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3季ぶりの「岸本隆一不在」に直面している琉球ゴールデンキングス その“影響”は…見える課題と成長する選手たち

OKITIVE

3Pシュートを放つ松脇圭志
クオーターの終了間際に3Pシュートを沈めたヴィック・ローに駆け寄るキングスの選手たち=12月15日、沖縄アリーナ(長嶺真輝撮影)

プロバスケットボールBリーグの琉球ゴールデンキングスにとって、生え抜き13シーズン目の岸本隆一はチームの「心臓」と言っても過言ではない。 相手を翻弄する巧みなハンドリングと勝負強い3Pシュートは代名詞であり、老練なゲームメイクにも年々磨きが掛かる。岸本の吸引力は相手ディフェンスに狂いを生じさせ、チームメイトのパフォーマンスを向上させる役割も担う。チーム最年長の34歳となった今も、存在感の大きさは増す一方だ。 ここ4試合、その岸本の欠場が続く。12月8日にあったホーム戦で左足を痛めたためだ。直近の過去2シーズンはチャンピオンシップ(CS)を含めてフル出場を果たし、欠場するのは2022年2月5日にホームで行われた三遠ネオフェニックス戦以来、実に3シーズンぶりである。 この4試合のキングスの対戦成績は3勝1敗。中地区8位の川崎ブレイブサンダースや西地区8位の滋賀レイクスなど下位チームとの対戦もあったが、ケヴェ・アルマと平良彰吾も大半の試合を欠場したため、評価に値する結果だろう。 エースガードの離脱で不安定さは見えるが、限られた人数の中でプレータイムを伸ばし、存在感を増している選手もいる。岸本不在の影響を探る。

岸本が生んでいた「ズレ」と、“強み”を見極める力

ホーム戦後、ジャージ姿でファンに手を振る岸本隆一

12月15日に沖縄アリーナであった秋田ノーザンハピネッツ戦。キングスは前日に行われた連戦の1試合目を63ー67で競り負けたが、この日は脇真大やヴィック・ローらがけん引して70ー59で勝利した。 ただ、ターンオーバーの数が19回で今シーズン最多。チームの平均スティール数が8.3本とリーグトップで、強度の高さと組織的なディフェンスを武器とする秋田が相手だったとはいえ、ターンオーバーの平均が12.5回のキングスにとってはかなり多かった。 岸本不在の間は同じく平良も欠場し、18日の滋賀戦ではさらに伊藤達哉も途中離脱。PGが決定的に不足する中、この4試合に限った平均ターンオーバー数は15.2回となっている。15日の秋田戦後、桶谷大HCは岸本が抜けたことによる課題に触れていた。 「隆一が抜けた中、自分たちは若いチームということもあって、ファンダメンタルな部分をまだ持てていません。そういうところを流すのではなくて、しっかりディテール(細部)までやっていきたいです」 改めて岸本が担っていた役割を聞くと、こう続けた。 「ここ最近の隆一は、自分から点数を取りに行くというよりも、コートにいるメンバーの中でアドバンテージ(強み)がどこにあるかを見付けてくれる。だから、他のメンバーもフラストレーションが溜まらない。ちゃんとセットアップできるところは隆一のすごいところだと思います」 当然、岸本の存在感の大きさは選手たち自身も強く感じている。同じPGの伊藤は「隆一さんがいる、いないで、自分たちのバスケ自体が変わってくる」と言う。では、どこに「違い」が出るのか。今シーズンが開幕して以降、岸本と共に先発を務めてきた脇の話が分かりやすい。 「隆一さんがボールを持つだけで、相手チームは『何かしてくる』と思うから、ディフェンスがシュリンク(収縮)します。そこからズレもできるので、ビッグマンにパスを落としたりすることもよくできていました。隆一さんがいなくなったところで、僕たちもまだアジャストできていないので、次戦に向けてしっかり準備していきたいです」 岸本の不在により、相手チームもキングスのハンドラーに対するプレッシャーを強めている。そのプレッシャーをいなしてターンオーバーを減らし、いかにズレをつくるかは、現状の大きな課題だろう。

「試練」で存在感増す荒川颯、滋賀戦はターンオーバーゼロ

ボールをコントロールする荒川颯

チームの柱を失った厳しい状況下で、選手やコーチからは「試練だと思っている」「成長するチャンス」など、ポジティブに捉えようするコメントが目立つ。中でも、それを体現しているのが荒川颯だ。 シューティングガード(SG)がメインのポジションだが、PG不足の中でハンドラーの役割も担う。今シーズンの平均出場時間は14分59秒なのに対し、この4試合はいずれも20分を超えた。 本人が「コントロールしようとしてしまうと、クイックネスとか僕の良さが消えてしまうので、PGという意識を捨てて臨んでいます」(12月11日、川崎戦)と言うように、思い切りの良さを維持している。この4試合における3Pシュートの成功率は47.3%(19本中9本成功)に達しており、そのメンタリティが功を奏していることが分かる。 ターンオーバーの多さを以前から課題とし、15日の秋田戦は一人で6回に及んだ。ただ、この試合における「+/−」(その選手が出ている時間帯の得失点差)はチームで3番目に高い「+10」。試合後、桶谷HCも高く評価していた。 「PGとして『よくやっているな』と思います。彼にとってはターンオーバーも改善すべき部分ではありますが、この6回はボールを離そうとしてる中での6回なので、ずっとドリブルを突き続けてたわけではありません。だから、僕は悪くないと感じています。ボールが繋がるようになってくればターンオーバーも減る。良い兆候だと思います」 この“予言”通り、荒川は次の滋賀戦に今季初の先発としてコートに立ち、21分3秒のプレータイムでターンオーバーはゼロ。アシスト数はB1でのキャリアハイとなる5本に達し、「+/−」はチームで2番目に高い「+7」という安定感を見せた。 この試合は最大19点をリードしながら、ディフェンスの乱れから最終盤に一時逆転を許し、なんとか逃げ切るという試合展開だった。指揮官は「経験がない若い選手たちにとっては、経験しないといけない部分です。勝ちながら成長できると思うので、もっとできるように頑張っていきたいです」と話した。 荒川のほか、脇もボール運びや相手ディフェンスのズレをつくる役割を担っており、この「試練」を受けて成長の兆しを見せ始めている。

クラッチタイムの主役は… 滋賀戦は松脇が3Pヒット

3Pシュートを放つ松脇圭志

岸本不在の影響で、もう一つ気になる点がある。 クラッチタイム(勝敗を決定づける決定的な場面)で誰が“主役”になるか、という部分だ。リーグ屈指のクラッチシューターである岸本は、これまで幾度となく勝利を手繰り寄せる一本を決めており、試合の最終盤でボールを任されることが圧倒的に多い。 この時間帯で岸本以外に責任を取れる選手として、まず名前が挙がるのはヴィック・ローだ。 もともと岸本と同等の勝負強さを兼ね備えており、実際、ここ数試合の最終盤はローの存在が一層際立つ。難しい試合を勝ち切った滋賀戦についても、桶谷HCが「最後はヴィックが球際で頑張ってくれたおかげで勝てました」と評した通り、攻守やリバウンドにおいてチームを力強くけん引した。 この試合の残り1分を切った5点リードの場面で、勝負を決める3Pシュートを沈めた松脇圭志もクラッチタイムでより存在感を高めたい一人だ。試合後には「あまり乗れない時間が多かったですが、最後の一本を決め切れて良かったです」とコメント。試合ごとで3Pシュートの成功率に波があるが、この試合のように勝負所での決定率を高めることができれば、岸本不在のチームを救う場面は増えてくるだろう。 怪我人が相次ぐ中、今後どの選手が見せ場をつくり、ステップアップしていくのか。注目だ。

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