シャンパーニュ「ポメリー」、コンテンポラリーアート展『地下のメロディー、エクスペリアンス・ポメリー#18』を開催
シャンパーニュ「ヴランケン」は、2002年にシャンパーニュ「ポメリー」を傘下に収め、「ヴランケン・ポメリー・モノポールグループ」を設立して以来、芸術と文化に強く関わり、特に芸術文化の支援に力を入れている。ランスにあるポメリーの巨大な地下熟成貯蔵庫を利用して開かれるコンテンポラリーアート展『エクスペリアンス・ポメリー』も注目を集めており、今年は『地下のメロディー、エクスペリアンス・ポメリー#18』と題し、2025年1月21日~9月20日まで開催されている。
初日となる1月21日、メディアを中心に約100人のゲストが招待され、現地でオープニングセレモニーと記念昼食会が開催された。開会式典では、ポメリーとのコラボレーションによる共同ブランド「Y by YOSHIKI×CHAMPAGNE POMMERY」を発表した世界的アーティストYOSHIKIが参加し、ポメリーの地下熟成庫でピアノ演奏を披露する予定だったが、カリフォルニアの大火災によりYOSHIKI自身が避難を余儀なくされ、直前にキャンセルとなった。
ポメリーの歴史
ポメリーの歴史は、マダム・ポメリーが夫の死後、1858年に「ポメリー・エ・グレノ社」の経営を引き継いだことから始まる。彼女はシャンパーニュの品質にこだわり、最高級のブドウ畑を築き上げた。74年には、それまでの伝統的な甘口シャンパーニュとは異なり、初めて商業的に成功した辛口のブリュット・シャンパーニュ『ポメリー・ナチュール』を生み出し、注目を集めた。
彼女の革新的な精神は、68年にランスの石灰岩採掘場をポメリーのための地下貯蔵庫に変えるという「世紀のプロジェクト」にも表れている。ベルギーとフランスの鉱員たちが掘り進めた、地下30メートル、全長18キロメートルの地下回廊は、現在もポメリーのシャンパーニュを熟成させるための理想的な環境を提供している。
この地下貯蔵庫は、芸術とシャンパーニュの融合を象徴する場所でもあり、マダム・ポメリーはギュスターヴ・ナヴレに依頼して、地下回廊に巨大なバスレリーフを彫り込ませた。この伝統は現在も続いており、ヴランケン・ポメリー・モノポールグループは「エクスペリアンス・ポメリー」を通じて、世界中のアーティストにこの空間を開放している。
オープニングセレモニーの記念昼⾷会
昼食会は、2002年にポメリー・ヴランケン・グループが買収したレストラン「リュカカルトン」のシェフ、ユーゴー・ブルニ氏が腕を振るい「地中探求の旅」をテーマにした創作料理が提供された。
最初の料理は「白亜の洞窟の湿った深淵へのダイビング」と題された「ホタテのカルパッチョ、マスの卵」。この一皿には『Y by YOSHIKI』のキュヴェが用意された。
続いて「地中の深さの探求」をテーマにした「滋養ある根菜、黒モレソース、サバイヨン、焦がし玉ねぎ」が供され、これには2023年にリリースされた『キュヴェ150(Cuvée 150)』が合わせられた。
コースの締めくくりは「上昇...大地の宝物の収集」をテーマにした「キノコとトリュフ、黒ニンニク」。この料理には2024年にリリースされたばかりの『キュヴェ・アパナージュ・ブリュット 1874(Cuvée Apanage Brut 1874)』が選ばれた。
ポール・フランソワ・ヴランケン⽒(シャンパーニュ「ポメリー」社⻑)イ
ンタビュー
「エクスペリアンス・ポメリー」のオープニングセレモニーでYOSHIKIさんが新曲を演奏すると聞き楽しみにしていたのですが、キャンセルになり残念です。
ここ数日、大々的に報道されているように彼が住むロサンゼルスの火災は劇的なもので、彼もそれに巻き込まれ、すべての仕事が中断したため仕方ありません。
ところで、シャンパーニュワイン委員会が2024年のシャンパーニュ出荷状況を発表しました。それによると、1月~12月までの出荷本数は2億7140万本で、前年比9.2%減となっています。特に、出荷全体の56%を占める輸出が、前年比10.8%減の1億5320万本と大きく減少しました。これについては、どのようにお考えですか。
2024年のシャンパーニュ販売量が減少した主な理由は、23年と22年にインフレの影響で大手バイヤーが在庫を増やしすぎたことです。そのため、昨年は在庫調整のために購入を控えました。しかし、25年は年初から販売が好調で、世界中で回復の兆しが見られます。
米国にトランプ新大統領が就任しました。今後の米国輸出について、どのように予想されますか。
ポメリーのシャンパーニュは日本にも輸出していますが、特にアメリカには多く輸出しています。現時点ではどのような影響があるかはわかりませんが、シャンパーニュについては心配していません。なぜなら、シャンパーニュは消費財ではなく、お祝いのための祝祭的な商品だからです。
シャンパーニュの輸出はリーマンショックやコロナ禍の影響はあったものの、スティルワインに比べると順調に伸びてきました。
そうですね。長い目で見れば、シャンパーニュは300年以上の歴史を持ち、特に1970年代末から大きな発展を遂げました。なぜでしょうか? それは、それまでのシャンパーニュはデザートワインとして飲まれていた甘いワインでしたが、1977〜78年ころからアペリティフ(食前酒)としての新しい需要が生まれ、辛口のシャンパーニュが消費されるようになったからです。この新しい需要に大手メゾンは迅速に対応しました。しかし、ポメリー夫人はその流れよりも早く、1874年に辛口シャンパーニュの生産を始めており、ブリュット(辛口)の先駆者でした。
しかし、シャンパーニュがやや⾼価であるという声もあります。
価格が高くなったのは理にかなっています。2022〜23年に世界中の人がインフレの影響を受けました。シャンパーニュも同様です。しかし、シャンパーニュの価格が他の商品以上に値上がりしたとは思いません。私が思うに、今日のシャンパーニュの価格は適正価格です。インフレは落ち着き、現在ではもう価格は上がっていません。
シャンパーニュ・ポメリー、そしてヴランケングループの現状についてお聞かせください。
去年(2024年)はモナコを含む89カ国にシャンパーニュを輸出し、良い成績を収めたことを大変うれしく思っています。これは素晴らしい成果であり、私たちがますます国際的に認知されている証拠です。
昨年 、グループ全体でどのくらいのボトルを出荷されましたか?
私たちは良い年も悪い年も、常に約1500万本を出荷しています。年によっては1400万~1500万本の間で非常に安定しています。そのうち、500万本はポメリーのシャンパーニュです。
ここ数年来、何か新製品を発売しましたか?
常に新しいものを造っています。本日試飲する「Y by YOSHIKI」もその一つです。また、昨年、ルイーズのボトルをリニューアルしました。昨年の大きな話題は、1874年にポメリー夫人が「ブリュット」を世に出したことを記念して造った、新しいボトル『アパナージュ(Appanage Brut 1874)』です。2018年、12年、15年の三つのヴィンテージをブレンドしたもので、これは初めての出荷です。
ポメリー・ヴランケン・グループの現代アートへの投資についてお聞かせください。
現代アートは多くの人々を魅了します。私たちは文化芸術支援活動(メセナ)として、アーティストのために作品制作を応援しています。私たちは商人ではなく、アートの制作者でもあり、ポンピドゥーセンターでのメセナや、ニューヨークでの展示会の開催などにも積極的に関わっています。日本とも密接な関係を持っており、京都を拠点に活動を行う若手アーティストの活躍支援を目的として、2023年より「ポメリー・プライズ・キョウト(Pommery Prize Kyoto)」をスタートさせました。
クレマン・ピエルロー⽒(ポメリー第 10 代シェフ・ド・カーヴ)インタビ
ュー
「Y by YOSHIKI」をどのような経緯で造り始めたのか教えてください。
YOSHIKI とポメリーを繋ぐ共通点は、YOSHIKI が天皇のために作曲していること、そしてポメリーが日本における皇室への最初の納入業者の一つであるということです。
ポメリーは日本で非常に有名です。YOSHIKI はポメリーに愛着があり、ポメリーというシャンパーニュブランドの繊細なスタイル、メランコリー、優美さが彼の世界観とよく合っていたため、私たちとともに働きたいと思っていたそうです。
日本で彼は絶対的なスターであり、ロサンゼルスに住んでいてアメリカでも有名です。しかし、私たちがいるヨーロッパでは YOSHIKI のことがそれほど知られていなかったため、4年ほど前、私たちは彼の世界観や哲学を理解するために、彼をここランスに招きました。そして、ともに仕事をするかどうかを話し合い、プロジェクトを立ち上げることを決めたのです。
⾳楽とワインの間には共通点があるとよく⾔われますね。
そうです。作曲と私たちのブレンドは全く同じアプローチを持っています。音楽は非常に理性的であり、かつ非理性的なものでもあります。理性的な面でいえば、たくさんの練習が必要で、音階を知り、音楽理論を理解する必要があります。ブレンドでは、テロワールを知り、ブドウ品種を理解する必要があり、多くの作業が必要です。
このワインは主に黒ブドウから造られており、ピノ・ノワールとムニエが65%、シャルドネが35%です。果実味が豊かでとても魅力的ですが、同時に非常にエレガントです。スパイシーで複雑、そして非常にフレッシュです。これは祝祭のワイン、パーティーのワインです。ファーストリリースは発売と同時に24時間で完売しました。そして、YOSHIKIの意向により、ロゼシャンパーニュを新しいラインナップに加え、ロゼシャンパーニュのために赤いボトルを採用しました。
昼食会では、ブリュット・シャンパーニュ誕生150周年を記念し、2023年に発売した特別キュヴェ『キュヴェ 150(Cuvée 150)』も紹介された。この記念ボトルは、マダム・ポメリーの革新的な精神を受け継ぎ、現シェフ・ド・カーヴのクレマン・ピエルロー氏が手がけた意欲作。マダム・ポメリーゆかりの畑から厳選されたシャルドネのみで造られた『ブラン・ド・ブラン・エクストラ・ブリュット』だ。
2024年には、もう一つの記念ボトル『キュヴェ・アパナージュ・ブリュット 1874(Cuvée Apanage Brut 1874)』がリリースされた。シャルドネ40パーセント、ピノ・ノワール45パーセント、ムニエ15パーセントのブレンド。12のクリュのブドウを使用したノンミレジメで、主に2018年産のブドウを使用し、15年産と12年産もブレンドしている。ドザージュ8g/L。48カ月以上の瓶内熟成。
シャンパーニュ・ポメリーにある大樽は、フランスのアール・ヌーヴォーの名工、エミール・ガレが装飾を行い、1904年にアメリカのセントルイスで開催された万国博覧会の展示品として作られたもので、容量は約750ヘクトリットル、すなわち10万本分のシャンパーニュを収容できる。現在、この大樽はポメリーの美術館の入り口に設置されており、「EXPERIENCE POMMERY」に訪れる来訪者に強い印象を与えるアートオブジェとなっている。
コンテンポラリーアート展『地下のメロディー、エクスペリアンス・ポメリー#18』の主な出展作品(写真筆者撮影)
「陶酔」Ivresse
フェリペ・オリヴェイラ・バプティスタ
FELIPE OLIVEIRA BAPTISTA
1975年、ポルトガルのアゾレス諸島生まれ。
パリとリスボンを拠点に活動。
「上陸」The Landing
アニナ・メジャー ANINA MAJOR
1981年、バハマ生まれ。
米国・プロビデンスタウンを拠点に活動。
「#お腹の中の蝶」
papillonsdansleventre
@ENCOREUNESTP
1971年生まれ。
パリ(フランス)を拠点に活動。
「フクロウ」Le Hibou
ベルトラン・ガデンヌ
BERTRAND GADENNE
1951-2024年 フランス
「私のすべての思い」All my Thoughts
クララ・クリスタロヴァ
KLARA KRISTALOVA
1967年、旧チェコスロバキアのプラハ生まれ。
現在はスウェーデンのノーテリエに在住・制作。
「春」Spring
ナム・チュン・モ
NAM TCHUN-MO
1961年、韓国の寧陽生まれ。
大邱(韓国)とケルン(ドイツ)を拠点に活動。
「黄金の花」Golden Flower, Série Breathing Flower
チェ・ジョンファ
CHOI JEONG HWA
1961年韓国生まれ。
韓国・ソウルを拠点に
「ミメティカ」Mimetica
エリザベッタ・ベナッシ
ELISABETTA BENASSI
1966年、イタリア・ローマ生まれ。
現在もローマに在住・制作。
「陶酔」Ivresse
パブロ・レイノソ
PABLO REINOSO
1955年アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれ。
パリを拠点に活動。