今年はサンマが復活 変わる海と食文化
秋の味覚といえば「サンマ」。ここ数年はずっと不漁でしたが、今年は豊漁となっています。
今年のサンマは「奇跡のサンマ」
市場には活気が戻り、たくさんのサンマが並んでいますが、今年のサンマ、注目したいのは「質」の良さです。駒八豊洲店料理長 小野澤 雅丈さんのお話です。
駒八豊洲店料理長 小野澤 雅丈さん
今年のサンマは、去年よりは全然大きくなってるし、おいしいです。今年は30センチオーバーのサンマが多いですね。最初見たときは「でけーなぁ」と思いました。脂乗りは、ちょっとまだ早いからのっていませんが、後半になるにつれてどんどん脂がのってくるので、おいしいサンマが出ると思います。10年くらい前から、毎年「今年は不漁です」と。しかも小さいし細かったです。今年はどうかなと期待していたら、デカいのが来たから、嬉しいですねやっぱり。
不漁だった去年のサンマは、20センチ~25センチ。今年は30センチーオーバーで、量も取れている上、大きいので、「奇跡のサンマ」と呼ばれています。お店でも「今年もサンマがきたんだね」「やっぱりサンマはいいね」と楽しみにしているお客さんの声も多く聞かれているということでした。
私も先日スーパーで買いましたが、私が買った都内のスーパーでは1尾150グラムで298円。去年は100グラム198円なので、物価高、燃料費の高騰で、値段としてはそこまで違いはありませんでしたが、今年は大ぶりで脂ものっているので、実際に食べてみても、身がふっくらしていて脂がのっていて、「秋のサンマ!」という味わいでした。
なんで今年は豊漁なの?
漁師や料理人にとっては待ちに待った豊漁ですが、なぜ、今年のサンマはよくとれたのか、この豊漁は続くのか。三重大学大学院 立花 義裕教授に聞いてみました。
三重大学大学院 立花 義裕教授
サンマは、親潮の冷たい水を好む性質があるんですよ。夏にね。今年は北海道の根室や釧路沖に親潮の冷たい水が入ってきてるんですよ。その場所にサンマが非常に多いというわけですね。去年はその北海道沖の海域ってのは、もう非常に熱い海、黒潮の水があった。ですから、さんまは全然なかったんですけれども、なぜかは誰もわかっていないんですけど、一時的に今年はガラっと変わって、そこにサンマがいっぱいいるというわけです。言いにくいんですが、今年はこうなっていますが、来年もこうなるとは断言できない。今年獲れているのであれば、今のうちに楽しんだ方がいいかもしれませんね。
この時期、サンマの産地のほとんどが北海道ですが、去年までは日本列島の周辺ほとんどの海域が黒潮の水に覆われていて、親潮の冷たい水が入り込む隙間がありませんでした。ところが今年は、黒潮の大蛇行が7年9ヶ月ぶりに終息。北海道沖にサンマが戻ってきました。ただし、来年も同じ状況とは限らないそうで、サンマの豊漁が来年も続くかどうか、誰にも分からないのが現実だそうです。
来年もサンマは豊漁?他の海産物は?
サンマが獲れているのは嬉しい話ですが、他の海産物の状況は全く違いました。再び立花教授のお話です。
三重大学大学院 立花 義裕教授
鮭とかはね、より冷たい海を好むんで減ってますね。魚じゃないですけど、ホタテとかね。そういうのも減ってます。あわびとかも減っている。サンマだけが取れてるけど他は本当にほとんど魚は減っている。海面水温や海流の状態を見ていただいて、北海道のとこだけたまたま、ほんのわずかな海域のみが冷たい。日本全体が冷たくなったんじゃないんです。このサンマ豊漁をベースにして、地球の様子を見てほしい。サンマを美味しく食べるためには「地球温暖化を防ぐ」「もとの温度に戻す」そのためには、CO2を減らす。温暖化を抑制する。これですね。
豊漁と言われているサンマも実はごく一部の限られた海域での出来事。なおかつ他のほとんどの魚は減っています。海の環境が大きく変わったことで、漁業には大きな影響が出ています。今後「季節の魚」が変わっていくのかもしれませんね。
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:森本茉菜)