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【倉敷市】【3/9(日)まで開催】倉敷考古館 企画展「空から見た洞窟遺跡」〜 はるか旧石器時代の人々の営みに想いをはせて

倉敷とことこ

【3/9(日)まで開催】倉敷考古館 企画展「空から見た洞窟遺跡」〜 はるか旧石器時代の人々の営みに想いをはせて

美観地区の中心、中橋の前にある「倉敷考古館」。土蔵造りの外観は倉敷美観地区を代表する風景の一つです。

古代吉備の遺跡や古墳からの出土品をおもに展示している博物館ですが、現在企画展「空から見た洞窟遺跡」を開催中です。古代の遺跡は数あれど、今回ピックアップしている「洞窟遺跡」とは一体どのような遺跡なのでしょうか。

展示から見えてきた旧石器時代の人々の営みと、倉敷考古館と洞窟遺跡とのつながりについてレポートします。

企画展「空から見た洞窟遺跡」の概要

本展では、長崎県佐世保市にある特別史跡「福井洞窟遺跡」を中心とした北部九州の洞窟遺跡の空撮写真からひも解かれる古代人の生活のようすについて、貴重な出土品と合わせて紹介しています。

倉敷考古館は1950年の開館間もない頃から、岡山だけでなく各地の調査に参加しており、洞窟遺跡もそのひとつです。

また、今回の企画展は岡山理科大学、佐世保市教育委員会との共同企画として開催されています。

期間・入館料についての詳細は、チラシの画像を見てください。

福井洞窟遺跡とは

今回の展示の中心となる福井洞窟遺跡は、氷河期の終わり頃には人々に利用されていたと推定されています。

洞窟遺跡というのは簡単に言えば、古代の人々の住まいです。当時、自然にできた洞窟に人々が徐々に定住するようになってきました(半定住)。

洞窟遺跡に人が住んでいた形跡を示す土器や石器といった出土品が、今回のおもな展示品となります。

福井洞窟遺跡からの出土品

インタビュー ~ 企画展開催によせて

なぜ、長崎県佐世保市から遠く離れた倉敷考古館にて、今回の企画展を開催することになったのでしょうか。理由は、倉敷考古館の開館初期のエピソードにありました。

今回の企画展が開催された経緯、倉敷考古館としての思いや特に注目してほしい部分について、学芸員の伴 祐子(ばん ゆうこ)さんにお話を聞きました。

学芸員の伴 祐子さん

民間考古学研究機関の草分けとして

──今回の企画展「空から見た洞窟遺跡」を開催するに至った理由について、簡単に教えていただけますか。

伴(敬称略)──

倉敷考古館は1950年(昭和25年)に開館しました。当時、遺跡や古墳などの発掘調査していた機関は大学ぐらいでした。つまり、県や市などの自治体の文化財行政が整っていない時代だったんです。

ですので、何か発見されたときに、大学や研究機関が手伝いに行っていました。
その流れで、倉敷考古館の研究者が、福井洞窟遺跡のある長崎県佐世保市におもむいて、研究調査をおこなったんです。

──倉敷考古館は、民間の考古学研究機関の草分けでもあるのですね。

伴──

戦前、日本に旧石器時代はなかった(まだ人が住んでいなかった)と思われていました。
そして、戦後に東日本、群馬県の岩宿遺跡にて旧石器が発見されて、東日本で旧石器時代があったことが確認されます。

そのあと、西日本で最初に旧石器が発見されたのは倉敷でした
倉敷市児島地区、鷲羽山のあたりで発見された石器を、倉敷考古館が中心となり調査し、旧石器時代のものであることが認められました。

つまり、およそ2万年前の西日本にもすでに旧石器文化が花開いていたことが分かったんです。

では、九州はどうなのか
当地の研究者の情報から、九州に旧石器の存在を確認するために倉敷考古館の職員が、佐世保におもむき調査したところ旧石器が発掘されました

その上、旧石器時代だと思われていた地層から世界最古級といわれるぐらいの土器が発見されたわけです。その場所が福井洞窟遺跡です。

福井洞窟遺跡から発掘された土器片

大学とミュージアムの連携

──今回の企画展は、岡山理科大学、佐世保市教育委員会そして倉敷考古館が共同開催していると聞いています。

伴──

当時、当館職員で福井洞窟遺跡の発掘に携わっていた故・鎌木義昌氏はその後、岡山理科大学の教授となり、発掘に同行していた故・間壁忠彦氏が倉敷考古館の館長になりました。そういった古くからのご縁もあって、佐世保市教育委員会を加えた三者で共同開催しています。

考古学というものは、土地と常につながっています
発掘された土地とずっと絆が続くなか、研究を進めていくとまた新しい発見があるんですね。

そのなかで新しい手法も取り入れていきます。たとえば今回の展示のように、空から遺跡を撮ってみるとか。

企画展のこだわりポイント

──今回の企画展の開催について、こだわりがあれば教えてください。

伴──

通常の企画展では、展示対象の遺跡について深く掘り下げて展示することが多いです。
しかし、今回は発掘初期からの研究者のつながりと、それを受け継いで今も研究を続けていることにスポットを当てています

たとえば、福井洞窟遺跡の調査のときに、周辺を調査していた倉敷考古館の職員が近くに別の洞窟遺跡を発見しました。直谷岩陰遺跡という洞窟遺跡ですが、このような石器が出土しています。

直谷岩陰遺跡からの出土品(尖頭器)

その後、出土品の年代測定などさまざまな調査を続けていますが、調査のなかで周辺、立地の記録のため、2017年からドローンによる航空写真を撮影しました。

それが今回の企画展のタイトルになっている「空から見た洞窟遺跡」というわけです。

空から見た洞窟遺跡

──企画展のタイトルにもなっている「空から見た洞窟遺跡」についてですが、航空写真で洞窟遺跡を見ることで、どのようなことが分かりますか。

伴──

現代人が住む場所を決めるとき、利便性や自分のライフスタイルに合わせて住むところを選ぶじゃないですか。

航空写真で洞窟遺跡(古代の人のすみか)を見ると、たとえばここは川が近いとか、自然災害が少なそうな場所だとか、古代の人のライフスタイルが見えてくるのではないかと思います。

──洞窟遺跡が残っている場所は、昔から人が住まれていたところなので、自然災害に対しても強い場所なのでしょうか。

伴──

一概には全部がそうとは言えなくて、実は遺跡には災害の跡もたくさん残っているんですね。この福井洞窟遺跡も、土砂崩れでしばらく人が住まなかった時期がありました。

──住み始めた頃にはこの洞窟遺跡が安全かどうかは分からないということですね。

伴──

その通りです。
なので、最初から安全な場所に住んでいたわけではなく、土砂崩れが起きたり、水害が起きたりするなかで、そういう場所を避けながら、より安全な場所で生活していくようになったのではないかと考えられます。

倉敷考古館における展示の特徴

──展示の特徴を教えてください。

伴──

写真パネルを中心といいながらも、実際は出土品を展示していることでしょうか。
普段はなかなか見られない、旧石器時代と縄文時代の過渡期にわたる土器や旧石器を、間近で見てほしいですね。

縄文土器

旧石器時代って、本当は土器が無いはずなんですけど、土器を見つけちゃったんですよ。倉敷考古館の人が。

この時代の土器には縄の文様ではなく、無文だったり、粘土のひもをくっつけた隆起線文(りゅうきせんもん)だったり。たとえばこれは爪型文(つめがたもん)というのですけど、このように土器の表面に爪で模様をつけていました。

爪型文土器

その後、縄文時代になり土器に縄で模様をつけるようになってきました。教科書などでもお馴染みの縄文土器ですね。

──最後に、これから来場される読者へのメッセージをお願いします。

伴──

遺跡から発掘された貴重な資料とともに、航空写真から昔の人がどのようなところに住んでいたのか、当時のライフスタイルを想像してみてください。

ご来館をお待ちしております。

おわりに

遺跡発掘は出土品を掘り起こすことがメインかなと思っていましたが、取材の前後でその印象も少し変わりました。

筆者が特に印象に残ったのが「掘って終わりじゃない」という言葉。

博物館などで見られる出土品にひそむ物語までを知ることは、あまりないかと思います。
しかし、それらの裏側にはずっと地道に発掘を続けたり、調査研究を続けたりしている研究者のかたがいることを改めて意識できました。

そのような地道な研究から「空から見た洞窟遺跡」についての研究、そして今回の展示へとつながったのではないでしょうか。

発掘した土地で研究する大学、研究した成果を展示するミュージアム、それらが三位一体となって開催している当企画展は、2025年3月9日(日)まで開催しています。

倉敷考古館でゆっくりと古代の人々の営みに思いをはせてみませんか。

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