《市民病院医療事故多発》医療ミスの脳外科医 業務上過失傷害罪で在宅起訴〜神戸地検姫路支部
赤穂市民病院の脳神経外科手術で2020年1月、業務上の注意義務を怠り、誤って神経を一部切断して患者に重い後遺障害を負わせたとして、神戸地検姫路支部は12月27日、執刀した医師を業務上過失傷害罪で在宅起訴した。
起訴されたのは、松井宏樹被告(46)=大阪市淀川区=。手術で助手を務め、今年7月に松井被告とともに書類送検された上司の科長(60)は不起訴となった。検察は松井被告の認否や科長を不起訴にした理由を明らかにしていない。
起訴状などによると、被告は20年1月22日、主治医として脊柱管狭窄症と診断した女性患者(当時74歳)の手術を執刀した。ドリルで腰椎を切削する際、止血を十分に行わず、術野の目視が困難な状態で漫然とドリルを作動して硬膜を損傷。さらにドリルに神経の一部を巻き込んで切断して患者に全治不能の傷害を負わせた、などとしている。
松井被告をめぐっては、関わった手術のうち少なくとも8件で患者が死亡または後遺障害が残る医療事故が発生。別の70代女性患者に対する手術で起こした医療事故でも業務上過失傷害容疑で書類送検されたが、同支部は今年9月に不起訴とした。また、その手術に関して虚偽の医療事故報告書を作成したとして、松井被告と科長、同僚医師が書類送検された有印公文書偽造・同行使容疑については27日に不起訴となった。
時効(業務上過失傷害罪は5年)まで残り1か月を切ったタイミングでの起訴に、検察幹部は「複数の専門医の意見を聴くなど慎重に捜査を進めた。結果の重大性などを鑑みて起訴の判断に至った」と語った。
関係者の話では、本件訴訟には被害者やその代理人が公判に出席して直接被告人に質問もできる被害者参加制度が適用される見通し。女性患者の長女は「二度と母のような医療被害者を生むことがないよう、執刀した医師を厳罰に処し、医療過誤を起こした医師が繰り返し手術したり不適切な診療を続けることのないよう、医道審議会には厳しい行政処分を下していただけますよう強く望みます」とブログにコメントを綴った。
松井被告は21年8月に赤穂市民病院を依願退職。その後は大阪市の医誠会病院を経て、吹田市の吹田徳洲会病院に採用された。かつて在籍した医師が在任中の医療過誤をめぐる罪で起訴されたことを受け、赤穂市民病院の開設者である牟礼正稔市長、高原秀典・病院事業管理者は27日、「訴訟係属中のため、本件に関するコメントは差し控える」と書面で回答した。
松井被告は21年8月に女性患者と家族から民事でも訴えられた。一方、23年10月には、専門医試験の受験を妨害されたなどとして、市民病院在籍当時の院長と上司だった科長、赤穂市を相手取り、損害賠償を求める民事訴訟を起こした。いずれの裁判も係争が続いている。
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関係者コメントなどを追記しました。(2024年12月28日7時30分)
相関図を追加しました。(2024年12月28日9時30分)
記事と相関図に一部誤りがありましたので更新しました。(2024年12月28日19時5分)