浦島坂田船 “エクソシスト”がコンセプトの恐怖の物語ーー毎年恒例のハロウィンライブ・有明アリーナ公演をレポート(画像:全25枚)
Happy Halloweeeen 浦島坂田幽霊船 ~え!?くぅッッ///そっ♡(腰に手をぽふっ)shh...STRONG...俺の弾丸をバキュうーン♡ホッ、もう地獄はサッタンDEATHね~
2025.10.19 有明アリーナ
うらたぬき、志麻、となりの坂田。、センラの4人からなるボーカルユニット・浦島坂田船が、『Happy Halloweeeen 浦島坂田幽霊船 ~え!?くぅッッ///そっ♡(腰に手をぽふっ)shh...STRONG...俺の弾丸をバキュうーン♡ホッ、もう地獄はサッタンDEATHね~』と題したハロウィンライブを2025年10月に東京・兵庫の2都市で開催。今回の浦島坂田幽霊船がいざなったのは、“エクソシスト”をコンセプトにライブの概念を越えて構築した恐怖の物語だった。ここでは、10月19日に有明アリーナで行われた東京公演2日目の模様をお伝えする。
約半世紀前、ある父娘によって発見され、木箱に封印されたはずの悪魔憑き人形。まるでホラー映画な話運びのオープニング映像があけて目に飛び込んできたのは、メインステージ上段中央に置かれた人形入りの木箱だ。「ねぇ、遊ぼうよ。ここ、開けてよ。」と不気味に語りかける人形。不穏に点滅する真っ赤なライト、どんどん大きくなる心臓の鼓動音、ひとりでに開く木箱の扉。「じゃあ、かくれんぼ始めるね?」と人形が宣告し、10のカウントダウンへ。嫌な予感しかしない展開にcrew(浦島坂田船ファンの呼称)がどよめく中、「見いつけた」という声とともにピンスポットライトがセンターステージ中央を照らすと……そこにはあろうことか木箱から出てしまった悪魔憑き人形が。
crewが震え上がる中、ここで現れたのがうらたぬき、志麻、となりの坂田。、センラである。キービジュアルそのまま、祓魔師風衣装をまとって銃を手に持ち、古びた洋館を思わせるメインステージに堂々立つその姿は実に凛々しく頼もしい。となりの坂田。が「楽しめよ、パーティの始まりだ。」と宣言した1曲目は、2025年10月13日に動画公開された「KISS THE BULLET」。恐怖を忘れてしまうキレッキレなダンス、<…弾丸にキスしな>という挑発的なフレーズ、クールな銃の構えに、crewの大歓声があがる。鐘の音が鳴り響き、メンバーの足元に雲海のようなスモークが漂った「HORRORISM」では、リボルバーを両手で持つうらたぬきと片手に持つ志麻、ショットガンを構えるとなりの坂田。とスナイパーライフルを構えるセンラが背中合わせになったり、それぞれに客席を狙い撃つポーズをしたり。これでは、悪魔よりも先にcrewのハートが撃ち抜かれてしまう。
「みなさん、死にたくなければルールを守ってください。十字架が逆さになったら手に持っている灯りを消すんです。光を消せ! 悪魔が来るぞ!」
いつものライブとは異なる緊迫感が漂う言葉をうらたぬきが発すると、ステージ両サイドの十字架がゆっくりと回転し始め、とうとう逆さ十字に。照明が消え、crewもペンライトの光を消して、よもやライブ会場とは思えない闇と静寂に包まれると、ステージ後方のスクリーンに映し出されたのは主観的視点を用いたPOVホラーのようなリアルタイム映像だ。怯えた荒い息遣いとともにカメラがアリーナ客席通路を進んでいくと、血塗れの花嫁衣裳をまとった化物に見つかり、何度も刃物を振り下ろされてしまう……浦島坂田船史上、いや数多いるアーティストのライブ史上、もっとも恐ろしいライブ演出ではないだろうか。
「Bad Monster」では、メンバーがメインステージで、血塗れ花嫁はじめとした化物5体がセンターステージでせめぎ合うようにパフォーマンス。4人の乱射した銃弾により悪魔が一時逃亡すると、ステージ両サイドの十字架が正位置に戻る。「駆け上がるボルテージ」では、メインステージ中央から伸びる花道を通って4人がセンターステージへ。センラが「東京2日目、元気出せますか!? ついてこいよ!」と、志麻が「踊りましょう!」と呼びかけた「グリムメイカー」では、十字架装飾のトロッコにそれぞれ乗り込んでアリーナ客席通路を進む4人。疾走感あふれる「ストリーミングハート」にしても、悪魔が退散した束の間、メンバーとcrewの笑顔が咲いて一体感高まる浦島坂田船のライブは、やっぱり楽しい。
一転、再びステージ両サイドの十字架が逆さになると、暗闇の中に響く、「魂、ちょうだいよ。許可して?」という悪魔の懇願。対して、「悪魔に魂を許してはいけません、哀れな悪魔に神の赦しを。さあ、祈りましょう。」という志麻の言葉が導いたのは、激重感情まみれの「シックスセンス・ベル」だ。祈りが届かなかったのか、倒れてしまった執事から受け継いだロザリオを首から下げた「悪魔の踊り方」に続き、化物たちに囲まれながらもますます磨かれた歌とダンスで怯むことなく立ち向かった、10月17日に動画公開されたばかりの「Exorcise」。<未来はきっと輝く>という圧倒的な希望のフレーズ、crewも一緒になっての<ライ!ヴァ!マ!クア!>の大合唱で、悪魔を窮地に追い込んでいく。しぶとさを見せた悪魔憑き人形だったが、センターステージ上空に浮かんだところを、「もうちょっと遊びたかったなあ」というセンラの一言と共に躊躇なく銃でとどめの一発を撃った4人。直後、再びメインステージ上段中央に現れた人形入りの木箱。残る不気味な笑い声に“もしやこのあと……”とあれこれ想像がはかどってしまう物語の閉じ方にも、膝を打った。まるで映画やゲームの中に入り込んでしまったかのような没入感に満ちた、“エクソシスト”テーマの前半。やるとなったらとことんやる、それが浦島坂田船だ。
悪魔祓いに成功したあとは、恒例の楽しい幕間映像へ。催眠術は本当なのかを検証する動画でのドッキリ企画。ホラー演出で味わった恐怖が、一瞬で吹き飛んでいった。
4人がハロウィンにぴったりなオレンジ色のざっくり編みニットトップスで登場、トロッコでアリーナ客席通路へ向かったのは「最強ライバル」。トロッコを連結し、センターステージをはさむように向かい合って歌ううらたぬき&となりの坂田。と志麻&センラの2組は、まさに“最強ライバル”だ。うらたぬきが黒色、志麻が茶色、となりの坂田。が灰色、センラが白色の猫耳カチューシャをつけて歌った「おーるでい・おーるにゃいと」では、あざとかわいさマックスでじゃれ合う4人。悪魔も裸足で逃げ出す賑わいだ。
センラは「Lie or Truth」で、志麻は「DA DA DICE」で歌にダンスにバチバチにきめたかと思えば、うらたぬきは「プロポーズ」であまりにも感情的な歌声を響かせたり、となりの坂田。は「MASK」で闇をまとうアンニュイな表情をのぞかせたり。ソロパートでも沼に引きずり込んでいく4人、本当に油断ならない。
4人がセンターステージにそろい、メインステージ前方に勢いよく噴き上がるファイヤーボールを背に、ダイナミックなダンスで魅せた「MINE MINE」のあとは、ボケたりツッコんだり相変わらず息ぴったりなMCタイムをはさんで、「君色々移り -トリビュートver.-」へ。顔を見合わせ、歌声をていねいにつないで重ねていく4人の姿は、何度見ても尊い。
そんな4人がわちゃわちゃ楽しげに歌い、志麻ととなりの坂田。が腕でつくったアーチをうらたぬきとセンラがくぐったり、うらたぬきと志麻、となりの坂田。とセンラが背中合わせになって歌ったりした「ばく」。再び4人がトロッコに乗り込んでたっぷりファンサしながら歌った「シンデレラステップ」。crewが全力コールする中、ダンサーも加わり横一列になっての肩組みダンスでも沸かせた「Q for U」。華麗なマイクスタンドさばきにダンスパートにアイドルを極めてがっつりcrewの心を奪った「フライングゲット」。そして、強すぎるハロウィンソング「ハロウ!ゴーストシップ」。怒涛のたたみかけに、結成12年を越えた浦島坂田船の底力をあらためて感じたりもした。
crewの期待に応え、「今日から俺たちゴーストバスターズ」でスタートしたアンコール。季節を先取りして届けたクリスマスソング「ドラマティックノエル」では、メインステージの階段に座り、うらたぬきととなりの坂田。、志麻とセンラがぎゅっと隣り合ったり、うらたぬきとセンラが足上げダンスをしたり、志麻ととなりの坂田。が肩を組んだり。「フレテ」であふれたメンバーとcrew、お互いの“好き”と多幸感は、とても温かく優しい手触りだった。ホラーモードと祝祭モード、ガラっと異なるトーンを違和感なく共存させた浦島坂田船、お見事である。
来年も、きっとまた。豊かな発想と大胆な実行力で、ハロウィンシーズンを色鮮やかに彩ってくれる浦島坂田船に出会いたい。
なお、この日の模様を収めた映像は、12月24日のクリスマスイブから2026年1月3日までStreaming+とZAIKOで配信される。さらに、本日・10月31日からコラボキャンペーンが開催中のJOYSOUNDでも、12月25日のクリスマスから2026年1月31日まで「みるハコ」で視聴できるとのこと。過去に例を見ない本格的なホラー演出と、4人の祓魔師がスタイリッシュに悪魔から守ってくれる2025年の浦島坂田船ハロウィンライブ、何度でも味わってみてほしい。
文=杉江優花
撮影=小松陽祐(ODD JOB)、堀卓朗(ELENORE)