SNSで話題!“ドリームキャンドル”を生み出した『田中務補商店』とは? 神戸市
TikTokなどのSNSで話題となり、若い世代を中心に人気を集めている「ドリームキャンドル」。神戸市長田区で”靴の背骨”を製造する企業が手掛けた商品ということをご存じでしょうか。
企業がキャンドルを手掛けたそのきっかけとは?今回は工場を見学するとともに、”神戸の街の歩み”にも通ずるその歴史について話を伺ってきました。
キャンドルを手掛けるのは、創業60年の歴史を持つ「田中務補(たなかかねすけ)商店」。靴の製造が盛んに行われている長田区で、同社が手掛けているのは”靴の背骨”とも呼ばれる「シャンク」という部品です。現在、シャンクを製造しているのは日本でここだけ。
一体どんなものなのか全く想像がつかなかったのですが、今回は製造過程やシャンクが靴にもたらす効果などを学び、その知られざる性能を学んできました。
【そもそもシャンクとは?】
シャンクとは主にヒールのある靴に入っている部品のことで、歩いたり走ったりする際の足運びを良くしたり、靴の形状を維持するような効果をもたらします。
足には通常、体重の1.2~1.5倍ほどの負荷がかかるそうですが、シャンクがあることで足にかかる衝撃を和らげることができ、加重を支えることができるのだとか。
スニーカーはつま先に60%、かかとに40%と重心が傾くのですが、ヒールのある靴だとつま先・かかとに半分ずつの重心となるため「実は意外とヒールの方が疲れにくい」んだそう(2.5~3cmがオススメとのこと)。その”疲れにくさ”の秘密が、まさにシャンクなのです。
同社では金属のシャンクを製造。型は廃盤や特注も合わせると2,000種にものぼり、ずらりと並べられています。
工場ではまず、材料の金属をプレス。1本の金属に穴をあけたり、型を付けたりします。この過程ですでに金属はシャンクの形に。
続いてはこちらを焼き入れの機械に入れます。焼くことで強度が上がり、ばねのような粘りがでるのだとか。
その後焼き戻しを行い、洗浄して冷却。錆止めを付けて乾燥させると、シャンクは完成です。
出来上がったシャンクは2階で箱詰め。250足分が1つの箱に詰められていきます。その重さは4kgにもなるそうです。
2階には500万足分のシャンクの在庫が並んでいますが、その奥には何やらカラフルなブースが。この場所こそ「ドリームキャンドル」の作業場!
キャンドルはメインのパーツを国外で製造しているため、ここでは花火を付けたり音を出す検品作業や箱詰めを行っているそうです。
そもそも同社がキャンドル作りをスタートしたのは2003年のこと。阪神・淡路大震災からの復興のさなか「何か面白いものを作りたい」と考えた先代が企画し、現在代表を務める田中さんが形にしました。
花びらの美しいカーブにはシャンクの技術が代用されているそうです。
現在、国内全体で靴の輸入が当たり前になってきている中、一番印象的だったのは「僕たちは絶対シャンクの製造をやめません」という代表の力強い言葉です。カラフルなキャンドルの裏には、働く大人から小さな子どもまでを支える”縁の下の力持ち”の存在がありました。
場所
田中務補商店
(神戸市長田区苅藻島町3-12-24)