夜の船上、ツツイカねらいも様変わり!?「イカ釣り」から「イカメタル」へ
周囲を海に囲まれた我が国ニッポンは紛れもなく海釣り天国、多種多様な魚がねらえるが、同じ魚種をねらうにしても、さらに同じ釣りジャンルといえど、地方によって独特のカラーがあるのが、何より古くからニッポン人が釣りに親しんできた証拠。
「あの釣りこの釣り古今東西」第14回は船からねらう夜のイカ釣り。ケンサキイカを中心に、スルメイカなどツツイカ類をねらう釣りは、ここ20年で全国的に大きく様変わりしたのは記憶に新しい。
漁業的だったかつての「イカ釣り」
テレビ番組などで、夜間の漁船の上で集魚灯に照らされた海面から、掛かったイカが自動的に何杯もどんどん釣れ上がってくる映像を見ることがよくある。釣りファン以外の人が「イカ釣り」と聞いて思い浮かべるのが、たぶんこの「漁」「漁業」としてのイメージだろう。
はるか沖に煌々と並ぶ漁火。イカ漁は風情があるが……
実は20年ぐらい前までのわれわれアマチュアの夜のイカ釣りも、この「漁」に近いものがあった。長さ3m前後の長い専用竿に中型以上の電動リール、全長数mもある幹糸から出た数本以上のエダスの先にスッテ(浮きスッテ=イカ釣り用の擬似餌)を取り付けた仕掛で、複数のイカを一気に釣り上げるスタイルが全国的にポピュラーだった。
長くて重い竿に多点のスッテ。かつて主流だった船のイカ釣りスタイル
置き竿が当たり前、仕掛の扱いも大変だった
このようなタックルと仕掛だから、仕掛を沈めイカが掛かるのを待つときは、タックルを竿受けに預けるのが普通……というか、常時竿を手持ちでねらうには無理があったのだ。誘いも電動リールの自動スロー巻き(電動リール普及以前は当然手巻き)がほとんどだったので、これにも「漁」的なイメージを覚えた人も多かったはずだ。
誘いはロッドを竿受けに預けたまま……が、普通だった
長い仕掛に多数のスッテが付いているのでその扱いも大変。いいかげんに扱うと仕掛を回収、投入するたびに糸絡みが発生しやすかった。
そのため、繰り返しの投入がストレスなく行えるよう、船ベリに仕掛に付いたスッテを順番に並べておくための専用のマット(マグネットシート)などが必要だったし、スッテの傘バリ(=カンナ)に付着したイカのヌルヌルを取る作業も、スッテ数が多いだけに手間がかかったものだ。
(カンナにヌルヌルが多く付いているとイカの掛かりが悪いため)
数多いスッテ仕掛を絡ませないために専用のマットも必要だった
軽快なルアー感覚の「イカメタル」へ
そんなイカ釣りが大きく様変わりしたのが、恐らく10数年前のことだと思う。7~8ftほどのショートロッドにスピニングリールやベイトリールを用い、最下部には重量がある鉛でできたスッテを単体でセット、その1ヒロほど上部のエダスに浮きスッテやエギを取り付けた仕掛でねらうスタイル。
この「ドロッパー式(いわゆるオバマリグ=福井県小浜市にある釣具店が発案、命名といわれている)」などの仕掛で、常時ロッドを手持ちで、軽快に誘いを入れてねらうスタイルが登場したのだ。
ショートでライトなルアー並みのタックルで行うのが現在のイカメタルゲーム
以後、鉛スッテ単体での釣りを「ひとつスッテ」、仕掛の上部にオモリを付け下部にエギを結んでねらう「オモリリグ」などのバリエーションが登場。これらの釣りを総称してイカメタルと呼ぶようになり現在に至るのだ。メタルとは鉛スッテ本体の素材である鉛(金属=メタル)をさしてのネーミングである。
イカメタルはライトな船イカ釣りの総称。いろいろなスタイルがある
このように夜のイカ釣りは、漁業的なイメージからルアーゲーム的でスタイリッシュなスポーツフィッシングへと変貌を遂げ、どちらかといえば年配の方が多かった夜のイカ釣りのファン層が、若い世代にまで広がったのは記憶に新しい。
けっこうハードルが高かったかもしれないかつてのイカ釣りからイカメタルに進み、夜の船イカ釣りは手軽になった
といったワケで今回はここまで。次回は日中の船イカゲームである「アオリイカ釣り」についてお届けしたい。