千歳水族館」の31年(千歳市)

北海道Likers

菊池さん

市街地を流れる千歳川を、館内から直接観察できる『サケのふるさと 千歳水族館』。秋には、緋色に輝くサケたちの姿を間近に見ることができます。そんな同館は、1994年の開館以来、リニューアルや運営の転機など、さまざまな歩みを重ねてきました。

今回は、水族館をこよなく愛する筆者が、館長・菊池基弘さんにインタビュー。『サケのふるさと 千歳水族館』の変遷と、その舞台裏をひもときます。

「サケのふるさと 千歳水族館」ができるまで

画像:北海道Likers

「水族館ができる以前から、サケを求めて多くの人が訪れていたんです。」

1960年代、千歳川周辺では、サケの遡上をひと目見ようと多くの人々が訪れていたのだと『サケのふるさと 千歳水族館』館長・菊池さんは語ります。現在も使用されている漁具『インディアン水車』によるサケ漁も、当時は観光客の関心を集めていました。

当時の観光ブームのなか、「人と魚がこれだけ集まる場所で、この状況を活用しない手はない」との声から生まれたのが、『千歳サーモンパーク構想』。その中に水族館の建設も含まれていました。管轄の問題など紆余曲折がありながらも、そうして『サケのふるさと 千歳水族館』の物語が始まりました。

「千歳水族館」の危機

画像:北海道Likers

1994年9月のオープン以降、入館者数は順調に増加し、1997年にピークを迎えました。

しかしその後、来館者数は減少の一途をたどり、状況打開のためにさまざまな対策が講じられることに。市民向けの割引パスポートの導入や、2005年の道の駅への登録など、集客を目的とした取り組みが続けられました。

それでも来館者数の大幅な回復には至らず、レストランの撤退や観光ニーズの変化も重なって、大きな転換を迫られることに。数多くの会議と調査を重ねた末、水族館を含む道の駅全体のリニューアル計画が動き出します。

サケに救われる

画像:北海道Likers

リニューアルでは、以前からあった「大人だけで行っても面白くない」という印象を払拭し、“大人も子どもも楽しめる”コンセプトを基に工事が行われました。

大水槽などの基本的な設備を変えることなく、壁や照明を工夫することで、限られた予算の中で見事に実現しました。

リニューアル後は来館者数も順調に推移。胆振東部地震やインフルエンザの流行など、いくつかの困難にも耐えながら運営を続けていましたが、2020年には新型コロナウイルスの影響が襲います。

「サケに助けられながらも、“サケが遡上してくると人も来るのか”といった手探りの状況が続いていましたね。」

新型コロナウイルスの影響で一時は来館者が減少し、人気回復が課題となっていた『サーモンパーク千歳』。そんな中、2022年にはサケの大遡上が発生し、多くのメディアに取り上げられるなど大きな話題に。一躍注目を集め、多くの人が足を運ぶきっかけとなりました。

さらに翌2023年には、道の駅がリニューアル。サケを主役に据えた展示や空間演出で、『道の駅 サーモンパーク千歳』の名にふさわしい姿へと進化を遂げたことも、来館者数増加を後押しする追い風となっています。

これからの「千歳水族館」

画像:北海道Likers

2024年には開館30周年を迎え、入館者数30万人を達成した『サケのふるさと 千歳水族館』。館長を務める菊池さんはこう語ります。

「やはり、水族館に来た後で、すぐ隣にこんな自然のフィールドがあることを多くの人に意識してもらいたいです。そこから一歩踏み出して、自分から外に出て川の生き物や環境について考えるきっかけになれば嬉しいですね。」

多くの困難を乗り越えて、今も続く水族館。

「水族館だけで完結するのではなく、その先にもう一歩踏み出すきっかけが生まれたらうれしいです。だって、窓ひとつ隔てたらすぐそこには自然が広がっているんですから。その景色を見て感じられることがたくさんあることを、みなさんに知っていただきたいです。」

秋が来ると、真っ赤なサケを見ることができます。

詳細情報

サケのふるさと 千歳水族館
住所:北海道千歳市花園2-312
電話番号:0123-42-3001
営業時間:9:00~17:00(冬季:10:00~16:00) ※入場券の販売は、閉館の30分前で終了
定休日:なし
入園料:【大人】800円【高校生(要学生証)】500円【小・中学生】300円【子ども】無料
【障がい者(大人)】400円【障がい者(高校生)】250円【障がい者(小・中学生)】150円

北海道Likersライターのひとこと

外に出ればすぐそこにある自然に気付いてほしい。環境が変わりゆく現代で、水族館という場所を守り続けることの意義を垣間見ることができます。

水族館から外に出るとき、自分の意識に変化があるのかもしれません。

文・取材/niwatori
取材協力/サケのふるさと 千歳水族館

【画像】北海道Likers

※この記事は取材時点の情報です。最新の情報は各店舗・施設にお問い合わせください。

【関連記事】

おすすめの記事