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過去最大規模の〈睡蓮〉が集う!「モネ 睡蓮のとき」【豊田市美術館】

日刊KELLY

印象派を代表する画家のひとり、クロード・モネ(1840~1926)。晩年の大作として有名な〈睡蓮〉をメインに展示した「モネ 睡蓮のとき」が2025年9月15日(月・祝)まで、豊田市美術館で開催中!

日本初公開作品を含む約50点が来日し、さらに日本国内の美術館が所蔵する作品などが集まり、池に浮かぶ睡蓮を描いた作品が集う過去最大規模の展示に!今回は、この〈睡蓮〉を存分に楽しむためにも、そのみどころをしっかりご紹介します。

〈睡蓮〉が描かれるまで

【日本初公開】クロード・モネ《ジヴェルニー近くのセーヌ河支流、日の出》1897年 油彩/カンヴァス マルモッタン・モネ美術館、パリ(エフリュシ・ド・ロチルド邸、サン=ジャン=キャップ=フェラより寄託) © musée Marmottan Monet / Studio Christian Baraja SLB

まずは、モネの〈睡蓮〉がどのように描かれるようになったかを作品からみていきましょう。

1890年に50歳になったモネは、7年前に移り住んだノルマンディー地方の小村ジヴェルニーの土地と家を買い取り、これを終の棲家とします。

クロード・モネ《睡蓮、夕暮れの効果》1897年 油彩/カンヴァス マルモッタン・モネ美術館、パリ © musée Marmottan Monet / Studio Christian Baraja SLB

その後、50代後半のモネにとって主要なモチーフとなったのは、セーヌ河の風景でした。この時期に描かれたセーヌ河の水辺の風景では、水面の反映がかたちづくる“鏡像”に主眼が置かれており、のちの〈睡蓮〉を予見させるような印象です。

公式キャラクター
ケリーちゃんあの有名な〈睡蓮〉はこうした作品から始まっていったんだね!

水と花々という装飾画から発展したモネの〈睡蓮〉

クロード・モネ《睡蓮の池》1917-1919年頃 油彩/カンヴァス マルモッタン・モネ美術館、パリ © musée Marmottan Monet

当時の19世紀末のフランスでは、多くの画家たちが装飾画の制作に取り組んでいました。モネもまたその一人で、1870年代の印象派時代から描いており、1890年代に連作の展示効果を追求する中で、睡蓮という一つの主題のみからなる装飾画の構想が芽生えていきます。

公式キャラクター
ケリーちゃん「装飾画」とは、置物やタペストリーのような従来の室内装飾品の枠組みに「ハイ・アート」とされるところの絵画が組み入れられることで誕生したそう。インテリアのようなものとして絵画作品が取り入れられていったということなんだね。

その後、視覚障害の兆候や最愛の妻の死を経て、1914年に創作意欲を取り戻したモネは、当初は睡蓮だけでなく、池の周囲に植えられた多種多様な花々をモチーフとして描いていました。

【日本初公開】クロード・モネ《藤》1919-1920年頃 油彩/カンヴァス マルモッタン・モネ美術館、パリ © musée Marmottan Monet

クロード・モネ《アガパンサス》1914-1917年頃 油彩/カンヴァス マルモッタン・モネ美術館、パリ(左)、クロード・モネ《睡蓮》1914-1917年頃 油彩/カンヴァス マルモッタン・モネ美術館、パリ © musée Marmottan Monet

この“幻の装飾画”の計画のなかでも、重要な役割を担っていたのが、池に架けられた太鼓橋の藤棚に這う藤と、岸辺に咲くアガパンサスの花です。

しかし、最終的にモネは花々による装飾の考えを放棄し、キャンバスの壁一面を池の水面とその反映を描くようになります。

公式キャラクター
ケリーちゃん当時流行っていた「装飾画」の流れを受けて〈睡蓮〉を描くようになったんだね!藤やアガパンサスの作品も素敵。

70代のモネが「大装飾画」への制作を開始

クロード・モネ《睡蓮》1914-1917年頃 油彩/カンヴァス マルモッタン・モネ美術館、パリ(左)、クロード・モネ《睡蓮の池》1917-1919年頃 油彩/カンヴァス マルモッタン・モネ美術館、パリ © musée Marmottan Monet

1914年以降、モネは70歳をすでに超えていながら、長辺が2メートルにもおよぶような大作を制作しています。絵画作品の面積は、1909年に手掛けられた〈睡蓮〉と比較して、4倍以上!

さらに、巨大化した作品のサイズに応じ、モネは新たに広大なアトリエを建設した他、幅4メートルにも達する装飾パネルの制作にも取り組んでいました。

公式キャラクター
ケリーちゃん70歳以上で大作を描くだけでもすごいのに、作品の周辺物も制作するというエネルギーにびっくり!

こうした「大装飾画」に関連する作品のほとんどを生前に手放すことなく、1926年の死の間際に至るまで試行錯誤を重ねます。

実はモネが唯一、その巨大な装飾パネルの一つを売ることを認めたのが、国立西洋美術館のコレクションの基礎を築いた松方幸次郎です。

公式キャラクター
ケリーちゃん現在私たちが日本でもこの時期の壮大な作品を見られる理由は、そういうことなんだね。

白内障に苦しみながらなお制作に向かう

クロード・モネ《睡蓮》1914-1917年頃 油彩/カンヴァス マルモッタン・モネ美術館、パリ、クロード・モネ《睡蓮の池》1917-1919年頃 油彩/カンヴァス マルモッタン・モネ美術館、パリ © musée Marmottan Monet

70歳を超えてなお、大作を制作し続けていたモネですが、78歳になる1918年ごろからしだいに白内障の症状が顕在化しはじめていきました。

悪化の一途をたどる視力に絶えず苦痛を訴えながらも、モネは1923年まで手術を拒み、絵画の色の表示やパレット上の場所に頼って制作を行うこともあったとか。

モネは1918年の終わりごろから晩年にかけて、死の間際まで続いた大装飾画の制作と並行して、複数の独立した小型連作も手掛けました。モチーフとなったのは、“水の庭”の池に架かる日本風の「太鼓橋」や枝垂れ柳、“花の庭”のばらのアーチがある小道などです。

視覚が不確かな中でも、衰えることのない画家の制作衝動と、経験から培われた色彩感覚に基づく実験精神を今日に伝えています。

公式キャラクター
ケリーちゃん70歳を超え、白内障に苦しみながら、色彩感覚が不確かな中でも制作していたのがすごい…!神社なんかでもよく見られる、日本のアーチ型橋「太鼓橋」もモチーフに描いていたんだね。

まるで「色彩交響曲」のよう!苦難の時代に癒しの作品

【日本初公開】クロード・モネ《睡蓮》1916-1919年頃 油彩/カンヴァス マルモッタン・モネ美術館、パリ © musée Marmottan Monet

モネの絵画は、しばしば音楽にたとえられることも。1921年に洋画家の和田英作が松方幸次郎らを伴い、ジヴェルニーのアトリエを訪れた際、〈睡蓮〉の近作を「色彩の交響曲」と評したところ、モネが「その通り」と答えたという逸話も残っています。

また、モネは大装飾画の制作が開始された1914年、戦争に対しての思いをこう話していたそう。「大勢の人々が苦しみ、命を落としている中で、形や色の些細なことを考えるのは恥ずべきかもしれません。しかし、私にとってそうすることがこの悲しみから逃れる唯一の方法なのです」。

公式キャラクター
ケリーちゃんモネの苦しみが伝わってくるね…。70歳過ぎのモネが戦争に行けなくても、死傷者を想いながらも絵を描き続ける作家魂に胸が締め付けられそう。

1918年に休戦を迎えると、時の首相であり旧友のジョルジュ・クレマンソーに対し、戦勝記念として大装飾画の一部を国家へ寄贈することを申し出ます。

【日本初公開】クロード・モネ《枝垂れ柳と睡蓮の池》1916-1919年頃 油彩/カンヴァス マルモッタン・モネ美術館、パリ © musée Marmottan Monet

その画面に描かれた枝垂れ柳の木は、涙を流すかのような姿から、悲しみや服喪を象徴するモチーフでもあったようです。

編集者
梅澤苦難の時代に生きたモネ。戦争で多くの人が死傷したことや視力の低下に苦しみながらも描いた巨大な絵画作品に、繊細なハーモニーと永遠性を感じられるような池の水面を描いています。ぜひ、実際に作品に触れ、あなたなりの感性で受け取ってみては。

作品鑑賞後のお楽しみ!豊田展限定のグッズにも注目

豊田展限定「坂角総本舗 ゆかり詰合せ箱」(1980円)

作品を観覧後は、モネの〈睡蓮〉関連グッズが充実のミュージアムショップへ♪

豊田展限定で「坂角総本舗」のえびせんべい「ゆかり」と「モネ 睡蓮のとき」豊田展がコラボの商品「坂角総本舗 ゆかり詰合せ箱」を販売。箱全体に〈睡蓮〉がデザインされたパッケージが魅力!

猿田彦珈琲 モネ・スペシャルブレンド ドリップバッグコーヒー

この他、〈睡蓮〉がパッケージに描かれたドリップパックのコーヒーや缶全面に印刷されたサブレ、柄にプリントされたスプーンなど。家に帰ってもモネの作品を楽しめそうなグッズが充実。

ぜひ足を運んで、作品の魅力をさまざまな角度で味わってみてはいかが。

モネ 睡蓮のとき

問い合わせ
0565-34-6610
場所
豊田市美術館
(愛知県豊田市小坂本町8-5-1)
会期
2025年6月21日(土)~9月15日(月・祝)
料金
一般2300円、大学生1400円、高校生以下無料
時間
10:00~17:30(入場は閉館の30分前まで)
休館日
月曜(7月21日、8月11日、9月15日は開館)
駐車場
あり
公式サイト
https://monet2025-toyota.com/
アクセス
名鉄「豊田市駅」、愛知環状鉄道「新豊田市駅」より徒歩で約15分
愛知環状鉄道「新豊田市駅」よりシャトルバスで約13分


※掲載内容は2025年7月時点の情報です
※価格は税込み表記です

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