平成期に山陽を駆けた113系!岡山・広島で活躍した「700番代」を振り返る
text:MSかぼちゃ(X:@MS3167)
photo:おれんじらいん
111系・113系・115系といった直流近郊型電車の研究を活動のメインとし、鉄道系サークル「日本かぼちゃ電車学会」の主宰も務め、動画や同人誌でその成果を発表しているMSかぼちゃさんの連載!「徹底研究!国鉄近郊型電車113系115系」。今回は113系700番代のうち、2010年代前後に岡山・広島地区で活躍したグループについて振り返ります。TOMIXから待望のNゲージ製品が発売された113系700番代ですが、どのような経緯で山陽地区へと転出していったのでしょうか。(編集部)
【写真】山陽地区で活躍した113系700番代 その活躍を写真で振り返る!
8月23日にTOMIXからNゲージ製品が発売された113系700番代。1974年の登場以来一貫して京都・滋賀地区を中心に活躍していた同車ですが、2010年頃の数年間、岡山・広島などの山陽地区で運用されていたこともありました。今回は、700番代の製品化を記念して、山陽地区を走った113系700番代について振り返ってみましょう。
▲岡山地区で6編成が活躍した113系700番代。写真のB01編成は前面窓に金属板が取り付けられないまま引退した。
‘12.3.2 B01編成 宇野線 大元
113系700番代が山陽地区に初めて貸出されたのは意外にも早く、2004年秋の事でした。当時発生した台風18号の被害により岡山地区にて車両不足が発生し、運用終了から間もなかった宮原区の6連S6編成を急遽借り入れ、4連化の上でB01編成として運用しています。ただし、この取扱は長く続かず、1か月後には別の編成と交代する形で関西地区に返却されました(この時、もともと所属していた宮原区ではなく京都所へ転属している)。
その後しばらくは700番代が山陽地区に足を踏み入れることはなかったのですが、2007年春ごろに京都所のL13(先述したS6編成が京都所に転属したもの)・C14編成の2本が相次いで岡山電車区に貸し出され、B01・B02編成として7月より運用が開始されました。
その後、岡山区には2009年までに合計6本の113系が貸出されています(ただし、同時に運用された編成は最大5本)が、そのうち3本は2009年11月までに京都所に返却もしくは後述する広島所に転出しており、その後は3本体制で使用されました。
広島地区における113系700番代の活躍は、岡山よりも少し遅れて2008年ごろより始まりました。
京都所に所属していたC02編成・L17編成が広島所に転属し、F-01・F-02編成として運用を開始します。この「ヒロF編成」は2008~2010年頃に関西地区(京都所・一部日根野区)から転属してきた113系を表す編成区分で、700番代のほかにも様々な形態の車両が存在し、全17編成のうち7編成に700番代が組み込まれていました。このうち2編成は瀬戸内色に塗装が変更されており、体質改善車を除いた113系700番代としては初めて湘南色以外の塗装を纏った例となりました。
▲瀬戸内色に塗装が変更されたF-12編成。700番代ではほかにF-09編成が塗装変更されている。
‘10.4.1 クハ111-764 山陽本線 広島
山陽地区における113系700番代の運用は、基本的に岡山・広島両区所とも主力車両の115系を補佐をするものでしたが、その内情は大きく異なる物でした。
岡山地区での活躍は、朝夕ラッシュ主体の定期運用のほか、臨時列車や他形式の代走などにも多く使われ、ユーティリティプレイヤー的な活躍を見せていたほか、2010年以降は岡山に所属していた103系H編成の運用を引き継ぐ形でも使用されましたが、基本的には小規模な活躍にとどまりました。
一方、広島地区では一定の勢力があった103系B・E編成を置き換える形で運用を開始しているため、呉線を中心とした近距離運用において多く使用されたほか、日中にもある程度の数が運用されており、広島駅近辺においては頻繁に姿を見ることができました。
▲朝ラッシュには2編成併結の8両編成で運用される姿も多く見られた。
‘09.12.24 F-06編成+F-08編成
このように山陽地区で全12編成(岡山・広島の両方で運用された編成も存在する)が運用された113系700番代ですが、その活躍は長くは続きませんでした。
2011年頃より、関⻄地区(宮原区・⽇根野区)から、より程度のいい 113 系が広島地区に多数転⼊し、新たに「P編成」として運用を開始します。これによってF編成のほとんど、特に700番代は全車が置き換え対象となり、2013年までに115系に改造されたクハ115-759を除いて全車が運用を離脱、そのまま廃車されました。
岡山地区においても、2012年に広島地区と関西地区で発生した余剰車を組み合わせて新たな編成を組成します。編成数が3本と少ないこともあり、700番代編成は数か月ほどで置き換えられ、その後全車が廃車されました。
50年近い113系700番代の活躍の中で、山陽地区で運用された期間は通算しても6年間ほどと、決して長いものではありませんでした。今回TOMIXより製品化された車両は1974年の登場時をモデルとしていますが、加工・改造によって山陽地区で活躍した姿を再現してみるのも良いでしょう。