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「生半可なPGじゃない」伊藤達哉が2カ月ぶり復帰、キングスを救った色褪せない”ゲーム勘” 失意の中で平良彰吾から刺激も…

OKITIVE

3Pシュートを沈め、満面の笑みを浮かべる伊藤達哉=12月7日、沖縄アリーナ(長嶺真輝撮影)

プロバスケットボールBリーグ西地区の琉球ゴールデンキングスは7、8の両日、沖縄アリーナで東地区の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ(以下、名古屋D)と連戦を行い、86ー68、92ー82でいずれも勝利した。通算成績は13勝5敗。西地区首位の島根スサノオマジックと勝敗数で並び、地区2位につける。 昨シーズンまでキングスの日本人エースだった今村佳太らを擁する名古屋Dに対して連勝を飾ったが、2試合ともビッグマンの一人であるケヴェ・アルマが右足部のコンディション不良で欠場。さらにポイントガード(PG)の平良彰吾が1試合目途中での接触で脳震盪を起こして離脱し、チームの絶対的支柱であるPG岸本隆一も2試合目の序盤で足を痛めてコートを離れた。 チームの危機を救ったのは、開幕戦で負傷してから約2カ月ぶりの復帰となったPG伊藤達哉である。 まだ怪我明けのため、2試合を合わせてプレータイムは25分33秒と決して多くはなかったが、古巣の名古屋Dを相手に躍動。ゲームコントールや自らの得点で存在感を発揮し、チームの連勝に大きく貢献した。

相手ディフェンス見極め攻略 得点、アシストで貢献

ボールを運びながら味方に指示を出す伊藤

7日に行われた1試合目の第1Q残り1分48秒、タイムアウト明けのプレー再開前、客席が歓声と拍手でにわかに沸き始めた。伊藤がニコニコしながら、ベンチからコートへ歩みを進める。10月5日に沖縄アリーナで行われた開幕戦で痛めた右肘には、黒いサポーターを着けていた。 この直前、平良が脳震盪でベンチに下がったため、急きょの出場だったという。 「2カ月間チームから離れて、対人練習も少し入っただけなので、最初は『2、3分出てコンディションを整えて』という話でしたが、まさかのタイミングで出番が来ました。名古屋D戦は出たい気持ちはありましたけど、まだ肘の状態に怖さもあったので、無理はしないようにしてました。ただ怪我人が出て、自分もチームの勝利のためにできることをやらなきゃいけないと思ってプレーしました」 このコメントからも分かるように、万全ではなかった。しかし、すぐにプレーで魅せる。 ハーフコートで3-2ゾーンを敷く名古屋Dの守備に対し、トップの位置でボールを持った伊藤。ドリブルでディフェンスの間を割ってインサイドに進入すると、真ん中にぽっかりと空いたスペースでミドルシュートを放ち、すぐに得点を記録する。開幕戦は8分55秒のみの出場で離脱したため、これがキングスに移籍後、初得点となった。

見せ場は続く

このクオーター最後のオフェンス。右45度から再びドライブで切れ込み、急停止から右手一本のシュートフェイクで相手ディフェンスを飛ばせ、左にターンしてから軽々とフックシュートを沈めた。終了ブザーに間に合わず、惜しくもノーカウントとなったが、ベンチから飛び出した岸本が抱き付くなどチームを盛り立てた。 この試合は8分3秒のみの出場だったが、3Pシュート1本を含む7得点を挙げ、2リバウンド1アシスト1スティールも記録。8日にあった2試合目は平良に加えて岸本も離脱したため、出場時間が17分30秒に伸び、要所で6得点5アシストと活躍した。 自身が「体が動かな過ぎて、手だけでディフェンスをしてるみたいになっちゃいました」「まだコンディションが全然良くないです」と言う通り、最大の持ち味である高強度のディフェンスの復活はまだこれから、という印象だったが、オフェンスで存在感を示し「スピードを生かしたプレーなど、復帰戦にしては上出来だったと思います」と自己評価した。 「Let’s go! Let’s go!」と大声で味方を鼓舞したり、ハドル(コート上で輪になって話し合うこと)を呼び掛けたりするリーダーシップも健在だった。 名古屋Dが得意とするオールコートプレスに対して、ボール運びに苦戦する時間帯もあったキングス。しかし、伊藤がコートにいる時はボールプッシュが速くなり、相手のディフェンス網に引っ掛かる場面が減った。それも狙い通りだったようだ。 「昨シーズンまでのキングスの戦い方だと、ポゼッションごとでセットする場面が目立っていましたが、今シーズンは僕が入り、相手のプレッシャーを勢い良く突破することが必要だと思っています。それは全員に伝えていました。それは2日間続けてうまくできたと思います。名古屋Dのやりたいことは分かっていたので、今回はその上を行けたかなと思います」 優れた状況判断で、相手の守りを攻略した。

“PG3人体制”に向け「言葉と行動で引っ張りたい」

好プレーを見せた伊藤をハイタッチで迎える桶谷大HC

2カ月ぶりの実戦にも関わらず、試合の空気を支配するような時間帯もあった伊藤。その存在感は、桶谷大HCに「生半可なPGじゃない。リーグを代表するPGだということを、復帰した日に見せてくれました」(7日の記者会見)と言わしめたほどだった。 8日の記者会見でも桶谷HCに伊藤の評価を聞くと、以下のコメントが返ってきた。 「相手が攻められたら嫌な部分を丁寧に、かつ大胆に突いていけるから、流れを変えられますよね。バスケットはプレーセットがなかったとしても、基本的にはアドバンテージを作っていくことだけを考えるスポーツなので、それをしっかりやってくれています。それが1本1本のオフェンスで出るから、脇(真大)や荒川(颯)もやりやすくなったと思います」 生粋のPGとして鳴らしてきたとはいえ、2カ月間は対人練習すらほぼやっていない。試合の流れを読んだり、相手のウィークポイントを見定めたりする“ゲーム勘”を失うことはないのか。本人の認識はこうだ。 「言葉にするのは難しいですけど、そこは経験が出てるのかなと思います。それこそ名古屋Dに所属した3年間でも本当にたくさんのものを積み上げてきたので、その経験が自然と出ていると感じます」 今節は試合途中で岸本と平良が負傷離脱したが、今後はその2人と合わせてPGが3人体制となる。昨シーズンまでキングスの課題の一つだったボール運びの部分に厚みが加わる形だ。 伊藤は「3人とも違うタイプのPG」とした上で、自身のリーダーシップのあり方が個性になると見る。「例えば隆一さんはすごく言葉を発するというよりも、プレーで引っ張っていくタイプ。自分は経験もそうですけど、言動や行動で若手を引っ張っていくことが必要だと思っています」と役割を見詰める。

「今が一番楽しい」笑顔が目立つ理由は…

前向きなコメントが目立つ伊藤だが、開幕戦でいきなり右肘を負傷した時は、失意に暮れたという。名古屋Dに所属した最後の3シーズン目はプレータイムが減少し、「自分を取り戻す」という強い覚悟でキングスに移籍した。だからこそ、突き付けられた全治2〜3カ月という診断は、残酷と言う他ないものだった。 「怪我をした瞬間は自分も『やばい』と思い、本当に落胆しました。キャリアの中でも怪我が多いのですが、それもあって、自分に対して腹が立った部分もありました。キングスのために戦うという気持ちで加入したのに、初戦で怪我をしてしまった。本当に情けなかったです」 そんな中、自らを奮い立たせてくれる一人の選手がいた。自身が抜けた穴を埋めるため、B3の横浜エクセレンスから期限付き移籍し、当初の約1カ月間から今シーズン終了までの契約延長を勝ち取った平良である。 「彰吾が入ってきてくれて、彼の頑張りでチームがここまで良い成績を残せていると思っています。それを見て、自分も『しっかりやらなきゃいけない』と改めて感じました」 実際、この2カ月間、伊藤の姿は試合前のシュート練習や試合後の整列など至るところで目にすることができたが、常に笑顔が目立っていた。それだけ、リハビリの日々に対して前向きに取り組めていたということだろう。 「キングスに来て、キャリアの中でも今が一番楽しいので、自然と笑顔が出ているんだと思います。前のシーズンはまわりからも『笑顔がない』と言われていたので(笑)。ファンの皆さんが盛り上げてくれることが、笑顔になってる一番の理由だと思います」 30歳の中堅プレーヤーとなった伊藤。経験を生かした巧みなゲームメイク、激しいディフェンス、チームメートを鼓舞する声掛けという強みに“自然体な笑顔”も加わり、キングスの一体感をさらに高めていく存在になるに違いない。

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