新たなミュージアム 基本計画を策定 機能や事業などを具体化
川崎市はこのほど「新たなミュージアムに関する基本計画」を策定した。「生田緑地ばら苑及び周辺区域再整備エリア」(多摩区)を開設地として決定し、開設時期を最短で2031年度と見込んでいる。計画には、新たなミュージアムが備えるべき9つの機能や、その機能を果たすために実施する3つの事業、施設(諸室)・規模なども盛り込まれている。
川崎市市民ミュージアムは、令和元年東日本台風で被災し、館内での展示などが不可能となった。現在は麻生区の仮設施設を拠点とし、出張形式での教育普及事業などの活動を継続している。
市は新たなミュージアムの整備に向けて2023年5月に基本構想を策定するなど、取り組みを進めてきた。
基本構想で定めた使命や目指す姿を実現するため、今回策定した基本計画では、備えるべき9つの機能を設定した=表。
市民に広く伝えるべき”モノ”の選定と収集を行う「収集」などミュージアムの基盤となる機能を定めたほか、収蔵品や調査研究の成果などの活用を進めていく「展示」「ラーニング」「地域共創」、”ヒト”を通じて、ミュージアムの活動の幅を広げ、さまざまなつながりを創出する機能として「人材育成」「交流」も明記している。
加えて、その機能を果たすために実施する事業を基盤(収集・保管・調査研究・修復)・展示・コミュニケーションの3つに分類。それぞれの事業の活動の方向性、具体的な取り組みについてもふれている。例えば、展示事業では「川崎の過去から現在の変遷を伝え、市民とともに未来を考えることができ、市民が楽しみ、親しむことができ、様々な交流や学びが生まれる展示活動を行っていく」などの概要が示されている。
開設地は「生田緑地ばら苑及び周辺区域再整備エリア」(多摩区)に正式に決定。拠点施設については「文化・芸術と人を守る安全・安心な施設」などの5つの基本方針を定め、延床面積を9500〜1万1500平方メートルと想定している。「収蔵・保管」「調査研究・デジタル化」「修復」「展示」「活動」「ユニバーサル」といったさまざまなスペースが設けられる予定だ。
最短で31年度開館
市は管理運営に民間事業者のノウハウを導入する検討も進める。25年度内に管理運営計画の検討・策定を行う。開館は、最短で31年度を見込む。市の担当者は「新たなミュージアムの整備を起点として、自然環境へ配慮しながら、文化観光の視点も取り入れ、文化芸術と自然が共存する首都圏有数の魅力的なエリアを目指していきたい」と話した。
市は基本計画の策定にあたり昨年、市民意見を募集。意見を踏まえ、一部を追記修正した。意見募集の結果や、基本計画は、市のサイトから閲覧することができる。