「ヤバい」しか言わない子どもが心配…!AI時代に親ができる“表現力を伸ばす工夫”
AIが当たり前になった今、自分の言葉で伝えたい気持ちを届けられていますか? 「これからは自分の言葉を使える人が目立つ存在になるからこそ、言葉の選択肢を増やすことが大切」と話すのは、『自分の「好き」をことばにできるノート』の著者の三宅香帆さん。今回は、「AI時代だからこそ必要な、子どもの語彙力や表現力を伸ばす工夫」についてお話を伺いました。
教えてくれたのは……三宅香帆さん
文芸評論家。京都市立芸術大学非常勤講師。1994年生まれ。京都大学大学院卒。京都天狼院書店元店長。著作に『人生を狂わす名著50』(ライツ社)『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』(笠間書院)『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』(サンクチュアリ出版)『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)『「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』(ディスカヴァー)など多数。
AIではなく「自分の言葉を使える人」が注目される時代に
前回の記事では、子どもの言語化能力を引き出すために、親ができることについてお話を伺いました。言葉を生み出す場面でAIに頼ることも増えている今、自分の言葉で表現できる人がますます目立つ存在になると、三宅さんはおっしゃいます。
三宅さん「ChatGPTなどのAIが言葉を作ってくれる便利な時代ですが、それが当たり前になるほど、自分の言葉を使える人が目立つ存在になると、私は思っています。例えば、ちょっとした一言でも、AIに作ってもらった言葉を送る人と自分の言葉を送る人とでは、その印象に違いが出てきますよね。もちろん、AIは活用してもいいと思いますが、肝心なところは自分の言葉で伝えられたほうが、さまざまな場面で差がつくと感じています。
言葉にするのが苦手な人にとっては、言葉を表現すること自体に『ちょっと疲れる』と感じることも多いかもしれません。そこをグッとこらえて、自分の言葉を見つけようとすることが大切だと思います。言葉の選択肢を持っているかどうかが表現力の差につながり、自分の思いを言葉にする力を磨くことにつながると思うんです。」
意識して、書店に足を運ぶ機会づくりを
言葉の選択肢を増やすためには「本を読む習慣をつける」ことも効果的だと、三宅さん。年間350冊もの本を読まれている三宅さんは、子どもの頃から外遊びよりも本や漫画を読むことを好み、お母さまと一緒に書店に行くことも多かったそうです。
ゲームや動画が日常にあふれる今、子どもに本を身近に感じてもらうためには、どのような工夫が必要なのでしょうか。
三宅さん「子どものうちから本を読む習慣をつけることで、いろいろな言葉を手に入れる機会が増えると思います。だからこそ、大人が『本を読む』という選択肢をお子さんに与えることが大切だと感じています。まずは一緒に書店や図書館に行き、本がたくさんある場所に慣れ親しむことから始めるといいかもしれません。
インターネットで物が手に入る今の時代、意識しなければ書店に足を運ぶ機会が減ってしまいますよね。一緒に書店に行き、『どんな本でも1冊選んでいいよ』と、お子さんに自分で選ばせてあげるような時間が、もしかしたら昔よりも必要なのかなと思っているんです。今は漫画よりもアニメのほうが観られやすい時代ですが、漫画も本の入口としておすすめです。漫画を与えてあげるのも、本を身近に感じるきっかけになると思います。」
「やばい」は「どこがやばい」のかを掘り下げてみて
言葉の選択肢が限られていることで起こりうる、同じ言葉の多用。その典型例が「やばい」です。普段の会話で、子どもから「やばい」という言葉をよく耳にして、何でも「やばい」の一言で済ませていると感じることはありませんか?
子どもの語彙力を伸ばすためには、本を読む習慣をつけることに加えて、表現の幅を広げる取り組み方にもポイントがあるとのこと。子どもだけではなく、大人にも有効な方法だそうです。
三宅さん「『やばい』は、良い意味でも悪い意味でも、程度が大きいことを表す言葉ですよね。お子さんから『やばい』という言葉が出たら、『どこがやばかったのか』、具体的に聞いてみることをおすすめします。『やばい』を別の言葉に言い換えるとなると難しいので、“どこが”を掘り下げて細分化していくことがポイントです。やばいと思った部分を突き詰めることで、自分らしい言葉や具体例が見つかり、伝えたい内容をより説明しやすくなりますよ。
大人も同じで、言葉の選択肢を増やすためには、まず細分化するところから始まると思います。 例えば、推しに対して『やばい』といい意味で言った場合でも、その言葉が出てくること自体すごく素敵なことだと思うんです。それぐらい感動したということなので、“どこがやばかったのか”を掘り下げてみるのがおすすめです。感じたことをメモに書いたり、SNSで発信してみたりする習慣があると、言葉の幅も広がっていくと思います。」
“どこが”を細分化していくことは、学校の課題で読書感想文が出たときにも使えるテクニックになるのだと、三宅さんはおっしゃいます。次回の記事では「読書感想文の書き方のコツ」について、お話を伺います。
shukana/webライター