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戦国大名の軍隊編制とは? 「先手」と「旗本」「槍、鉄砲、騎馬」の組み合わせ

草の実堂

画像:川中島の戦い public domain
画像:賤ヶ岳の戦い public domain

戦国大名に仕える家臣たちの多くは、平時には領地の管理や農業生産の監督など、領内の経済基盤を支える業務に従事していた。

しかし、ひとたび戦が始まる迅速に召集され、軍を編制して戦闘に備えた。

戦国時代の軍隊は、各部隊に特定の役割が与えられていたが、具体的にどのような編制が行われていたのだろうか。

軍隊を大きく二分する「先手」と「旗本」

画像:軍隊編制 ※筆者作成

先手とは、前衛部隊のことである。

鉄砲足軽、弓足軽、槍足軽によって構成されており、足軽が主力である。足軽を養って訓練することで、軍勢を強化することができた。

主に戦闘においては、まず鉄砲の射撃で敵陣を混乱させ、その後、弓による援護を受けながら槍隊が敵陣を突破する戦法が用いられた。

旗本は本隊で、総大将を守りながら戦った。

メインは騎馬武者で、機動力を駆使して敵陣の弱点を突きながら、戦果を拡大させるのが勝利への常道であった。

最初に先頭に参加する「先手」の編成

画像:鉄砲、姫路お城祭 wiki c Corpse Reviver

先手は主に足軽から成り、多くは農村から徴兵された農民であった。

しかし経済力がある大名は、常時戦闘要員として用意している者もいた。

・鉄砲足軽

鉄砲足軽は、鉄砲が伝来した後に編成された部隊であり、先手部隊の主力を担っていた。

鉄砲足軽の撃った鉄砲玉から開戦することが多く、合戦の勝敗を左右する重要な役割だった。

特に、織田軍の鉄砲隊が広く知られているが、その戦術は瞬く間に全国の大名たちによって取り入れられた。

・弓衆

弓衆は、鉄砲と比較して連射が可能であり、また装備にかかるコストも低いため、鉄砲隊を補う役割を果たした。

鉄砲が伝来する以前は、弓衆が主力であった。

・長槍足軽

長槍足軽は、槍先を揃えて敵陣に突入する部隊である。

信長は、敵の槍よりも長い三間(約5.4m)以上の槍を導入し、有利に戦ったことで知られている。

・徒士(かち)武者(徒歩武者)

徒士武者は、10名前後の足軽隊の指揮を任された武士である。

彼らは足軽たちと寝食を共にしながら戦闘要員として鍛え上げ、戦闘時には一緒に戦うことで味方の勝利に貢献し、出世を目指していた。

徒士武者は、将来的には騎馬武者や侍大将への昇進を目標としていた。

総大将を守る「旗本」の編成

画像:16世紀の騎馬武者 public domain

「旗本」は、総大将を擁する本隊であり、主な戦闘員は騎馬武者であった。

ただし、旗本には先手と同様に鉄砲、弓、槍も含まれていた。

また、非戦闘員である小荷駄は、総大将よりもさらに後方に配置された。

・騎馬武者

騎馬武者は旗本の主力であり、その機動力を活かして戦場を駆け巡り、偵察、伝令、側面攻撃など多様な任務を遂行した。

特に武田軍の騎馬隊は有名である。

・鉄砲衆・弓衆・長槍衆

騎馬武者のさらに後方で総大将を守った。戦闘方法などは先手と同じである。

・総大将

総大将は、基本的には本陣の後方に位置し、全軍を指揮する立場にあったが、時には最前線に立つこともあった。

総大将の動きによって味方の士気が変動するため、臨機応変に対応する必要があった。

・使い番

使い番は、総大将が後方にいる際に先手の戦況を把握し、命令を前線に伝える役割を担った。

彼らは、戦場を馬で駆け回り、戦況報告や命令伝達を行う機動力と判断力が求められた。

・幡(はた)持ち

幡持ちは、その部隊の存続を象徴する幡を保持する役割を担った。

幡が失われることは、部隊が壊滅したことを意味するため、屈強な兵卒にその役割を任せていた。

・小荷駄

小荷駄は、予備の兵器、弾薬、食料、炊事用具、陣地築造用の道具などを輸送する役割を担っていた。

兵士たちは三日分の食料しか持たないため、それ以上の行軍には補給が不可欠であった。

小荷駄の効率的な運用が軍の維持に直結するため、実務官僚タイプの家臣がその役割を担った。

軍隊にはどんな構成員がいたのか

画像:軍議の様子(小倉城) ※筆者撮影

軍隊の中には様々な役割を持つ個人がいた。

総大将をはじめとした、その個人たちについて詳しく見てみよう。

・総大将

最高責任者である。戦況に応じて様々な命令を下す。

侍大将たちが存分に戦えるような舞台を整え、武功に対して正当な評価を下す役割もあった。

・小姓

小姓は、日常生活において主君の雑用をこなす役割を持ち、戦時には総大将の護衛を務めた。

織田軍では、森蘭丸が著名である。

・軍師(実際には役職はない)

正確には中世日本に「軍師」という呼称やそれに相当する役職はなく、総大将の知恵袋的存在だったと言えよう。

作戦計画、外交、内政などにおいて総大将に助言を与えた。

豊臣軍では、黒田官兵衛や竹中半兵衛が有名である。

・侍大将

侍大将は、数百名から数千名の部隊を率いる指揮官であり、軍の強さを左右する重要な役割を果たした。

「物頭(ものがしら)」とも呼ばれ、その影響力は強く、総大将が正当な評価を下さない場合には下剋上を企てることもあった。

・軍目付

軍目付は、総大将の代理として戦場の流れを観察し、家臣たちが命令に従っているかを監視する役割を担っていた。

秀吉の朝鮮出兵の際には、七人の軍目付が活躍した。

・馬廻り

馬廻りは、家臣団の中核を担う存在であり、武芸に優れたエリートが任命された。

彼らは平時には主君の警護を行い、戦時には本陣を守りながら使い番などを担当した。織田軍の母衣(ほろ)衆も馬廻りの一部であった。

・地侍

地侍は、農村を支配しつつ、大名の家臣として従属していた。

忠誠心が高く能力が認められた者は、侍大将と同等の役割を果たした。

おわりに

画像:川中島の戦い public domain

戦国時代には数多くの戦が繰り広げられ、大名たちが軍隊を編制して戦場に臨んでいたことはよく知られているが、その編制の詳細については意外に知られていない部分が多い。

軍隊にはそれぞれ特定の役割があり、階級が上がるにつれてその責任も増していく。

中でも小荷駄隊は、目立たないながらも軍隊の運営に欠かせない重要な役割を果たしていた。

合戦の表面的な部分だけでなく、軍隊の編制や役割に注目することで、当時の戦いの深層に触れることができるだろう。

参考文献:歴史道 他
文 / 草の実堂編集部

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