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山本一慶&山崎大輝インタビュー「斎宮 宗が好きだからこそ、宗にはもがいてほしい」~劇団『ドラマティカ』ACT4/魔女とお菓子の家

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(左から)山本一慶、山崎大輝

『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』(『あんステ』)の新たな可能性を生み出す、舞台“劇団『ドラマティカ』”。2021年の劇団『ドラマティカ』ACT1/西遊記悠久奇譚より、これまで3回の公演を行い、2024年8月からは劇団『ドラマティカ』ACT4/魔女とお菓子の家の公演が予定されている。

本作は、原作ストーリーを描く『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』シリーズとは異なり、オリジナルストーリーを描くプロジェクト。

『あんさんぶるスターズ!!』のキャラクターが劇中でお芝居をするという、役者にとっては難しい二重構造だが、その役柄の中に『あんスタ!!』のキャラクターたちの個性が見え隠れし、作中にちりばめられたフラグやトリックも見ごたえのある作品となっている。そんな『ドラマティカ』という作品の奥行きの広さにますます期待を寄せているファンも多いのではないだろうか。

『ACT4』はグリム童話の「ヘンゼルとグレーテル」を題材としており、斎宮 宗(山崎大輝)、影片みか(猪野広樹)、仁兎なずな(大崎捺希)、青葉つむぎ(工藤大夢)、日々樹 渉(安井一真)、氷鷹北斗(山本一慶)らが出演する。

今回の公演の演者でもありつつ、演出を担当することになった山本と、6年ぶりに『Valkyrie』が揃うことへの期待を寄せている山崎のふたりに心境を聞いた。『ACT4』の台本はこれまでと少し違う様子との感想もあり——。

(左から)山本一慶、山崎大輝


まだ舞台で絡んだことのないキャラクターも

ーー公演が決まったことの感想やお気持ちをお聞かせください。

氷鷹北斗役 山本一慶(以下、山本):『ACT3』を経て、まだまだ次があったらいいなと思っている中、こうして『ACT4』が決定したことがすごく嬉しいです。今回は演出も担当させていただくので、特別な想いがあります。約8年間ぐらい氷鷹北斗役をやらせていただいていて、僕は『あんスタ!!』への思い入れがとても強いです。それを原作元さんや多くの方々が背中を押してくれるような思いでいてくださったのが嬉しかったです。その期待に応え、より良い作品になるように頑張ろうと思っています。

斎宮 宗役 山崎大輝(以下、山崎):僕はまず、何よりも『ドラマティカ』で『Valkyrie』が揃うんだ! と、嬉しいですね。

山本:確かにその驚きは強いよね。主演に関しては?

山崎:僕は『ACT1』、『ACT2』も出演させていただいていたので、「ああ、宗の番がまわって来たんだな」という感覚。でも今回はみかもなずなもいるので、旧『Valkyrie』としても揃う。そちらの方が驚きでした。

ーーおふたりから見た、今回出演のキャラクター「影片みか」、「仁兎なずな」、「青葉つむぎ」、「日々樹 渉」の印象やイメージを教えてください。

山本:実はお芝居上、みかに会ったことがなくて、初めましてなのがすごく楽しみ。なずなも『Ra*bits』としてでしか接していないから、『Valkyrie』の2人がいるとどう稽古していくんだろうなと。つむぎは、今まで『Trickstar』としてはストーリー上ずっと応援して寄り添ってくれた人。今回改めて重要な役どころでもあるので、つむぎとしてどうやって“ラオ”という役を作っていくのか。彼が『ドラマティカ』という二重構造をどう生かしていくのかは楽しみです。日々樹 渉は僕には言うことは何もありません。逆に、もう知り尽くしているのでよくわからないです(笑)。

山本一慶

山崎:僕はみかに対して言うことが何もないです。なずなと『ドラマティカ』で一緒になることは感慨深いものがあります。『ドラマティカ』は『あんさんぶるスターズ!!』の時間軸ですからね。それを踏まえて役を作っていくから、やっぱり関係値も前回(2018年12月『あんさんぶるスターズ!エクストラ・ステージ~Memory of Marionette~』(以下『MoM』))とはちょっと違う。つむぎは今回初めましてです。まだどこでも会っていないから、これも楽しみ。

山本:今まで『あんステ』では『あんさんぶるスターズ!』としての関係値を築いてきていたけど、『ドラマティカ』は『あんさんぶるスターズ!!』の時間軸であり、そしてまた違う役としても見るから、新鮮な体験だと思うよ。今までの関係値が深いほど『ドラマティカ』のときの変貌ぶりがおもしろい!

山崎:渉は同じ『五奇人』ではあるけど、舞台本編ではまだ絡みがないな。ライブ(2023年3月『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』-Party Live-)くらいで、実は『ドラマティカ』の方が多い。

山本:今思ったけど、結構異色な組み合わせだよね。意外とまだ絡んだことがないメンバーが揃っているし、そういう面でもおもしろそう。僕と渉と宗は『ACT1』からだからいいとして、そこにみか、なずなとつむぎなのが驚きだよね。

山崎:でも宗とつむぎは意外とつながりがあったりするので、良い化学反応が生まれるんじゃないかな。

山崎大輝


自分と役の間にキャラクターのフィルターを入れて役作り

ーー台本を読んでの感想を聞かせてください。

山本:まずは題材に関しての話し合いをした時、北斗含め原作『あんスタ!!』キャラクターたちも演劇をするとなった際に話し合いをすると思うのですが、そういった段階を一緒に追っていくような経験をしたのは楽しかったです。題材が「ヘンゼルとグレーテル」に決まり、どう展開していくかの話を経て、出来上がった脚本を読ませていただきました。

舞台の『ドラマティカ』では、役者がキャラクターを演じつつ、キャラクターが題材のキャラクターを演じるという二重構造になっていますが、今回俯瞰しながら作っていく段階を踏んで、この作品の魅力をすごく感じています。「ヘンゼルとグレーテル」という題材を『あんさんぶるスターズ!!』のキャラクターたちが作ったらこんな世界が生まれるんだという、何かifの提示ができている気がして。

舞台上でifを表現することによって、「北斗たちが舞台で演劇をする様子のおもしろさ」もあるけど、「ヘンゼルとグレーテル」が、『ドラマティカ』のメンバーたちの解釈によってつくられたという奥行きのあるおもしろさも伝えられるんじゃないかなということを、台本を読んだ時に思いましたね。舞台としての魅力、キャラクターたちの魅力もさらに際立っています。やっぱり『ドラマティカ』の可能性はすごく多い!

山崎:今回の『ACT4』の脚本は、よりキャラクターに沿っている、キャラクター同士がリンクしている感じがします。もはや「ヘンゼルとグレーテル」の世界の中に、僕たちが入ってしまったと思うくらいの勢い。

山本:『あんスタ!!』のキャラクターたちが「ヘンゼルとグレーテル」のキャラクターを演じるっていうイメージがすごくしやすかったよね。

山崎:今回は「大体こんな感じになりそうだな」、「やってみたらおもしろそう」みたいな感想を持ちました。

宗には苦しい時代もありましたが、より高みを目指すために頑張っている崇高なる人間です。でも今回の役である“ディシー”は、究極のお菓子の家を追い求める中で、もがいている最中みたいな部分があります。僕は斎宮 宗が好きだからこそ、宗にはもがいてほしいんです。その時に彼の魅力というものが出てくるのではないかと思っています。志を強く持ってストーリーを生きていく宗を見るのがすごく楽しみですね。

役作りの話で言うと、『ACT2』の時は宗が先にあるより、“和蒜 デニス 健治”という役が先にあった方がいいと思っていました。今回のアプローチは逆かなと思っていたんですが……あれ、そんなこともないかも?

(左から)山本一慶、山崎大輝

山本:違うんかーい(笑)。でも言いたいことはわかる。今までは「西遊記」や「不思議の国のアリス」という題材の個性を出しつつ、『あんスタ!!』のキャラをどう寄り添わせるかだった。例えば「北斗が悟空を演じるために、どう考えるんだろう」を、僕が考えるということ。僕と悟空の間にワンフィルター、「北斗だったらこうするのかな」を入れる。それだけでもだいぶ違うんですよね。その過程を踏むのが大事だし、『ドラマティカ』をやる上で役者としての楽しみのひとつでもある。それが垣間見えたときに、お客さんも『ドラマティカ』を感じてくれるんだと思う。

今回は役者的にやりやすい脚本。もしかしたら『ドラマティカ』の持つ魅力を、お客さんにより感じてもらいやすいような役作りをできるのかなって思いましたね。

山崎:同じことを思いました! イメージができているから早くやってみたい。

山本: 今までは逆で、ちょっと難しかったところもありました。題材の役を作ってから、どう『あんスタ!!』を差し込むか。キャラクター性を出すのが難しかった。『ACT1』でも結構みんなで話しあったりもしていたよね。それに比べれば、『あんスタ!!』の魅力も「ヘンゼルとグレーテル」という題材の魅力も両方出しやすいのかなと思います。

山崎:僕は『ACT1』も『ACT2』も立ち位置がちょっと特殊で、高い位置から見下ろすような、すでに完成した役どころだった。今回は物語中に苦労を経て成長していくキャラクターでもあるので、そういう変化のお芝居も楽しみですね。

『MoM』と『ACT3』を振り返って

ーー山崎さんへの質問です。『MoM』での「ナイショ話」があれば教えてください。

山崎:『MoM』は、「新しいものを作ろう」ということを心がけて挑んでいた作品でした。公演が始まる前に「お客さんが劇場に来なかったことを後悔するくらい、良い公演を作っていきましょう」と円陣を組み、志高く挑めたというのは、ひとつ誇らしく思っています。

あっ、稽古中のおもしろかった出来事を思い出した(笑)。(影片みか役の猪野)広樹くんが、ダンスの振付が上手くできないとだんだんイライラしてきて、地面を叩いてたことがあって(笑)。僕はそれを「まぁまぁ」ってなだめたんですが、別の振付で、僕も上手くできなくてイライラし始めて地面をバーンッって叩いてしまって。すると今度は広樹くんが「まぁまぁ」ってなだめてくれたことがありました。地面叩きがち『Valkyrie』。

山本:今回地面叩きがちなふたりが揃っちゃっているってこと!?

山本一慶

山崎:あとは、こっちの方がナイショ話かな? 僕と広樹くん2人の時は合うのに、そこに(仁兎なずな役の大崎)捺希くんが入るとちょっとまた空気感が変わるんですよね(笑)。旧『Valkyrie』っぽさがあります(笑)。本番までにはみんなで息を合わせましたけどね。

ーー山本さんへの質問です。『ACT3』を振り返って、「新たな発見」があったら教えてください。

山本:ポップで楽しい作品ではあったんですけど、だからこそ難しかった部分が多くありました。というのも、全員が舞台上にいるにも関わらず、メインの進行以外は個々で何かしていなければならない。書かれてない部分——そこの合間は何をしているんだろうっていうところを埋めていく作業が多かったです。「聞いてないふりをフリーでしてください」って実は難しくて、舞台上に出ている役者は全員常にエンジンがかかってる状態。だから稽古中からすでに汗だくでした。何も喋ってないシーンで、エチュードのように毎稽古試行錯誤して一つひとつ作っていきました。役者としてずっと気を張っている稽古であり、「このシーンでは何をするか」っていう発見をしていかなければならない。それが積み重なっていった結果、常にみんなが動き回る『ACT3』のわちゃわちゃ感が生まれたのかなと。全員で頑張って構築した公演ですね。

ーー小道具も多くありましたし、常に動いている状態だったんですね。

山本:お菓子や食器など、自由に使ってくださいっていうアイテムが多くありました。何をするかを考えていくうえで、あってくれて良かったものですね。あの世界観でのお菓子はとても可愛いし、見栄えもするので。今回もお菓子の家だから小道具もたくさんあったりするのかな。

ーー最後に、お菓子に関するエピソードをお願いします。

山本:僕は料理をする中で、「少々」とか「りんご1個」っていう書き方がよくわからない。グラムで言ってほしい!だからきっちり決まっているお菓子作りの方が好きです。それもあって、姉のバレンタインのチョコをずっと作っていました。姉は料理に対する思考が真逆で、大雑把に入れて失敗するタイプ。姉が旦那さんに渡すバレンタインのチョコは、昔からずっと僕が作っていました。

山崎:それ旦那さん的にはどうなの?

山本:「今年も美味しいね!」って言ってくれる(笑)。

山崎:いいね、優しい! 僕は昔、お菓子で歯を折ったエピソードとかもありますが……。

山崎大輝

山本:何それ、教えてよ!

山崎:結構いろんなところで言ってしまっているので、別の話にしようかなと。折った原因はスナック菓子でね。

山本:僕もこの前、福神漬けで同じことやった。なんかガリガリするなぁと思ってたら自分の歯で驚いたな~。

山崎:あれすごいびっくりするよね! うーん、お菓子エピソードかぁ。一回クッキーを作ってみたことがあったんですが、なぜかちゃんと焦げて。クッキングシートにくっついて取れなかったので、一部しか食べられませんでした。

山本:下はくっついて、上は焦げていて、どうしようもないよね!? 中間しか食べられない!

山崎:ホントになぜなのかわからない……。それから二度とお菓子は作ってない。

山本:お菓子作りって分量は計ればいいし、オーブンで焼く時間もレシピ通りにやればできるはずなんだけどなぁ。

山崎:ね。センスがなかっただけかも。

山本:「ね。」で終わってしまった(笑)。

(左から)山本一慶、山崎大輝

ーー公演を楽しみにされている方にメッセージをお願いします。

山本:『ACT4』をやらせていただけるのは皆さんの応援のおかげで、本当にありがたいことだと思っています。題材は「ヘンゼルとグレーテル」ですが、この公演は「魔女とお菓子の家」。なぜこのタイトルなのかということを、ぜひ思考してもらいたいです。この思考の段階でもうすでに作品の魅力が生まれていると思います。

しかし、いざ観劇の際は頭を真っ白にして来てください。「こういう事だったのか、楽しかったな!」って思っていただけるような、心温まる物語になっていると思います。ぜひ劇場でご観劇ください。

山崎:いろんな舞台をやらせていただく中で、『ドラマティカ』は気負わずに楽しめる作品で、そこがすごく魅力だと思っています。誰もが知っている有名な題材なので、前情報を多く知っていなくても大丈夫です。原作である『あんスタ!!』が好きな方々にも二重三重、いろんな角度から楽しんでもらえるというのが、このコンテンツの良いところだと思いますので、ぜひ気負わずに観に来てくださると嬉しいです。

ーーありがとうございました。

(左から)山本一慶、山崎大輝

■山本一慶
ヘアメイク:花井菜緒(JOUER)スタイリング:MASAYA(PLY)

■山崎大輝
ヘアメイク:北一騎 スタイリング:内田考昭

取材・文=松本裕美    撮影=荒川潤

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