Yahoo! JAPAN

秘めごと「シアン」インタビュー――新たな幕開けを告げる『秘めごと』からの決意表明が新曲「シアン」

encore

──新曲「シアン」は秘めごとの新たな幕開けを感じさせる楽曲ですが、encore初登場ですので、まず、これまでの秘めごとを少し振り返ってもらえますか? 2021年9月に「狼と羊」をSNSに投稿してからちょうど4年になりますね。

詩音「最初はひたすら楽曲を制作して、リリースして、SNSやYouTubeで知っていただくことをメインで活動していました。私は“ただ歌を届けたい”という気持ちで秘めごとを始めてたので、ライブをする事はとくに考えていなかったです」

木天蓼「そもそも“ライブをやらなくていいかな”くらいまで考えていたかもです。自分が作った楽曲を理想的な形で歌ってくれるアーティストを探していた時期に、たまたま詩音さんの歌声に出会って。“これは世に出なきゃいけない人だ”と思ったんですけど、詩音さんはちょうどその時期に音楽を続けるかどうか悩んでいて。でも、そのタイミングで僕と出会って、曲も気に入ってくれたので。“自分の音楽を追求できる”という僕の気持ちと、“もっと多くの人に聴いてほしい”っていう詩音さんの気持ちがちょうど重なって。そこから始めた秘めごとだったので、二人の中では“楽曲と歌声”が最優先でした。だから、“ライブをする“っていうところまではあまり考えてなかったんです。でも、秘めごとをはじめてから2年経った頃に、”ライブもしてみようか?“ということになって」

──詩音さんは人前で歌うことに抵抗はなかったですか?

詩音「そうですね、どういう形でやろうか?っていうこともかなり話し合いましたし、人前で歌うってなったときは“うっ…”って思ったんですけど(笑)。でも、直接皆さんに歌を届けることによってまた何か変わってくるかもしれないと思ったので、“とりあえず一回やってみよう”って始めて…。そうすると、徐々にライブで知ってくださる方も増えてきました。お客さんがいることで音源とは違う楽しさを見つけられたので、今はやってよかったなと思います。自分の中での変化がありました」

木天蓼「まさかこんなにライブをたくさんすることになるとは、自分たちが一番驚いています。生の歌声や楽曲を聴いてもらえるようになって、二人とも秘めごとを始めた頃の気持ちとは少し変わってきています。この4年間という短い期間の中でも、ここ1年ぐらいで急にグッと成長したというか、大きく状況が変わってきているのを、改めて感じています」

──2024年9月に配信リリースした「劣等感」の前後でライブが増えていますね。

木天蓼「そうですね。秘めごとの楽曲の作り方としては、“僕が作りたいものを作る”のと、“詩音さんから漠然としたイメージをもらって作る”っていう、2パターンがあって。「劣等感」は二人がライブを意識的に考えるようになった時期に作った曲で、詩音さんから“ライブでみんなでシンガロングできて、ノリやすい曲にしたい”という意見があったんです。ただ、秘めごととしては、単純にライブで盛り上がるからとか、派手さを求めるだけの曲っていうのは2人の美学的に違っていて。秘めごとらしさの軸はちゃんと残しつつ、詩音さんがやりたいことを入れつつ、さらに、“今までのイメージから少し脱却しよう”ということを2人で話し合いました。“いろんなことにチャレンジしてみようか”ってできた曲です」

──イメージをどう変えようと話し合ったんですか?

木天蓼「今までは“内へ内へ”という部分があって。でも、ライブが増えてきたことによって、分かりやすく外に放っていく部分も大事になってきました。たくさんの人に聴いてもらうために、自分たちの理想論だけではうまくいかない部分もそろそろ出てきた頃でもあって。より多くの人に聴いてもらえるような状況になりかけていた時期でもあったので、秘めごとも一歩踏み出して、外へ放っていく気持ちも明確にだしていければと。今までの秘めごととは違う一面を出せた楽曲が「劣等感」です」

詩音「“それまでの楽曲に比べてポップな要素も入った曲だな“っていう印象がありました。アレンジは[Team Himegoto]のみんなでやる事もあるんですけど、最初はピアニカを入れる予定はなくて。でも、”ライブでやったらかっこいいんじゃない?“って話しながら作りました」

木天蓼「楽器隊のみんなも含めた集団名を[Team Himegoto]って呼んでるんです」

詩音「ライブをするまでは2人だけで全ての作業をやっていることが多かったのですが、ライブをするようになってから、今は、“みんな仲間でチーム“っていう想いでやっています。「劣等感」からは音楽集団である[Team Himegoto]としてディスカッションする時間も増えたので、より表現の振り幅が増えました」

──「劣等感」はプレイヤー全員が目立つ曲ですよね。ピアニカがあって、エレキギターはタッピングしていて。アコギもガシガシ弾いてますし、ベースはスラップ。さらに、詩音さんは拡声器でも歌っていて…。

詩音「そうですね。MVもみんなで出ているので、秘めごとのライブの空気感に近いです」

木天蓼「拡声器は“カッコいいから持とうよ!”っていう理由ではなく(笑)、アレンジ的に「劣等感」のポイントポイントでラジオボイスが入る構成に最終的になったので、“それをライブでリアルタイムに表現するなら、拡声器でディストーションボイスをやっちゃった方がいいかな?“っていうきっかけでした」

──そのあと、同年12月に1stアルバム『HOWLING MIND』をリリースしました。リード曲「ハウル」にもシンガロングできるパートがありますね。

詩音「ライブをする様になってから見えた景色や、心の変化、秘めた想いや共有したい想い、その全てが表現できているかなと思います」

木天蓼「「ハウル」は今までより、さらにもっと深いところをえぐっていきたかったんです。もともと秘めごとが持っている…詩音さんが持っている、今までの経験であったり、うまくいかない部分であったり。喜怒哀楽。根底にある気持ちを全面に引っ張り出しました。そして、みんなにも寄り添えるようにって部分も含めて自分達のストーリーでもあり、誰かのストーリーにもなる。背中をおしてくれる曲になったと思っています」

──それが、「ハウル」=狼の遠吠えだったんですね。

木天蓼「咆哮してるイメージがバッと浮かんだんです。でも、1人で走っているのではなく、何かと対になって進んでいってるイメージが強くて。“それって何なんだろう?”と考えたときに、『HOWLING MIND』のジャケットには女の子と狼がいて。それは、秘めごとのイメージでもあって、今まで孤高に走ってきた秘めごとに、多くの人が寄り添ってくれるようになりました。そのイメージが鮮明になってきて。最近のライブでの「ハウル」のシンガロングにもつながるんですけど、まさか秘めごとのライブでこんな状況になるとは!ライブハウスで声を出すのって、わりと躊躇するじゃないですか。秘めごとのライブでそういう現象が起こるのはいい意味で予想外でした」

──今年7月に開催したワンマンライブ『存在証明』で大合唱になっていましたよね。あのフレーズはちゃんと音源を聴き込んでいないと歌えないですよね?

木天蓼「そうなんですよ。「劣等感」に続いて「ハウル」をリリースした時の気持ち…もっとより深く秘めごととして思っていることを伝えようとした時に、共感してくれて、日々の生活の一部として大切に聴いてくれている人たちや、ライブに行ってみよう!って来てくれる人たちに、ものすごく助けられ、勇気づけられています。嬉しい気持ちでいっぱいです。“これが「ハウル」の完成形だったんだ”と思いました。詩音さんと二人でよく話をしているんですけど、まさしく“音楽やっていてよかった”っていう時間を2人とも目の当たりにしている今、みんなと共に駆けている秘めごとの今後の進化に自分たちも楽しみな気持ちです」

詩音「最初に「ハウル」の歌詞のベースになる部分が木天蓼さんから来た時に、自分の気持ちそのままの言葉が多く書かれていて、うるっときました。<君の才能に嫉妬する>とか、<夢が描けなくなってしまった>とか…。まさしく自分が音楽をやめようって思っていたときの気持ちでした。でも、諦められきれなかったっていう部分もあって。それから制作に入ったときに、ライブをしている情景が浮かびました。まさしく、秘めごとをやってきて、ライブをやってきて、音楽をやってきて、そんな今の自分をすべて詰め込みたいと思って臨んだ曲でした。最初に「ハウル」をライブでやっていた時は、みんなに“歌って!”ってそんなに煽らなかったんですけど…でも、最近のワンマンライブでマイクを向けてみたら、みんなが歌ってくれて嬉しかったです。ライブでシンガロングパートを一緒に歌っている時は、自分からみんなへの気持ちでもあるし、みんなが自分の背中をおしてくれていると感じられる瞬間でもあります」

──歌詞にある通り<フィードバックを僕に>くれて、『存在証明』も観客と共有したわけですよね。その次はどう考えていました?

木天蓼「あくまでも根本にあるのは“生活や想い出に寄り添う忘れられぬ音楽を君に”…日常でずっと聴いてもらえる曲を作っていきたいです。なので自分たちの流れの中では、核となる部分はブレずに、その時その時の季節や風景、喜怒哀楽などに逆らわず、変わりなく。それありきで常に探究心を持ちながら挑戦していく、です。なんか仙人みたいですが(笑)」

──1stアルバムをリリースして、ワンマンライブも終えて、ここから新たな章の幕開けになるような楽曲をリリースしようっていう意識ではなかったのでしょうか?

木天蓼「そうですね。「シアン」に関して言うと、「ハウル」と対になっている部分が実はあって。「ハウル」が詩音さんの内面をえぐった曲だとしたら、「シアン」は逆に僕から見た景色に…結果的になっていった楽曲です」

──そうなんですね。

木天蓼「はい。だから、「ハウル」と「シアン」は今の秘めごとの核心だと思います。そもそも、詩音さんは何を分かってほしくて、何をどうししたくて、また歌うことを選んだのか。僕は何を考え、何をどうして、詩音さんに自分の曲を歌ってもらうことになったのか。そういう部分で「ハウル」と「シアン」はまさしく対になっています。実は、「シアン」は秘めごと史上、一番書き直しをした曲でもあるんです。すぐに原型はできたんですけど、そこからが長かったです…すごく変わりました。どんどん変わっていって…」

──なにが変わっていったんですか?

木天蓼「歌詞の書いている目線がどんどん変わっていきました。それによって歌詞だけじゃなく、曲もいろいろ変わっていって。最初は自分目線で書いていたんですけど、最近、急激にライブに来てくださる方や、アルバムを聴いてくださる方が増えて。音楽家として“生活に寄り添える曲を作りたい”という気持ちがあって。そして、今、自分たちの音楽が広がっていってる事を実感できる場面が多くなってきて。“秘めごとを愛してくれてるみんなの想いものせた曲“そしてこれから出会う人たちにも同じ様に思ってもらえたらいいなっていうマインドに変わって。そこから、みんなで進んでいってるイメージに切り替わったんです。ほんとそういう意味や感覚でも「ハウル」に近いですね。「シアン」は曲から浮かぶ景色が短期間の間にどんどん、いい意味で変わっていって…。詩音さんの声色や歌詞の解釈もその度にすごく変わりました。「シアン」は、「ハウル」もですね、今、現在の秘めごとが提示するアンセムなのかなと。みんなにとっても、秘めごとにとっても、背中を押してくれる曲です」

──詩音さんはどう解釈しましたか?

詩音「歌詞に対しての感情の入れ方を今までとは少し違う感じで歌ったというか、自分目線でもあり、違う誰かの目線でもありっていう、感覚を大切にしました。なのでその世界観や声色のコントロールって意味でも転調を有効的に使ったり、あと木天蓼さんと話して、よりシンプルに削ぎ落としていく作業もしたり、とにかく色んな主人公をイメージしながら歌ってるうちに歌詞をより際立たせたいと思ったんです。それでも歌うことを選んだ自分がいて、それを待ってくれてる人もいる。もちろん聴いてくれた人たちにはそのストーリーが歌ではない違う何かに置き換わって共感してもらえる部分もあるし。私や秘めごとに対して想ってくれている周りの人の気持ちを想像しながら、そして君の歌でもあるよって。そんな気持ちで歌いました」

──タイトルになっている「シアン」=青はどんなモチーフですか?

木天蓼「詩音さんの歌声は、出会った当初から、歌詞にある“描く”声だと思ったんです。だから、<絵画の様なその声が>ってそのまま書いたんですけど、“じゃあ、何色なんだろう?”ってイメージした時に、“青だな”と思って。秘めごとのカラーは赤ってみんな思ってくれてるんですけど、そこに対して、歌声はブルーなんじゃないか?…ブルーというのは、海や空、雨であったり、感情表現でも具体的な使われかたをしたり、人の生活や感情に直結する部分でみんながいろんなものをイメージできる色だと思うんです。でも、僕はもっとディープなものと捉えていて」

──憂鬱さや青春もブルーですね。

木天蓼「そうなんですよ。悲しさと優しさと喜びが表現できるのも青だと思っていて。なので、そういう意味で自分の中では青=七色。青の中でいろんな色彩を持っているって捉えています。これはもう漠然としたイメージなんですけど、詩音さんが描くように歌ってくれるからこそ、より秘めごとらしく情景が描けています。そういう意味で、今回の色としては、ブルーの中でも「シアン」。“より水彩に近いようなものかな?”と思っています。これから描く余力があって、儚さがあって、未来への透明度の高さや明るさもある。なのでタイトルを「シアン」にしました」

──「劣等感」から「ハウル」、そして、リスナーに向けたアンサーソングのような「シアン」と変化の真っ只中にいると思いますが、これからの未来はどう考えてますか?

詩音「最初に秘めごとを始めたときの初期衝動…名前の由来の一つでもある“秘めている想いを音楽にする“だったり、”生活や想い出に寄り添う忘れられぬ音楽を君に”って気持ちは忘れずにいたいです。ライブに来てくれているみんな、ライブに来ていなくても聴いてくれているみんな、今後もそんな君のことを想いながら、曲を作って届けていきたいです」

木天蓼「ライブのお客さんやリスナーさんが増えていることも嬉しいですし『HOWLING MIND』のCDが何回再入荷しても売り切れているっていう状況も、音楽家としてはすごく嬉しくて。もちろん、配信やSNSを含めて、どんなツールでも聴いていただけることは嬉しいんですけど、こたわりまくって作っているCDを手に取って、触れられる音楽として楽しんでもらえているっていうのは、また違った喜びというか、すごくありがたいです。これからも、ずっと聴いていただけるような楽曲を目指して、秘めごとらしく、みんなと共に色んな景色をみていければと思っています」

(おわり)

取材・文/永堀アツオ
photo by ヨシハラミズホ

RELEASE INFORMATION

2025年7月30日(水)配信

秘めごと「シアン」

LIVE INFORMATION

秘めごと Premium Acoustic One Man Live 晩夏、月影と君 Vol.2
2025年8月24日(日) 東京 下北沢440(four forty) ※SOLD OUT

秘めごと presents [count sheep]3匹目
2025年9月4日(木) 東京 渋谷CLUB CRAWL ※SOLD OUT
出演:秘めごと / シズクノメ

おすすめの記事

新着記事

  1. 【製氷器で簡単!じゃがいも×スパムのひと口揚げ物レシピ】お弁当にぴったりなサクほくスパムハッシュ!

    BuzzFeed Japan
  2. 第27回【私を映画に連れてって!】映画女優「薬師丸ひろ子」と「原田知世」との運命的な巡り合い

    コモレバWEB
  3. 尾道クラフトビール「しまなみブルワリー」の新商品、トロピカルな香り広がる夏限定ビール

    旅やか広島
  4. 【千葉ロッテ】【千葉ロッテ】ファーム移転先の君津市とフレンドシップシティ協定を締結!学校訪問活動やマリーンズ主催の一軍公式戦における市民優待などで連携!

    ラブすぽ
  5. 「通常学級に行きたい」発達障害の小5息子。特別支援学級からの転籍に、親としては不安も…

    LITALICO発達ナビ
  6. 世代を超えて楽しめる新感覚盆踊りフェス 「Everyone♡Miki Fes inメッセ三木」 三木市

    Kiss PRESS
  7. 8/2(土)『第41回真田まつり~2025夏の陣~』鉄砲隊演舞や真田六文銭太鼓など勇壮なステージ&真田三代花火の打上も!@長野県上田市

    Web-Komachi
  8. 8/5(火)』約8000発の花火が上田の空を彩る『第38回信州上田大花火大会』長野県内の煙火業者3社が競演する豪華スターマインや連続打ち上げ花火など見どころ盛りだくさん@長野県上田市

    Web-Komachi
  9. 記念企画の花火に注目!「第50回江戸川区花火大会」が8月2日に開催

    さんたつ by 散歩の達人
  10. 古澤巖×山本耕史 新感覚の音楽のステージ『Dandyism Banquet ダンディズム バンケット3』全国ツアーがスタート

    SPICE