JR貨物から全機引退した国鉄型ディーゼル機関車を振り返る 貨物列車のそばに「DE10」がいた頃
text & photo:福島鷺栖
取材日:‘18.9.16(特記以外)
先日、JR貨物所属のDE10が全機引退しました。かつては全国各地の貨物駅やヤードのほか、支線の貨物運用などでも見られるなど当たり前の存在であったが故に、このニュースは一つの時代の終わりを感じさせました。そこで、今回は貨物駅での入換作業から貨物支線の運用、さらには甲種輸送まで、日本海側の貨物輸送の縁の下を支えた東新潟機関区所属DE10の様子をご紹介したいと思います。
■大規模ターミナルの縁の下の力持ち
貨車を仕分け線へ押し込んだ後は別の番線へと忙しく動く。デッキには無線を持った係員が添乗している。
新潟貨物ターミナルは日本海縦貫線系統に加え、上越線経由の首都圏からの列車も発着する大規模ターミナルのひとつです。一部の荷役線は電化されているものの、広大な仕分け線などは非電化となっているためディーゼル機関車による入換が行われています。現在は愛知機関区のDD200が担当していますが、訪れた2018年当時はまだ東新潟機関区所属のDE10が入換を担当していました。
新潟貨物ターミナルを東側から望む
私が訪れた際は、コンテナホームの荷役線から仕分け線へ貨車を移動させる入換作業が行われていました。作業のため稼働していたのはDE10 3508号機。ラッセル除雪用機関車のDE15から改造された番代で、DE10 3508は元JR東日本のDE15 1536で、廃車後JR貨物へ譲渡、DE10に編入されたという異色の経歴の持ち主です。外観上では旋回窓と1エンド側ボンネット前面の点検扉の形状が特徴です。
■貨物駅での入換作業を順を追って見る
15時半ごろ、コンテナホームから貨物駅東側へ向けて発車。
一度駅東側の引き上げ線へ一度入る。
引き上げ線から仕分け線へ推進運転で入線する。
仕分け線の停止位置を無線で指示しながら連携をとる。
貨車を切り離して一旦東側へ引き上げる。
荷役線へと進入していく。
コンテナホームの手前で停止。一連の作業はわずか10分にも満たない時間で行われた。
■いろいろあった 東新潟機関区のDE10運用
また、東新潟機関区では新潟貨物ターミナルでの入換の他にも新潟地区の貨物支線での運用も担っていました。その一つが上沼垂信号場から分岐する焼島支線です。現在は北越コーポレーションからの紙輸送のみが運行されていますが、かつて東新潟港駅まで続いていた臨港線の雰囲気の中を走るDE10の姿を見ることも出来ました。
‘19.3.2 信越本線 焼島 P:神山英二
(今日の一枚より)
また、イレギュラーな運用ではありましたが総合車両製作所(J-TREC)新津工場の出場・搬入や、同じく鉄道車両メーカーでもある新潟トランシス関連の甲種輸送の任にも東新潟機関区のDE10は就いており、多くのレイル・ファンの注目を集めました。
E235系1000番代のグリーン車が、総合車両製作所(J-TREC)横浜事業所から同新津事業所へ入場するため甲種輸送された時のもの。DE10 3507が牽引を担当。
‘20.12.2 信越本線 加茂~羽生田 P:鷲澤拓弥
(鉄道投稿情報局より)
新潟トランシスにてSL「やまぐち」用に新造された35系客車を甲種輸送するDE10 1729。
‘17.6.1 黒山駅分岐新潟東港専用線 藤寄―黒山 P:鶴井雅人
(鉄道投稿情報局より)
そして2021年3月、東新潟機関区所属のDE10のの運用はなくなり、現在は愛知機関区のDD200が引き継いでいます。また、DE10の引退以降、東新潟機関区における機関車の配置は無くなりました。
現在、各地の貨物駅での入換作業は、もっぱらDD200やHD300といった新型の機関車が行っており、この記事の頃と比べて貨物駅の景色は大きく変わりました。ですが、新型機関車にも引き継がれたセミセンターキャブの形状は、DE10の影を見るスタイリングで、まさしく長年親しまれた縁の下の力持ちらしい姿といえるでしょう。DE10の時代は終わりを告げましたが、これからのターミナルでの入換シーンも記録していきたいものです。
夜間の新潟貨物ターミナルで入換を行うDD200。
‘21.10.23 新潟貨物ターミナル