甘党なら菓子屋横丁へ!揚げたて芋けんぴ&ソフトクリームを食べ歩きする幸せ。『菓匠右門 川越けんぴ工房直売店』
菓子屋横丁。川越の観光マップでひときわ目を引く地名だ。「菓子屋横丁!」と、今度は声に出して言ってみる。ああ、なんてわくわくさせられる響きなんだろう。全長約200mの路地に、飴や駄菓子、芋菓子の店など、20軒ほどがギュッと立ち並ぶ。そこに掲げられた「揚げたて芋けんぴ」の幟(のぼり)の「揚げたて」の文字を、甘党なら見逃すわけがない。
菓匠右門 川越けんぴ工房直売店(かしょううもん かわごえけんぴこうぼうちょくばいてん)
100年以上の歴史を誇る甘党の街
ある晴れた日、午前中のまだ空いている時間帯を狙って、目的の地に足を踏み入れた。菓子屋横丁成立のきっかけは、明治初期に鈴木藤左衛門という人物が、曹洞宗の寺院・養寿院の門前町で駄菓子を製造したことにあるとされている。現在も昔ながらの街並みが残り、まるでタイムスリップした気分に。軒先に並べられているふ菓子や、職人による手作りの飴など、あれこれ目移りして気もそぞろだ。
ひとまずひと通り店を見てから、どれを購入するか決めよう。そう自分に言い聞かせつつ歩いていると、風にはためく幟が目に入った。そこには「揚げたて」という魅惑の文字が。
しかも「芋けんぴ」だなんて。川越といえばサツマイモ。芋菓子はぜひ食べておきたい。いや、食べよう。先ほどの決意はどこへやら、いざ『菓匠右門 川越けんぴ工房直売店』へ!
温かみと旨味が広がる揚げたて芋けんぴにほっこり
『菓匠右門』は、「いも恋」というサツマイモのまんじゅうが有名な菓子店。他にもさまざまな芋菓子を作っていて、そのうちの一つが芋けんぴだ。商品名は「川越けんぴ」という。菓子屋横丁に専用の工房を構え、直売所を併設。ここではありがたいことに揚げたてを食べられる。
設置されているフライヤーは決して大きなものではない。そのかわりひっきりなしに稼働していて、だからこそ「揚げたて」を掲げられるのだろう。工房の規模からも、一気にたくさんの量を揚げて作り置きしているのではない、ということがよくわかる。受け取ると手に温もりが伝わり、幸せのあまりつい顔がニヤけてしまった。
サツマイモは「糖度が高くて、旨味が豊かな紅はるかを使用しています」と、営業部長の白石卓さん。旬の時季に仕入れ、細くカットしたものを素揚げしたうえで冷凍し、保管しておくのだ。仕上げのため工房でもう一度揚げる際には、米油を使い、なるべく短時間でサッパリと揚げる。以前は菜種油や、複数種類をブレンドした油も試したが、「米油100%が最もサツマイモと相性が良かった」のだとか。
おなかに余裕があれば、サツマイモ香るソフトクリームも!
ムラサキイモを使ったソフトクリームも、食べておきたい。いや、食べよう。やはり『菓匠右門』の人気商品だが、こちらの工房で購入すると芋けんぴを1本付けてくれる。温かくてカリッとした芋けんぴと、ひんやりしてふわっと溶けるソフトククリームのコントラストがたまらない。先程の揚げたて芋けんぴをあえて少し残しておいて、ソフトクリームをつけながら食べるというのも良いアイデアだ。
ソフトクリームは「紫芋」「ミルク」、その両方を楽しめる「ミックス」の3種類。いも恋の製造工程で出た端材をペースト状にし、「紫芋」に使用している。舌触りはなめらかで口溶けが良く、甘みがスッと全身に染み渡るよう。「ミルク」はさっぱりした味わいになっているので、サツマイモの自然な風味がしっかりと生かされている。
袋入りの川越けんぴは、基本の「芋蜜」のほか「しお」「ごま」も用意。おみやげはもちろん、自宅用を購入して、後日改めて食べ比べするのも楽しそうだ。きっとまた夢中になって、手が止まらなくなってしまうだろうけど、たまにはそんな日があってもいい。芋けんぴには、あふれんばかりの幸せが詰まっている。
菓匠右門 川越けんぴ工房直売店(かしょううもん かわごえけんぴこうぼうちょくばいてん)
住所:埼玉県川越市元町2-9-3/営業時間:10:00~17:00/定休日:無/アクセス:西武鉄道新宿線本川越駅から徒歩19分
取材・文・撮影=信藤舞子
信藤舞子
ライター
北海道弟子屈町生まれ、札幌市育ち。現在は東京在住。雑誌、WEBメディアを中心に、街歩きや旅、日本の文化について執筆する。なかでもおやつには目がなく、近著は『東京おやつ図鑑 和菓子編』(交通新聞社)。レコードや着物も好き。