下がってもまだ課題あり。日米関税交渉の影響
ニュースキャスターの長野智子がパーソナリティを務める「長野智子アップデート」(文化放送・月曜日15時30分~17時、火~金曜日15時30分~17時35分)、7月30日の放送にキヤノングローバル戦略研究所・上席研究員の峯村健司が出演。日米関税交渉の合意を受け、日米経済にどういった影響が出てくるのかを解説した。
鈴木敏夫(文化放送解説委員)「トランプ政権との日米関税交渉、急転直下の合意から1週間となります。EUとも合意などと動き始めています。この辺りの合意はどうご覧になりますか?」
峯村健司「もともとトランプ政権の戦略だったんですね。まず同盟国である日本。今回の関税は対中国、牽制するという狙いがあったので、中国のライバルである日本と結ぶ、と。それを日本モデルというかたちでほかの国にもやっていこうとした。しかし日本の交渉がなかなか進まなかったので、ほかの国も遅れた。ところが8月1日という新しい期限までに、ぎりぎりのところで今回、日本と合意できた。それでEUなど、どんどんドミノ倒しのようにできている、という状況です」
鈴木「まず日本が念頭にあると」
峯村「ありますね。相互関税のことばかり気になるという方が多いんですけど、じつはこれ、自動車関税だったんですね。25%かけられていたんですけど、日本側は最大の輸出先がアメリカですので、なんとかしてくれ、と言っていた。ただしアメリカ側としても、自動車関税を一律でかけているので日本だけ下げるというのは難しい。それで揉めに揉めてきた、という経緯があって。そこで日本側が切ったカードが2つです」
鈴木「はい」
峯村「1つがコメの輸入を増やすこと。私がゴールデンウィークにアメリカへ行ったときもトランプ政権の複数の幹部が言っていたのが、コメだと。コメは日本の不平等な輸入の管理の問題の象徴だ、ということで。増やせ、というのがまずあった。もう1つが今回の投資ですね。80兆円、最大5500億ドルの投資で経済安全保障、協力していきましょう、と。そこが響いて、この関税を下げるという決定になったと」
鈴木「なるほど。自動車関税はもともと2.5%だった。そこに25%乗っけるぞ、と言っていたけど、25を半分にしたと。12.5+2.5で15%にした、ということですね。日本もクルマの輸出大国である。EUもドイツやフランスのクルマなどが輸出されてくるから合わせていった、というか」
峯村「EUサイドとしては焦りますよね。日本だけ下がってしまう、ということで。15に下がったのは大きなことなんですよ。一部の自動車会社でリストラを始めているところもあった、25が続いていたら大変だった、というところはあります。ただもう1つ重要なのは、自動車の関連部品。これも日本からアメリカへの輸出、多いんですが」
鈴木「ええ」
峯村「ここはけっこう、コストぎりぎりでやっている。15%だとしても苦しい業者がたくさん出てくるんですね。自動車会社としっかり分けて、自動車部品の業者さんへの補填なり補助を考えなければいけない。そう思いますね」