三軒茶屋・下北沢・池尻大橋の燗酒の沼へ誘う3つの名店~湯気のぼる酒処へウエルカム~
朝晩の寒さが身に染みてきたら燗(かん)酒の季節が到来だ!酒選びもつけ方も三者三様のお燗番がつける極上の日本酒と、そこに寄り添う多彩な料理でゆるんで、ほどけて、温まろう。
まるく優しく蒸し上げる“蒸し燗”『日本酒 つみりの』【三軒茶屋】
フレンチの料理人として15年の経験を持つ店主の玉木教充さん。勉強で飲み始めた日本酒にはまり、専門店で修業。ある日“蒸し燗”の飲み口に衝撃を受け、2023年に開業した自身の店でも蒸籠で燗をつける。
「ビーカーの底を湯に浸けてムラなく温め、蒸気に当てます。蒸気圧で分子が結合してアルコール感や硬さを抑えてくれるのです」。料理は、うまみを引き出す神経締めの名手から仕入れる鮮魚や産地違いのカキを用意。感動を呼ぶペアリングも試したい。
軽やかな「白隠正宗」、「夜の帝王」、飲み応えのある「笑四季 センセーション生原酒おりざけ」、6年寝かせた「玉川Ice Breaker」、豊かな酸味がカキに合う「醍醐のしずく」など産地や造りも多彩。貴醸酒の「新政 陽乃鳥」(左端)だって燗OK !
『日本酒 つみりの』店舗詳細
日本酒 つみりの
住所:東京都世田谷区三軒茶屋2-14-10 ローヤルマンション1F/営業時間:17:00~24:00ごろ(土・日・祝は15:00~23:00頃)/定休日:月(祝の場合は翌火)/アクセス:東急電鉄田園都市線・世田谷線三軒茶屋駅から徒歩1分
言葉は少々無愛想、燗はやさしい“ツンデレ燗”『燗味処(かんみどころ)』【下北沢】
お通しに差し出されるのは、温かいお椀とお猪口(ちょこ)一杯の燗酒。低めの湯温でゆっくりつけたものだ。お燗番の麻菜実さんいわく「雰囲気と味のギャップにツンデレ燗なんて言われます(笑)」。燗酒専門店の不毛地帯だった下北沢で開店した2019年、「真夏でも燗酒を出すなんて、挑戦しかなかったなぁ」と松雄さん。料理は、燗酒を合わせておいしさが増幅することが基準。正統な和食に、スパイスカレーや四川麻婆豆腐なども用意する。その好相性を体感すべし。
火入れした熟成酒や完全発酵の日本酒が揃う。米のうまみなめらかな「大号令」、「独楽蔵 TAHITO」や酸味のある「睡龍」、さらに「扶桑鶴」「辨天娘」など燗映え必至の山陰の酒も厚めの仕入れ。スパイスカレーにはぜひ「竹鶴 八反」を!
『燗味処』店舗詳細
燗味処(カンミドコロ)
住所:東京都世田谷区北沢2-32-8 SSビル2F/営業時間:17:00~22:00LO(土・日は16:00~21:00LO)/定休日:月(不定あり)/アクセス:小田急電鉄小田原線・京王電鉄井の頭線下北沢駅から徒歩3分
フルーティーな冷酒ラヴァーもとりこにする“生酒燗”『えんじゃく、』【池尻大橋】
「コハク酸とグルタミン酸という、うまみ成分をもつ日本酒は、世界で唯一温めて楽しめるお酒です」。店主の髙木晋吾さんは、電機メーカーのエンジニアとして働いていた頃に燗酒に出合い、そのおいしさに感動して日本酒の世界へ入った。燗酒に力を入れる中でも、通常は冷酒で好まれがちなフルーティーな生酒も積極的に燗にする。「一般的に人気なお酒を温めた時のギャップを体験してこそ、大きな感動があります」。料理との相乗で、燗酒の扉は大きく開かれる。
左から「奥播磨」、「王祿 渓」、「丹沢山 隆」、「長珍」、「悦凱陣」など、うまみと酸味がギュッと詰まった無濾過の生原酒が勢揃い。髙木さんの地元・岐阜の「竹雀 生もと純米吟醸」(右端)は、複雑味と酸味が飛騨牛と相性抜群!
『えんじゃく、』店舗詳細
えんじゃく、
住所:東京都世田谷区池尻3-19-3 ベルエア2F/営業時間:18:00~23:30LO/定休日:不定/アクセス:東急電鉄田園都市線池尻大橋駅から徒歩3分
取材・文=沼 由美子 撮影=山出高士、丸毛 透(燗味処)
『散歩の達人』2025年1月号より