<スベスベマンジュウガニ>は本当にすべすべしてる? 名前は可愛いけど有毒生物
丸くてツヤツヤした姿に、なんとも可愛らしい「スベスベマンジュウガニ」という名前。初めてこの名前を聞いたとき、「美味しそう」と思ってしまった人も多いかもしれません。
筆者自身も図鑑で見つけたときには、殻のあまりのスベスベぶりに「ほんとにスベスベしてる!」と声が出たほどです。
その名前のインパクトと裏腹に、実はこのカニ、強い毒を持つことで知られています。見た目とのギャップが面白くて、「いつか本物に会ってみたいな」と思わせる魅力があるのです。
そんなスベスベマンジュウガニの生態や名前の由来、そして毒の正体までまとめました。
スベスベマンジュウガニの生態や生息地
いちど聞いたら忘れられない「スベスベマンジュウガニ」。このユニークな名前は、その名の通り表面がなめらかで、まるでおまんじゅうのような質感から来ているとされています。
見た人の素直な感想がそのまま名前になったような親しみやすさがありますね。
スベスベマンジュウガニは、インド太平洋の温暖な海に広く分布しており、日本でも伊豆諸島や紀伊半島、沖縄などの浅い岩場やサンゴ礁で見つかります。甲羅の直径は約3センチ前後と小型で、暗赤色〜黒褐色の地に白い斑点があり、まるで和菓子のような見た目をしています。
昼間は岩陰などに身をひそめ、夜になるとゆっくりと行動を始める夜行性。その動きはおっとりしていて、敵に立ち向かうようなタイプではなく、目立たず静かに暮らしているのです。
美味しそうな名前なのに毒がある
しかしこの可愛らしいカニには意外な一面があります。
なんとスベスベマンジュウガニは、猛毒を持つ危険生物なのです。美味しそうな名前の印象とは裏腹に、食べると命に関わる可能性もあるため、食品としての流通は禁止されています。
このカニが持つ毒は「テトロドトキシン」や「サキシトキシン」という強力な神経毒で、フグ毒と同じく加熱しても無毒化されません。特に内臓部分に高濃度で蓄積されているため、仮に身だけを食べたとしてもリスクは非常に高いといえます。
実はこの毒は、カニ自身が作り出しているのではなく、毒を持つ微生物やプランクトンなどを食べることで体内に蓄積されると考えられています。食物連鎖の中で自然に毒を取り込んでしまうのです。
そのため、漁師たちの間では昔から「触ってもいいけど、絶対に食べてはいけない」と言われています。現在は食品衛生法により販売・提供が禁止されています。
スベスベマンジュウガニに会える日を夢見て
スベスベマンジュウガニは、その名のとおりスベスベしていて、和菓子のおまんじゅうのような可愛らしい見た目のカニ。小ぶりでおとなしく、岩場にひっそりと暮らす姿はどこか愛嬌すら感じさせます。
しかし、その見た目に騙されてはいけません。体内に強力な毒を持ち、人間にとっては非常に危険な存在でもあります。かわいいからといってうっかり触れたり食べたりしないよう、注意が必要です。
それでも、ユニークな名前とギャップのある毒性、そしてどこか憎めないその姿に惹かれる人は少なくないはず。筆者もいつかこの目で可愛らしい実物のスベスベマンジュウガニを観察してみたいな、と思いを馳せています。
(サカナトライター:halハルカ)