見落とし厳禁!二輪車通行禁止道路の実情
日本全国に約500カ所あると言われる「二輪車通行禁止道路」は、その名の通り二輪車での通行が禁止されている道路のことです。有名な大通りから身近な路地まで、さまざまな道路で二輪車の通行が禁止されており、その背景を探ってみると何十年も前の事案を要因とする道路が多く、二輪車での利便性を高めるための規制緩和が求められています。
かつて「Motorcycle Information」という名称だった頃から、MOTOINFOは二輪車通行禁止道路の規制緩和について定点観測をしてきました。今回、二輪利用者が規制緩和を求める都心部の通行禁止道路の今を改めてリサーチするとともに、ライダーにとっての交通環境をより良くするための方法についてもご紹介します。
二輪車通行禁止道路について
二輪車通行禁止道路とは、二輪車の通行が禁止されている道路のことです。ここでの二輪車とは、普通二輪車(排気量125cc以上)、小型二輪車(排気量125cc以下)、原付(排気量50cc以下)、特定小型原付が対象となります。
二輪車通行禁止道路に用いられる道路標識は大きく2種類あり、「二輪の自動車・一般原動機付自転車通行止め」と「大型自動二輪車および普通自動二輪車二人乗り通行禁止」になります。標識の直下に「原付」など補助標識が付帯する道路については、原付以下の車両の通行が禁止されます。
この「原付」という補助標識の対象となるのは、原付一種・特定小型原付になり、原付二種は含まれません。道路標識は道路交通法に基づいて定められており、道路交通法施行規則 第一条の二には以下のように記載されています。
一般原動機付自転車の総排気量等の大きさ
法第二条第一項第十号イの内閣府令で定める大きさは、二輪のもの及び内閣総理大臣が指定する三輪以上のものにあつては、総排気量については〇・〇五〇リットル(二輪のもののうち、構造上出すことができる最高出力が四・〇キロワット以下の原動機を有するものにあつては、〇・一二五リットル)、定格出力については〇・六〇キロワットとし、その他のものにあつては、総排気量については〇・〇二〇リットル、定格出力については〇・二五キロワットとする。
「総排気量は0.05リットル(50cc)」とされ、さらに「最高出力が4.0kW以下の125cc バイク」という、2025年4月から施行された「新基準原付」にて制定された内容が書き添えられています。
補助標識に「小二輪」とある場合は、原付二種が含まれるので、標識の確認は必ず行いましょう。
二輪車通行禁止道路は全国に500カ所も
全国各地に点在する二輪車通行禁止道路は、2025年現在では何カ所あるのでしょうか。各都道府県警察に情報提供の問い合わせをしてWeb上に公開しているのが、一般社団法人 日本二輪車普及安全協会(以下、日本二普協)の「二輪車通行規制区間情報」ページです。毎年3月に各都道府県警からデータを収集し、6月に更新している最新の二輪車通行禁止道路がまとめられています。
かつては約700カ所あったと言われる二輪車通行禁止道路も、現在は約500カ所となっています。日本二普協では通行規制区間に対するライダーの声を収集し、警察庁や都道府県警察に情報提供しています。
二輪車通行規制区間情報
https://www.jmpsa.or.jp/society/roadinfo/
都内の二輪車通行禁止道路を調べてみた
環境の変化などで減少しつつある二輪車通行禁止道路ですが、現在も通行が禁止されている道路はどんな状況なのでしょうか。東京都内に点在する中でも交通量の多い二輪車通行禁止道路3カ所をリサーチしました。
新橋地下自動車道
港区新橋2丁目20番1号先から中央区銀座7丁目13番10号先までを繋ぐ地下道で、二輪車全般が対象、規制期間も終日と、バイクが通行できない道路です。警視庁交通規制課によると、この地下道は1968年から二輪車の通行が禁止されており、「進入路が急な下り勾配で、入口からすぐに急カーブになっており、道路の幅員も広くないため、二輪車が重大事故を起こす恐れがある」ことが理由とされています。
現地に赴いて30分ほど定点観測してみると、入り口直前の歩道橋に「二輪車通行禁止」とある看板に気づくことなく地下道へと入っていくライダー、直前で看板に気づくも進路変更できずにそのまま地下道に進入するライダーの姿が数台見られました。急な進路変更をすれば導流帯に進入せねばなりませんし、何より後続車と衝突するかもしれない危険性があります。
ナビゲーションでこの区間を含んだルート設定すると、地下道へと誘導するルートが出てきます。ナビゲーションは利用者が四輪車か二輪車かを分けて認識していないので、この地下道が二輪車通行禁止道路だと知らないライダーがナビゲーションに導かれて進入してしまうこともあるでしょう。
新橋地下自動車道の終点である中央区銀座7丁目13番10号を見ると、その先は原付を対象とした二輪車通行禁止道路に変わります。ここの合流地点からは原付二種以上は通行可能なので、原付一種や特定小型原付を利用する方は地上の一般道を走行するようにしましょう。
国道20号(新宿御苑トンネル)
新宿区新宿3丁目1番13号先と新宿区内藤町87番地先を繋ぐ国道20号にある新宿御苑トンネルも、一般原付・軽車両(自転車など原動機を持たない車両)、特定原付を対象とする二輪車通行禁止道路です。規制期間も終日となっているので、対象車両を利用する方は側道へと逃れ、トンネルと並走する旧甲州街道を利用しましょう。
こちらも約30分定点観測してみたところ、数台の原付がトンネルへと進入していきました。「二輪の自動車・一般原動機付自転車通行止め」標識は、トンネル手前の「新宿四丁目」交差点に「原付 この先トンネル内」の補助標識とともに表示されたものと、トンネル入り口の左側に設置された2カ所になります。
国道246号
東京都千代田区から静岡県沼津市までを結ぶ約125kmの国道246号、都内在住の乗用車利用者なら利用する機会が多いことでしょう。その途中、渋谷区南平台町1番10号先から目黒区青葉台3丁目6番先を繋ぐアンダーパスの区間が、一般原付を対象に終日規制される二輪車通行禁止道路になっています。
こちらでも30分ほど定点観測してみましたが、誤ってアンダーパスに進入してしまう原付利用者はいませんでした。標識は、トンネル手前の「南平台」交差点の右側に「原付 この先トンネル内」の補助標識とともに1カ所、トンネルの入り口左側に1カ所設置されています。
違反した際の罰則は
二輪車通行禁止の標識を無視して進入した場合、交通違反として6,000円(原付・軽車両・特定小型原付は5,000円)の反則金が、さらに違反点数2点が加算されます。
環境改善に標識BOXを利用しよう
「二輪車通行禁止道路がひとつでも多く減ってくれれば」という想いと同じぐらい「もっと見やすい標識だったら」「安全に気づける場所に標識があれば」と、ライダーとしては考えてしまうところです。
そんな道路環境をより良くするための方法の一つが、警察庁が設置する道路標識・標示をより良くすることを目的に、国民からの意見を受け付けるご意見箱「標識BOX」の活用です。
「標識が壊れている」「標識が見にくい」「交通規制の内容が分かりにくい」「交通規制の内容が実態と合っていない」、そんな声を受け止め、道路環境の改善に役立てるご意見箱は、都道府県警ごとに投稿先が分かれており、地域ごとに対応するような仕組みになっています。普段利用している道路環境を良くしたいとお考えの方は標識BOXをご活用ください。
標識BOX(道路標識意見箱)
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/seibi2/annzen-shisetu/hyoushiki-shingouki/hyoushikibox/hyousikibox.html
より便利な交通環境になるよう
滅多に訪れない街を訪れた際、標識に気づかずうっかり二輪車通行禁止道路を走ってしまうこともあるでしょう。慣れない道を走るときこそ、普段よく利用している道路の標識を見逃していないか、道路標識には十分注意してください。
お問い合わせ先:二輪車通行規制区間情報 | 一般社団法人 日本二輪車普及安全協会