映画『国宝』は右肩上がり。改めて注目される「人間国宝」を解説
ニュースキャスターの長野智子がパーソナリティを務める「長野智子アップデート」(文化放送・月曜日15時30分~17時、火~金曜日15時30分~17時35分)、6月26日の放送に元・日刊スポーツ編集局長の久保勇人が出演。映画『国宝』のヒットで改めて注目される「人間国宝」について解説した。
久保勇人「(映画『国宝』について)私自身は歌舞伎をあまり知らないし、3時間という長さだし、どうかなと思っていたんですけど、圧巻でした。終わったあと、周りに『観たほうがいいよ』と宣伝して。観客動員ランキングで見ると、公開週は全作品の中で3位でした」
長野智子「はい」
久保「2週目で2位に上がった。今週月曜に発表された3週目でついに1位になったんですね。右肩上がりなんですね。映画はたいてい、公開週がいちばん高くて徐々に減っていく。こういう傾斜をとると『君の名は。』のように社会現象のようになりますね。現時点で累積動員150万人を突破、興行収入20億円を突破しています。順調に進めば50、60億円という興収に。実写の日本映画で今年度を代表する数字になるな、と」
鈴木敏夫(文化放送解説委員)「長野さん、(まだ観ていない)我々、出遅れましたよ」
久保「原作は吉田修一さんの小説、映画は李相日監督。任侠の家に生まれて孤児になった主人公が歌舞伎役者の名家に引き取られて芸の道に人生を捧げて女形を目指す一代記。出自が大きな意味を持つ世界で、バックボーンもない、才能だけで高みを目指す主人公を吉沢亮さんが演じます。横浜流星さん演じるのが生まれながらに将来を約束された名家の御曹司なわけです」
長野「うん、うん」
久保「血筋と才能がぶつかり合いながら高みを目指していく。『実際に人間国宝の芸を観たい』という感想もたくさんあった。そういえば人間国宝ってどうだったかな、と思って勉強してきました」
長野「どういう人ですか?」
久保「人間国宝という制度は文化財保護法によって1955年に始まっています。演劇、音楽のような芸能分野と工芸技術、陶磁器などですね。そういった無形の文化で歴史上、または芸術上、価値の高いものを無形文化財と定義しています。特に重要なものを重要無形文化財に指定。これらの技を高度に体得している者、または団体を保持者と認定している。認定された人のことを『人間国宝』と通称で呼んでいるんですね」
長野「ええ」
久保「正式には、重要無形文化財保持者、という言い方をします。歴史上、芸術上、価値が高くて残していかなければならない文化である、と見なされたものがあって。これをいま体現しているのはこの人ですね、ということで人間国宝になるわけです」
長野「はい」
久保「たとえば芸能の分野なら尺八で野村峰山さん。歌舞伎はいろいろなジャンルで重要無形文化財に指定されていて、女形ですと坂東玉三郎さんが保持者として認定されている、と」
さらに久保は、人間国宝に実質的な定員があること、ほかの分野に広げていく動きが見られることなどについても解説した。