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甲府戦の勝利を呼び込んだジュビロ磐田のスタメン3人替え。その効果は?

アットエス


【サッカージャーナリスト・河治良幸】
ジュビロ磐田はエコパスタジアムでヴァンフォーレ甲府に勝利。ジョン・ハッチンソン監督が掲げる“アタッキングフットボール”をベースに新たなスタイルを構築中の磐田はアウエーのV・ファーレン長崎戦、カターレ富山戦を続けて落としていたが、あらためてホームで勝利したことにより勝ち点9を獲得し、良い流れで昇格争いのライバルの一角と見られるベガルタ仙台とのアウエーに臨むことができそうだ。

指揮官の大きな決断

この甲府戦、ハッチンソン監督は大きな決断をした。それまでの4試合、長崎戦の途中で負傷した川口尚紀に変わって植村洋斗が右サイドバックで起用された以外、全く同じスタメンで戦ってきた。甲府戦はGKをチームキャプテンの川島永嗣から阿部航斗に、左センターバックをリカルド・グラッサから上夷克典に変更。4−2−1−3のトップ下は佐藤凌我に代えて、富山戦で後半から投入されていた角昂志郎が抜擢された。

毎試合、トレーニングから選手を評価してスタメンを決めていることを主張するハッチンソン監督だが、ここでのスタメン3人替えには明確な理由がある。阿部の起用はGKの守備範囲を広げて、相手のプレッシャーに対するビルドアップを安定させること。阿部は「ハイラインで、前線もプレスに行けてましたし、後ろもそれに付いて行って、割とコンパクトな状態の時間が多かったと思います」と甲府戦を振り返った。

上夷の起用はそこにも関係するが、左利きのリカルド・グラッサが相手にパスコースを読まれやすいところがあり、左右のキックで幅広く展開できる上夷を起用することで、パスコースを増やしてビルドアップの“出口”を増やす効果が期待できた。

スタメン起用を予感していたという上夷は「やっぱりラインが落ちているのをとりあえずコンパクトにしたかったのと、スライドの部分でもっと横ズレ、縦ズレをして、全体をコンパクトにしたかったという意図はあると思います」と振り返る。

キャンプから積み上げたハイライン

第4節の富山戦では3失点を喫しており、“アタッキングフットボール”とは言ってもディフェンスのテコ入れが必要だったことは確かだ。

ここまでセーブ率がJ2ナンバーワンだった川島や長崎戦で相手エースのマテウス・ジェズスを抑え込んだリカルド・グラッサを代えることはリスクではある。それでもハイラインを敷いて全体をコンパクトにすることが、ディフェンスにも好影響を与えるという指揮官の狙いが、選手起用にも反映される形となった。

阿部は「背後に抜けられるシーンはあったんですけど、ハイラインで戦ってる以上はしょうがないのもあると思う。ピンチはここまでの4試合に比べたら少なかったと思う。チーム全体で、繋がってプレスに行けてたかなと思います」と語る。

先制点は上夷を起点に左サイドを崩す形から、上原力也の左足クロスにFWマテウス・ペイショットが合わせる形だった。その後もハイラインの背後を狙ってくる甲府の攻撃を阿部の幅広いカバーなどで跳ね返し、良いリズムで攻めていた。

カウンターからPKを与えての同点ゴールを招いてしまったが、ハッチンソン監督がキャンプから積み上げてきたスタイルをやり切る形で、ペイショットの2得点による2−1の勝利に持ち込めたことは大きい。

角の躍動と佐藤が見せた意地

角昂志郎(左)と佐藤凌我


3人目の角に関しては、上記の2人とまた少し意味合いが違うかもしれないが、富山戦ではなかなかビルドアップがうまくいかない中でも縦パスを引き出して、狭いエリアを抜群のボールキープで切り抜けたり、幅広い動きから仕掛けに繋げたりしていたことが、ハッチンソン監督の評価を高めたことは間違いない。甲府戦でも直接ゴールには絡まなかったが、相手陣内で数多くボールを触ってアクセントを作っていた。

その一方で、この日はベンチスタートとなった佐藤の働きが、一度は追い付かれた磐田に勝ち越しゴールをもたらしたことは重視するべきだろう。右センターバックの江﨑巧朗からワイドのパスを受けた植村が右のワイドスペースに縦のボールを送ると、中央から鋭い走りで佐藤がボールに追い付き、相手ディフェンスを引き付けてジョルディ・クルークスに預ける。そこからクルークスは縦にディフェンスを破ると、右足の浮き球クロスでペイショットの高さを生かしたゴールをアシストした。

決勝ゴールを決めたペイショットはクルークスのアシストだけでなく、佐藤の働きについても「ああいう動きでスペースもできるし、良いプレーができる」と感謝を表した。佐藤も今シーズン初めてのベンチスタートという扱いに気持ちを落とすことなく「ゲームチェンジャーと言われる役割で、今日は途中からの出場だったので、勢いを出す部分っていうのは意識して入れて良かった」と語る。

シビアな定位置争い

攻撃陣に関しては5枚交代という枠もあり、誰かがスタメンで出れば、誰かが甲府戦の佐藤のようなジョーカーやゲームチェンジャーの役割を担うことになるが、センターバックやGKに関しては90分出ることがベースになるため、ポジション争いはシビアになってくる。もちろん川島がこのまま大人しくポジションを明け渡すはずがなく、阿部はもちろんルーキーの西澤翼やコンディションが戻ってきた三浦龍輝と激しい競争を続けていくことになるだろう。

センターバックも甲府戦は上夷がスタメン起用に応えて素晴らしいパフォーマンスを見せたが、対人戦の強さと左足のキックという武器を持つリカルド・グラッサに加えて、復調中のハッサン・ヒル、長期の離脱から順調に回復してきた森岡陸もいる。

ここからアウエーの仙台戦を経て、ルヴァン杯のFC大阪戦を迎えるが、指揮官も求めるハイレベルな競争が、勝利とともにアタッキングフットボールをさらに成長させていくはずだ。

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