四国の端っこにあるハゼの楽園? 高知県・柏島でのダイビングで出会った<多様なハゼたち>
日本の海には多種多様なハゼが生息しており、北から南まで様々な種を観察することができます。
ダイビングにおいてもハゼは人気の高いグループであり、それを見るために海へ潜るダイバーも少なくありません。筆者もハゼの楽園と言われる海でダイビングをしてきましたが、そこは想像を絶する“ハゼ天国”でした。
日本屈指のダイビングスポットに集まる様々なハゼたち
今回ダイビングで訪れたのは高知県幡多郡大月町の柏島。ここは全国のダイバーが集まる日本屈指のダイビングスポットです。
特に有名なのがハゼ類で、他のダイビングスポットでは激レアなハゼも、ここでは普通に見ることができます。
まさに柏島はハゼの楽園ともいえるスポット。実際に筆者が柏島で出会ったハゼたちを紹介します。
水族館にもよくいる<ハタタテハゼ>
水族館やアクアリウムでも有名なハタタテハゼ。ピンと伸びた背びれと、紅白カラーが特徴の小型種です。
見た目が特徴的なハゼですが、今回のダイビングでは警戒心の薄さも感じました。というのも、筆者がハタタテハゼに気が付かずに彼らの真上まで移動しても、逃げる素振りをしなかったのです。
ハタタテハゼは今回の柏島でのダイビングで見られたハゼの中で、特に警戒心が薄いと感じました。
体側後半部が鮮やかな紫色<アケボノハゼ>
アゲボノハゼはハタタテハゼにやや似ていますが、体側後半部と吻端は紫色なのが特徴です。
筆者がいつもダイビングをする伊豆では出現したらニュースになりますが、柏島では普通に見られます。探していなくても目の前に現れるため、“レア種”だということを忘れてしまうこともしばしば。
こういった魚を普通に見られることが柏島の魅力です。
比較的深場に生息する<スジクロユリハゼ>
スジクロユリハゼは、比較的深場に生息する簡単には出会えない貴重なハゼ類です。
貴重さゆえに本種を目的にダイビングする人もいるほど。海底付近をふわふわとホバリングするように漂う姿が非常に美しいハゼです。
筆者も出会うことはできたのですが、ちょうどサーモクライン(水の温度が急激に変化する層を指す水温躍層)の間で水にモヤモヤがかかっており、撮影写真にもモヤモヤが写りこんでしまいました。正直、かなり悔やまれます……。
砂と同化するハゼ
ここまで紹介したハゼはほんの一部。柏島には探せば探すほどたくさんのハゼたちが生息しています。
例えば、砂地に生息する共生ハゼ。筆者は最初このハゼたちを全く見つけられませんでした。どこかに逃げてしまったわけではありません。あまりにも目立たないのです。
砂地によく目を凝らすと、中央に縞模様のあるハゼがいることに気が付きます。しかし、上手く砂と同化しており、また水深が深く色を認識しづらいため、ハゼの模様も見分けるは簡単ではありません。
数回ダイビングを繰り返すことで、ようやくハゼの姿に目が慣れてきましたが、今度はハゼへの接近の仕方に苦労しました。ハタタテハゼやアケボノハゼは比較的観察しやすいですが、テッポウエビ類と共生するダテハゼ類などは接近するとすぐに巣穴に引っ込んでしまいます。
私の持つ水中用カメラでは十分に寄ることができず、満足のいく写真はあまり撮れませんでした。これもかなり悔やまれます。
模様が似すぎているハゼたち
ハゼを見分ける時にさらに大変なのが、どのハゼも皆模様が似すぎていること。写真を見返して図書館で図鑑を漁りましたが、それでも同定に不安の残る種がたくさんいます。
特にダテハゼの仲間はパッと見ではほとんどわかりません。
水中で視界も不明瞭。また、ダイビング中は波や窒素の影響で酔ったり体調を崩しがちで思考も上手く回りません。
種同定は後ででいいやと割り切ってひとまずシャッターを切りますが、陸に上がっても結局よくわからず終いでした。
本物に会いようやく湧く興味
筆者は、柏島でダイビングするまでハゼ類にそこまで興味はありませんでした。図鑑を読んでも模様の違いくらいしか記載がなく、各々のハゼのイメージが湧きにくかったのです。
実際、柏島でダイビングすることにより、たくさんのハゼたちに出会いましたが、満足に撮影ができなかった悔しさもあり、彼らへの興味がさらに湧きました。また調べても同定に自信が持てない、水中においてのハゼへのアプローチの仕方もわからず終い……。不完全燃焼ゆえに、「次はちゃんと観察したい」という想いが強くなりました。
自分で撮影して調べた生きものはとても愛着が湧き、一度調べたら簡単には忘れません。この経験があったからこそ、ハゼ類をより深く知りたいという意欲が出てきました。
“ハゼ修行”をしっかり積んで、またこの場所に戻ってこようと思います。
(サカナトライター:みのり)