懐かしさとはなにかを問いかける、上野アーティストプロジェクト2024「ノスタルジア―記憶の中の景色」が2025年1月8日まで上野『東京都美術館』で開催中
大正生まれから平成生まれまで、過ごした地域や環境がそれぞれ異なる8人の作家たち。彼らの「記憶のなかの景色」を紹介する、上野アーティストプロジェクト2024「ノスタルジア―記憶の中の景色」が2025年1月8日(水)まで東京都台東区の『東京都美術館』で開催されている。
多様なノスタルジアの世界に触れ、自分を見つめなおす
公募展に関わる作家を積極的に紹介する、上野アーティストプロジェクト。シリーズ第8回目の2024年は、懐かしい風景、ノスタルジア(英語で郷愁の意味)がテーマだ。ノスタルジアを強く感じさせる風景や人のいる情景、幻想絵画などを描いてきた8名の作家たちを紹介し、ノスタルジアの意味と可能性を探っていく。
広報担当の小倉さんは、「さまざまな世代の、また、幼いころに過ごした地域や環境がそれぞれ異なる8人の『記憶のなかの景色』です。日常風景や子供のいる情景、異国の人々、幻想の都市など、個性的な表現による、多様なノスタルジアの世界をご覧ください」と見どころを語る。
ノスタルジアをリラックスして感じてもらいたいというのも本展の意図のひとつだ。高さ約12mの吹き抜け天井があるギャラリーAの中央には8畳大の休憩スペースが登場し、周囲を4人の作家の大きな絵画が取り囲む。玉虫良次が5年をかけて描き続けた連作『epoch』10点による約16mの大パノラマは、本展会場で初めて全体を連結した姿を披露する。
作品を通して、私たち自身に人生への振り返りを促す“ノスタルジア”。自分自身の内面を見直すきっかけともなりそうだ。
「懐かしさの系譜―大正から現代まで 東京都コレクションより」も同時開催
『東京都美術館』ギャラリーBにて、東京都立の美術館・博物館が所蔵する絵画や版画、写真などから、大正期~現代にいたる日本の風景をたどる「懐かしさの系譜―大正から現代まで 東京都コレクションより」が同時開催される。
川瀬巴水や土門拳が捉えた、近代化の中で消え去った大正・昭和戦前期の情景への「懐かしさ」。戦後一気に流入したアメリカ文化に対する「懐かしさ」。高度経済成長を背景に均質化と変貌を繰り返す都市や郊外の街並みに向けられた「懐かしさ」。作家たちが浮かび上がらせる「懐かしさ」からそれが何であるか、改めて問いかけていく。
両展あわせて鑑賞することで、ノスタルジアの諸相を体験できるはずだ。
開催概要
上野アーティストプロジェクト2024「ノスタルジア―記憶の中の景色」
開催期間:2024年11月16日(土)~2025年1月8日(水)
開催時間:9:30~17:30(入室は~17:00)※11月22日(金)、29日(金)は~20:00(入室は~19:30)
休室日:11月18日(月)・12月2日(月)・16日(月)・21日(土)~2025年1月3日(金)・1月6日(月)
※一部展示替えあり。前期:12月5日(木)まで
会場:東京都美術館(東京都台東区上野公園8-36)
アクセス:JR上野駅から徒歩7分、地下鉄銀座線・日比谷線上野駅から徒歩10分、京成電鉄京成本線京成上野駅から徒歩10分
入場料:一般500円、65歳以上300円、学生以下無料
※障害者手帳をお持ちの人とその介護者1名は無料。
【問い合わせ先】
東京都美術館☏ 03-3823-6921
公式HP https://www.tobikan.jp/exhibition/2024_collection.html
取材・文=前田真紀 画像提供=東京都美術館
前田真紀
ライター
『散歩の達人』『JR時刻表』ほか雑誌・Webで旅・グルメ・イベントなどさまざまなテーマで取材・執筆。10年以上住んだ栃木県那須塩原界隈のおいしいものや作家さんなどを紹介するブログ「那須・塩原いいとこ、みっけ」を運営。美術に興味があり、美術評論家で東京藝術大学教授・布施英利氏の「布施アカデミア」受講4年目に突入。