【2025年版】通信制高校の選び方 専門家が注目する「狭域通信制高校」5校
失敗しない通信制高校の選び方を認定NPO法人カタリバ代表理事・今村久美さんに教えてもらう連載4回目。今回は今村さんが注目する狭域通信制高校についてです。「太平洋学園高等学校」「長野西高等学校」「横浜修悠館高等学校」「厚木清南高等学校」「広島みらい創生高等学校」の5校をご紹介します。
カタリバ今村さんが注目する「狭域通信制高校」5校通信制高校について、認定NPO法人カタリバ代表理事・今村久美さんに解説してもらう本連載。4回目は、先進的な取り組みを行っている今村さん注目の「狭域通信制高校〔※注1〕5校」です。
※注1…狭域通信制高校とは、入学できる生徒の住所が、通信制高校がある都道府県とその隣の1つの都道府県に限られている通信制高校のこと。
【注意】
各学校の情報は記事作成時点(2025年1月)のものであり、変更される可能性があります。最新の情報については、各学校の公式サイトやお問い合わせ窓口でご確認ください。また、就学支援金については適用条件や金額が変更されることがありますので、各自で最新情報をご確認ください。
今村久美(いまむらくみ)
認定NPO法人カタリバ 代表理事。2001年にNPOカタリバを設立し、高校生のためのキャリア学習プログラムの提供を開始。こども家庭庁こどもの居場所部会委員、東京都学校外での子どもの多様な学びに関する有識者会議委員などを務める。
1.太平洋学園高等学校(高知県/私立)
1.太平洋学園高等学校(高知県/私立)
太平洋学園校舎。 画像提供:太平洋学園高等学校
高知県にある太平洋学園高等学校(狭域通信制高校)は、県内の私立学校では唯一の定時制課程と、通信制課程を持つ単位制総合学科の高等学校です。
私学ならではの柔軟な支援体制を活かし、不登校・中途退学の経験者に学び直しの機会を提供しています。さらに、さまざまな困難を抱える生徒の自立支援にも力を入れており、一人ひとりのニーズに応じたサポートを行っています。
教室の様子。 画像提供:太平洋学園高等学校
生徒は自分のライフスタイルに合わせて、水曜昼コース(13:15~)、水曜夜コース(18:00~)、土曜コース(9:00~)から週1回の通学スタイルを選択。また、スクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)の常駐や、年齢の近い大学生によるピア・サポート活動「ボランタリーブラザー&シスター」を通じて、県内外の大学と連携しながら学習支援や教育相談体制を整えています。
「太平洋学園の最大の特徴は、通信制課程と定時制課程の校内転籍が可能なことです。例えば、不登校だった生徒が通信制から始め、徐々に学校に慣れていく中で定時制に移行することができるシステムとなっています。
また学校の生活面では、通信制の生徒も部活に参加でき、友だち作りの機会を得られます。一度不登校になり、学校に毎日通うことに自信が持てない生徒も、まずは通信制で入学することでスモールステップを歩み、仲間ができたり教師との人間関係をつくりながら、希望があれば定時制に転籍できます。
このように、自分のペースで新しいチャレンジを重ねていける仕組みが用意されているのは心強いですよね」(今村さん)
軽音祭にて。写真はバンド活動の様子。 画像提供:太平洋学園高等学校
アート部の活動。 画像提供:太平洋学園高等学校
「さらに、運営面では三者協議会(生徒・保護者・教職員)を設け、校則づくりに生徒が関わるなど、生徒の声を大切にしているんですね。こうした柔軟な運営方針と、困難な環境にある生徒の積極的な受け入れが評価され、入学希望者が増えているようです。生徒一人ひとりの状況に寄り添うこの姿勢はとても素晴らしいと思います」(今村さん)
太平洋学園高等学校
・住所:高知県高知市栄田町1‐3‐8
・学習スタイル:週1日・4時間登校+レポート学習。普通、情報、家庭福祉の3つから自分に合った系列を選択可能
・入学可能エリア:高知県在住
・入学時期:毎年4月・10月
・年間の学費:3年間で約80万円
・制服:あり(着服自由)
・部活動:あり
https://www.taiheiyo.ed.jp/
2.長野西高等学校(長野県/公立)
2.長野西高等学校(長野県/公立)
長野西高等学校の外観。 画像提供:長野西高等学校
「長野西高等学校(狭域通信制高校)の特徴は、生徒一人ひとりに寄り添ったきめ細やかなサポート体制です。多くの公立高校では通信制課程のサポート体制が限られる中、こちらでは生徒が日常的に教員に相談ができるシステムになっていると感じます。例えば、スクーリング以外の日でも、事前に教科担当に疑問点を伝えれば学校に行って直接先生に質問ができます。これは、学びたい人がしっかり学べる場を提供しようとする姿勢の表れだと思います。そして、それこそが学校の最も大切な本質だと私は思います」(今村さん)
体育祭で大玉送りを楽しむ生徒たち。 画像提供:長野西高等学校
また、遠足や文化行事など、さまざまな学校行事に参加する機会があり、通信制でありながら充実した学校生活を経験できるのが大きな魅力です。
加えて、生徒会の活動や体育祭、登校日のホームルーム、クラブ活動への参加が卒業に必要な「特別活動」として認定されます(修得単位以外に特別活動は合計30時間以上の出席が必要)。
音楽クラブの活動の様子。 画像提供:長野西高等学校
一方で、同校は多様な学習者のニーズに応える取り組みも。年齢や、学習歴に関係なく入学できるほか、育児中の方のために「託児室」を設置するなど、さまざまな背景を持つ生徒への配慮も見られます。
そのため、学校生活や進路に関する支援も充実しており、登校日には相談室を開設し、専門の進路アドバイザーによるキャリア・コンサルティングも実施しています。
校舎内にある託児室。 画像提供:長野西高等学校
長野西高等学校通信制
住所:長野県長野市箱清水3-8-5
学習スタイル:週1日の登校(日曜日もしくは月曜日のスクーリング)+自宅学習
入学可能エリア:長野県在住(原則として東北信地区)
入学時期:毎年4月 ※令和7年度より10月入学も可能
年間の学費:約30,000円(1年間)
制服:なし
部活動:あり
https://www.nagano-c.ed.jp/n-nisihs/tsushin/
その他おすすめ狭域通信制3校
その他おすすめ狭域通信制3校
横浜修悠館高等学校(神奈川県・公立)
住所:神奈川県横浜市泉区和泉町2563
学習スタイル:【平日講座】月~木まで指導を受けながら学習。【日曜講座】月4回の日曜日に登校し、自宅学習も平日講座以上に行う(※卒業には74単位が必要)。
入学可能エリア:神奈川県在住 または勤務地が神奈川県内にあること
入学時期:4月(10月転編入 ※編入学募集及び検査8月)
年間の学費:平日:単位数×700円、日曜:単位数×350円 ※諸会費:年間6,000円
制服:なし
部活動:あり
https://www.pen-kanagawa.ed.jp/y-shuyukan-h/
「横浜修悠館はスクーリングが公立の通信制の中では一番多いのが特徴です。【平日講座】と【日曜講座】の2つの学習形態があり、生徒は科目ごとに選ぶことができます。【平日講座】は各自選択した科目で時間割りを作り、【日曜講座】は決められた時間割のなかから各自が選択した科目に出席していきます。
令和7年度から紙レポートは廃止され、レポートの解答作成は端末を使って行い、提出はオンラインで行います。
放課後は、レポート完成講座やトライ教室などの個別の支援制度があり、生徒は日常的に先生と話すことができます。
受験料や入学金はなく、公立の通信制のため、サポート校のように追加のお金がかからないのも特徴ですね」(今村さん)
厚木清南高等学校(神奈川県・公立)
住所:神奈川県厚木市岡田1‐12‐1
学習スタイル:基本は自宅学習。年間50回のスクーリングあり。主に日曜日と火曜日に実施
入学可能エリア:神奈川県在住、または在勤の方
入学時期:4月
年間の学費:合計約45,000円(内訳 受講料:10,000円、諸経費:4,500円、教科書・学習書代:約25,000円、体育着・体育館シューズ代:約5,000円)
制服:なし。「標準服」という制服に代わるものがあり、私服含め自由な服装で登校可能
部活動:あり
https://www.pen-kanagawa.ed.jp/atsugiseinan-h/
厚木清南高校の通信制課程は、レポート、スクーリング、テストの「三本柱」で学習を進め、日曜・夜間など柔軟な学習スタイルに対応しています。
また、有職者向けの教科書代金還付制度や託児サービスなどのサポートも充実し、半期ごとの単位認定制度を採用しています。本校の全日制・定時制の授業や提携専門学校の講座も受講できます。
広島みらい創生高等学校(広島県・公立)
住所:広島県広島市中区大手町4‐4‐4
学習スタイル:レポートを中心に自宅学習で学ぶスタイル。2週間に1回のペースでスクーリングに参加。日曜日・月曜日・火曜日・木曜日夜間の中から登校する曜日を自由に選択。
入学可能エリア:広島県内在住の方
入学時期:4月と10月
受講料総額:24,420円(PTA会費及び生徒会費等の諸費や教科書・教材費等は別途必要)
制服:なし ※体操服と体育館シューズは指定あり
部活動:あり
http://www.miraisousei-h.edu.city.hiroshima.jp/
広島みらい創生高等学校は、平成30年に6校を統合して開校した新しいタイプの高校であり、定時制(平日登校コース)と通信制(通信教育コース)の2つの課程があります。
一定の条件のもと、両課程間での科目履修(定通併修)や、定員に空きがある場合、転籍試験による課程変更も可能です。また、2学期制を採用し、9月卒業もできます。
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今回ご紹介した狭域通信制高校は、あくまでも一例ですが、各校の取り組みを参考にすることで、自分に合った学校選びのヒントが得られるかと思います。ぜひ学校選びの参考にしてみてください。
次回5回目では、全国から入学が可能な広域通信制高校をご紹介します。
取材・文/山田優子
「NPOカタリバがみんなと作った 不登校─親子のための教科書」著:今村久美(ダイヤモンド社)