THE ALFEEファンの聖地、ここにもあり。東あずま『坂崎商店』……坂崎……ん? あの坂崎幸之助さまの!?
THE ALFEEの坂崎幸之助さんは墨田区出身。実家は『武蔵屋坂崎商店』。かつては酒屋さんだったが、現在はタバコ店で、店主は兄の幸夫さんだ。その話芸とギターの腕前は、さすがの血筋と感服したのです。
「アルフィーが続いてると、お店閉められないんだよ」
住宅地の十字路の角に、小さなタバコ屋さんがある。店主の坂崎幸夫さんは、坂崎幸之助さんの4つ上のお兄さんだ。
「戦後、兵隊から帰ってきた親父がここに店を開いたの。親父の実家はもともと江戸川区の平井で酒屋をやってたんだけど、そこは弟に任せて、土地を探して墨田区に店を出したんだよね」
幸夫さんは1950年生まれで、高校を卒業して店を継いだ。
「品物並べたり、配達やったり、ずっと店を手伝ってたからね。音楽のほうに進みたい気持ちもあったけど、長男だしさ」
当時、周辺は家族経営の工場がたくさんあった。
「ガラス、ゴム、金型、鋳物とかの小さい工場があって、みんな家業を継いだんだ。俺の時代はね。せがれの世代になると継がないで自由にやるようになったから、工場はなくなって建て売り住宅やマンションになっちゃった。ちょっと寂しいよね」
酒屋さんのお客さんは、ご近所の見知った人たちばかりだったという。
坂崎家は、家族や親戚など9人で暮らしていた。
「親父は三味線やってて、叔父さん(エッセイストの坂崎重盛さん)はフルートやってたし、幸之助は小学4年生くらいからウクレレやってた。音楽が身近だったよね」
幸夫さんは中学のころにラジオから流れてくるアメリカのフォークに感化され、ギターを手にする。「60年代、ベトナム戦争の反戦フォークっていうのがあって、ピーター・ポール&マリーはよく覚えてる。あとブラザース・フォアとかね。そのあと、日本で岡林信康が出てくる。『山谷ブルース』とか」と話しながら、店内に置いてあるギターを手にとり、ワンフレーズを歌ってくれる。趣味というにはあまりに達者で聴く人をひきつける演奏だ。
「レコードはけっこう集めてたよ。今でも200枚くらいあるけど、だいぶ幸之助が持っていっちゃった。仕事だからさ」
幸夫さんが幸之助さんを語るとき、言葉を尽くさずとも親愛の情が伝わってくる。
酒屋さんは2016年に閉じ、現在はタバコだけを販売している。
「酒屋のときからタバコは売ってて、それもやめちゃおうと思ったの。でも隠居になっても老け込んじゃうし、ファンの人も来てくれるしね。アルフィーが続いてると、お店閉められないんだよ」
最後に、好きな曲はなんですか、と聞くと、「ミュージシャン」と即答して弾き語りをしてくれた。取材チーム3人で聴き入る。
「いい歌でしょ? あんまり知られてない歌で、いいのがいっぱいあるよ。勉強して。歴史が長いからたいへんだと思うけど」
ずっと聞き続けてきたであろう世界随一のファンの言葉に、大きくうなずいた。
武蔵屋坂崎商店
住所:東京都墨田区立花6-1-1/営業時間:8:30~13:00(月は~14:00)/定休日:日/アクセス:東武鉄道亀戸線東あずま駅から徒歩7分
取材・文=屋敷直子 撮影=丸毛 透
『散歩の達人』2025年8月号より