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毎公演違う新鮮な芝居を全員で届けたい SUGARBOY 6th. "mini theater creation 2025"『春醒』稽古場レポート&川尻恵太・北野日奈子ミニインタビュー

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SUGARBOY 6th. "mini theater creation 2025"『春醒』稽古場より

川尻恵太が主宰を務めるSUGARBOYの第6回公演『春醒』が、下北沢OFF・OFFシアターにて2025年5月・6月に上演される。SUGARBOYは、演劇やラジオ、ドラマと幅広く活動する川尻恵太が自身の演劇創作の場として2008年に始動した演劇ユニット。脚本・演出を川尻が務め、加藤 将、北野日奈子、寶珠山 駿、立野沙紀を迎えて4年ぶりの新作公演を過去最大のロングランで上演する。本番まで約1ヶ月のタイミングで稽古場取材と川尻恵太、北野日奈子へのミニインタビューを行った。

この日の稽古内容は、冒頭の本読みと立ち位置や動きをつけるミザンス稽古。まだ脚本が完成していない段階ではあるが、戦争の影響によってシェルターで生活しているダンボ(加藤 将)、サルパ(北野日奈子)、モリス(寶珠山 駿)、アシロ(立野沙紀)、彼らの保護者的な存在であるラブカ(川尻恵太)のシュールでコミカルな会話、その中に漂う違和感に、本読みの段階から笑い声が上がる。

また、「演劇」を知らないダンボたちが作中でさまざまな物語を演じていく構成になっているのも魅力。キャスト陣の多彩な芝居とたくさんのキャラクターを楽しむことができそうだと感じた。

SUGARBOY 6th. "mini theater creation 2025"『春醒』稽古場より 川尻恵太

SUGARBOY 6th. "mini theater creation 2025"『春醒』稽古場より

SUGARBOY 6th. "mini theater creation 2025"『春醒』稽古場より  北野日奈子

SUGARBOY 6th. "mini theater creation 2025"『春醒』稽古場より

ミザンス稽古に入ると、川尻は登場するキャラクターたちの設定や脚本に散りばめられた謎、現段階で考えている展開についても説明していく。それを受けて動くキャスト陣がキャラクターの心情や知識について質問し、芝居を深めていた。シュールな世界観にブラックユーモアがちりばめられたコメディかと思いきや、シリアスな要素も強く出てきそうな読めない展開にワクワクする。

また、誰かがセリフを読み間違えたり詰まったりしたところからアドリブが始まり、脚本とは違う展開が広がっていく場面や、誰かの提案によって演出や小物に関するアイデアが膨らんでいく場面も。非常にクリエイティブなやり取りが繰り広げられていた。稽古場で起きる化学反応をもとに進化していくだろうと予想される本作。本番までにどんな作品が完成するか楽しみだ。

SUGARBOY 6th. "mini theater creation 2025"『春醒』稽古場より

SUGARBOY 6th. "mini theater creation 2025"『春醒』稽古場より

SUGARBOY 6th. "mini theater creation 2025"『春醒』稽古場より 加藤 将

SUGARBOY 6th. "mini theater creation 2025"『春醒』稽古場より 立野沙紀

SUGARBOY 6th. "mini theater creation 2025"『春醒』稽古場より

SUGARBOY 6th. "mini theater creation 2025"『春醒』稽古場より


川尻恵太&北野日奈子ミニインタビュー

ーーまずは川尻さんに物語の構想、ポイントなどをお伺いしたいです。

川尻:架空の世界のシェルターで暮らす5人の話です。外で戦争が続いているかはわからないけど、終わっているかどうかもわからないから外に出られない。死んでしまう可能性があるからラブカという男だけが外に出ているけど、みんな外を見たいとは思っているんです。徐々にそれぞれの考え方が変わったり、ラブカの嘘がバレたりして綻びが生まれ、信頼関係が失われていきます。あとは劇中でみんながずっと「演劇」をやるので、見ている方はどこまで本当でどこからがお芝居かわからなくなりそう。そこが見どころかなと思います。

ーー現段階で、お稽古の手応えはいかがですか?

川尻:始まったばかりですが、みんなの勘みたいなものはわかってきました。外部の公演と違って原作のないオリジナルなので、いくらでも作り替えていい。一つの提案で物語が180度変わる可能性もあるのが面白いです。覚えるのは大変だけど、それくらいの危うさがある方が見ている方も予測できなくて面白いんじゃないかと思います。

ーー先ほどのお稽古でも、皆さんのアドリブでセリフが変わったりシーンが膨らんだりしていました。北野さんは参加していていかがでしょう。

北野:アドリブは苦手なほうですが、皆さんの受け答えが自然で、いつもの自分で返しても違和感なく話が進んでいくと感じます。もちろんキャストの一人としてきちんと演じますが、あまりアドリブが続くと笑ってしまう大変さはあります(笑)。川尻さんと私たち4人の掛け合いはきっと毎公演違うものになるので、何度も見てくださる方にも楽しんでいただけると思います。毎公演、満員のお客様の前でお芝居をしたいので、マンネリにならないものをお見せしたいですね。

SUGARBOY 6th. "mini theater creation 2025"『春醒』稽古場より 川尻恵太

SUGARBOY 6th. "mini theater creation 2025"『春醒』稽古場より 寶珠山 駿

SUGARBOY 6th. "mini theater creation 2025"『春醒』稽古場より

ーーカンパニーの皆さんの印象、川尻さんから皆さんへの期待を教えてください。

北野:私は川尻さん以外皆さん初めましてです。川尻さんは乃木坂46の舞台で演出・脚本をしてくださって以来ですが、私の中では乃木坂メンバーからも愛されている小学生おじさんのまま(笑)。今回の脚本にも小学生レベルの下ネタなどが入っていて、変わらないなあと和みます。普段から競馬の話などはしているので久しぶりな感覚はなく、こうして一緒にお仕事ができるのはすごくありがたいですね。キャストの皆さんもそれぞれキャラが立っていて、少人数だけどちゃんと違う色がある。加藤さんはすごくおしゃべりな方で、天才肌みたいな感じです。駿さんは唯一の年下なんですが、天真爛漫で素直な人だと思います。一度私が稽古場で幽霊の話をしたら「今日見えますか!?」って聞いてくるので、怖がられているかもしれないけど可愛い子だなと(笑)。立野さんは乃木坂のメンバーに近い雰囲気があって居心地がいいし、好きだなと思います。パン作りが好きだそうなので、作ってくれないか期待しています(笑)。

川尻:今回思っているのが、見た目に反して道徳がないのがいい意味で似合う人たちだなと。見た目がちゃんとしていてまともそうな人のモチーフが加藤将です。舞台やテレビで見るとまともなお兄さんに見えるけど、話してみるとまともじゃないのが面白い。そこで、どんな人たちが崩れていくと面白いのか考えました。例えばきいちゃん(北野)は印象と中身にギャップがあって、僕としてはそれがすごく面白い。そういった武器を持っている人たちが多いカンパニーです。立野さんは多分強い女性だと思われているので、そういう人のイノセンスな部分を見せられないかとか、寶珠山はストレートな人間だと思われていそうなので、お客様を驚かせられそうだなとか。今(脚本が)できている範疇で、一番狂気的なのは僕が演じるラブカに見えるけど、だんだんその印象が逆転していくと面白いのかなと考えています。さらに劇中で演劇をするシーンを入れることで、逆転していく世界線が本心か演技かわからなくなっていく。雰囲気も見た目もばっちりハマるラインがあると思うので、試行錯誤してたどり着きたいと思っています。

SUGARBOY 6th. "mini theater creation 2025"『春醒』稽古場より

SUGARBOY 6th. "mini theater creation 2025"『春醒』稽古場より 加藤 将

SUGARBOY 6th. "mini theater creation 2025"『春醒』稽古場より

本作は2025年5月21日(水)~6月15日(日)まで下北沢OFF・OFFシアターで上演される。

取材・文・撮影=吉田沙奈

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