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「今が最強」フラワーカンパニーズ、結成35周年を経た20thアルバム『正しい哺乳類』、ラッコ原体験を語る

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フラワーカンパニーズ

2024年4月に結成35周年を迎えたフラワーカンパニーズ。『今が旬』と冠した結成35周年ツアーも実施して、2025年9月20日(土)には10年ぶり2度目となる日本武道館ワンマンライブを開催するなど、脂が乗り切っている。

1月22日(水)リリースの20枚目のアルバム『正しい哺乳類』。先行シングル『ラッコ!ラッコ!ラッコ!』がオープニングナンバーを飾る新機軸のアルバムとなった。何が新機軸かというと、ここ20年から25年のフラワーカンパニーズはボーカルの鈴木圭介が自らの生き様をリアルに、時にはシリアスに楽曲で表現してきた。多くの歌い手にカバーもされている「深夜高速」は、その代表と言えるだろう。
人生の重みや暗さを普遍的に歌として伝えたのは本当に素晴らしいとしか言いようがないが、今回はそれだけではない。哺乳類やラッコという言葉ひとつを取っても、リアルやシリアスだけではないユニークな切り口で抜けの良さを感じる。何故、今この新機軸に辿り着いたのかを、鈴木とベースのグレートマエカワに聴いてみた。

鈴木圭介(Vo)

ーーまずは2024年は、どんな年でしたか?

鈴木圭介(以下、鈴木):この1年は意外に覚えていないことが多くて。手帳を見て、前半は何をやってたんだろうと振り返ってみたけど、思ったより時間がなかったし、その場その場で夢中過ぎてた。でも、年末になって振り返ってみると、充実していたなと。

ーー全国26箇所27公演を周った結成35周年ツアーのタイトルが『今が旬』ということからも、2024年度の調子の良さを感じていたんですよ。

鈴木:洒落でつけたんだけど、意外にそうでも(洒落でも)なかったなと。まぁ、調子悪いわけじゃないし、55歳のおっさんが洒落でつけたけど、的を得ていた実感がある。浅草公会堂(11月30日)でのライブをやった時に、そう思った。レアな曲だらけのライブでなかなか大変だったんだけど、いいライブだったなという実感もあって。今年やってきたことがグッと詰まったというか、花開いたというか。

グレートマエカワ(以下、マエカワ):タイトルは半分洒落だったろうけど、実際に調子良い感じが2、3年ずっと続いていたから、鈴木からこのタイトルが出てきた時すぐ「これに決定!」って。インパクトあるし、口にするとノッてくるのもあるのかなと、言霊と言うか。武道館も決まって、まぁ、いくつになっても目標があると面白いというか。

ーーずっと横で圭介さんを見てこられて、マエカワさんも圭介さんの調子の良さは感じておられましたか?

マエカワ:中学生の頃のネガティブだけじゃない鈴木も知ってるからね。ただ大人になると責任も出てくるから。ボーカルとして、声の調子とか。でも、最近は声の調子が悪くても何とかなる、と吹っ切れてる感じがする。そんなことも含めて、フラワーカンパニーズ35年の中で今が最強。フロントマンがやるとなったら、こっちもやるだけだしね。鈴木も元々は天真爛漫だったし。

鈴木:お調子者だったよね、小っちゃい頃は。

マエカワ:それがボーカリストになるとプレッシャーが半端ないから。今は、それを上手く昇華してるんじゃないかな。特に昨年から外れなしというイメージ。MCとか何をやっても外れなし。

鈴木:MCはずっと当たりなしだよ! だけど、まぁ、それでも良くなっちゃった。

ーー全てを受け入れられたポジティブな強さですね。

鈴木:ネガティブ、ネガティブと言われるようになったのは、バンドをやってからだしね。中学生の時から、そういう思考はあるんだろうけどね、掘ったらネガティブと言うか。だけど、もっと掘ったら、そうじゃないかもだし。声も、ここ1年半くらい色々ずっと試してきて、やっとわかってきたというか。イヤモニの使い方とかね。後、ストレッチとかも、ここ2年くらいかな。これを20代の時からやっていたらなとは思うけど。だから、最強というか、声のことを気にしなくて良くなったというか。1回風邪をひいたくらいで気持ちが左右されていたのが、今は何とかなるだろうって。

グレートマエカワ(Ba)

ーーニューアルバム『正しい哺乳類』も1曲目「ラッコ!ラッコ!ラッコ!」から始まり、35周年を経て20枚目アルバムとして、とにかく吹っ切れてぶっ飛んだ感じがしました。

鈴木:ライブ会場で一昨年から立て続けにシングルを出していたから、いずれはアルバムが来るだろうなと、ずっと曲は作っていて。別に特別なことをしようとは思ってなかったし。こういうアルバムにしようとかは思ってなくて、何も考えずに作っているというか。でも、いつもそうかも、全体とかテーマとかを考えずに作るのは。

ーーこのタイトルからしても何かキッカケがあったかなと勝手に思っていたのですが、普段通りだったんですね。

鈴木:暗い曲は嫌だなというのは、コロナ禍以降からは思っていたかな。歌っていて、持っていかれるのは嫌だなって。

マエカワ:今回の曲を作る時に、鈴木が最初から歌詞も含めて出してきたから、「いいね!」となって。で、鈴木がいいペースで作ってきてたから、今回俺は曲を作らん方が面白いなと。案の定どんどん作ってきて、鈴木は全曲出したそうだったけど、アルバムにたくさん入れすぎると1曲1曲が薄まる気もするから、10曲前後に抑えようと。「ラッコ!ラッコ!ラッコ!」も最初にできたと言ってきた時はどうかなと思ったんだけど、聴いてみると、あれ、かっこいいんじゃない?と。(鈴木が)ラッコ好きだと事ある毎に言っているから、お客さんも「あー作っちゃいましたね」的な感じだろうなと思いながらライブでやったら実際にウケも良くて。「深夜高速」を褒められるのは嬉しいけど、俺らはそういう面だけじゃないんだよってね。

ーー強いて言うならば、90年代後半のメジャーデビュー時期は、こういう明るく抜けが良い曲があったなと改めて思ったんです。

鈴木:う~ん、忘れてるなぁ、その頃のことは。

マエカワ:よくわからんパワーね。

鈴木:まあ今回は、いつもより、気持ち高めには作ってたかな。時間的にも余裕は、いつもよりあったかなとも思う。いつもは(曲作りが)始まるまでのグズグズが長いから。

ーー以前も夏休みの宿題で言うと8月31日までやらないタイプと言ってましたもんね。

鈴木:今回は7月20日から作れた感じかな。

マエカワ:夏休み初日!

鈴木:ずっと曲作りをやっていたから、初動に時間がかからんかったというか。だから方向性を変えたとかでもなく、結果こうなっちゃった。「ラッコ!ラッコ!ラッコ!」もちゃんとした曲にするとは思っていなくて、狙っていたわけじゃないし、アルバム入れるつもりもなくて。ライブで2、3回やればぐらいで、みんなにラッコの事を知らないから、ちょっとでも知って欲しかっただけで。

ーー衝撃的でした。まさかロックでラッコの歌ができるとは思ってもいなくて。

マエカワ:タイアップ以外ではなかなか作らないよね。

鈴木:「俺を知って欲しい」「犬を知って欲しい」というのはこれまであったけど、確かにラッコを知って欲しいという曲はないかもだね。

ーー「ラッコ!ラッコ!ラッコ!」の中の<正しい哺乳類>という歌詞がアルバムタイトルにもツアータイトルにもなりましたよね。

鈴木:ツアータイトルを決めないといけない時に、何かあるかなと思って。

マエカワ:「正しい哺乳類」と言われて、一発で決定。

鈴木:そのあとアルバムタイトルどうしましょうとなって、一緒で良いんじゃないって。

マエカワ:これを超えるインパクトはないよね。まぁ、それぞれ何か感じてくれたら。

鈴木:正しいとか正義がわからなくて。元からわからないけど、コロナ禍以降、よりわからなくて。

ーーだけどテーマやメッセージの重さみたいなのは感じないんですよね。

鈴木:決してラッコも呑気な生き物じゃないんだけど、曲が重くないからね。

マエカワ:みんなに知って欲しいよね。

ーーアルバムジャケットとツアーポスターも衝撃的で、メンバーがラッコを始めとする哺乳類たちに囲まれていますね。

マエカワ:ファン目線で観て、気に入ってるね。

鈴木:ポスター、家に貼ってるもん。今までは、そんなことはなかったもん。考えられないよ。今までのが嫌という意味じゃなくてね、自分の顔が写ってるやつを家に貼るってことが嫌だから。今回も一応自分はいるけど、動物がいるから。

マエカワ:センターがラッコだしね。

鈴木:ラッコがいるからね。ラッコは飾りたい。

ーー圭介さん、犬もお好きですけど、犬とラッコの違いってありますか?

鈴木:犬は飼っていたからね。でも、ラッコは飼えないから。

マエカワ:逢いに行かないといけないから。

鈴木:触れられないしね。

ーーラッコ原体験って、いつですか?

鈴木:ラッコ原体験!?

マエカワ:ラッコ原体験って良いね(笑)。

鈴木:5年前に和歌山のアドベンチャーワールドにパンダを観に行って、そしたらラッコが地下水槽に一匹いたの。でも、その時はピンときてなくて。人気ないんだなくらいで。俺もパンダばっか観ていたし。それから2、3年前かな、YouTubeで三重の鳥羽水族館のラッコがたまたま出てきて、見てたらこんな可愛いんだと。アドベンチャーワールドにいたラッコが鳥羽に来ていて、後々調べたらアドベンチャーワールドで観た子だったから運命を感じて。全国に今は3匹(※)しかいないしね。どこにでもいると思っていたでしょ? 絶滅危惧種なんだから。パンダの方が珍しくないんだよ。
※2024年12月時点。25年1月4日に福岡「マリンワールド海の中道」のオスのラッコ・リロ(17歳)が亡くなったため、現在は鳥羽水族館のメス2匹のみとなった

ーーどこかマイノリティーというか、判官贔屓的な感覚もありますか?

鈴木:それはあるかもね。弱い者に気持ちがいくというか。自分が強くなかったし、ガキ大将が好きじゃないから。だけど、ガキ大将の背負っている苦しさとかもわかるようになってきたかな。いわゆる権力者の事情はわからないけど、昔からアンチ権力だからパンク好きなんだろうし。でも、そんな事情抜きで、ただただ単純にラッコは可愛かったから。

ーー1曲目というのも最初から考えていたのですか?

マエカワ:最後の最後で。鈴木が1曲目でいいんじゃない?と。

ーーライブでも既に聴いていたんですけど、音源で聴くと、また違うくて、リズムやビートやサウンド全てが凄い格好良くて。

マエカワ:90年代後半の手法というか、冒険はしたかな。最近はシンプルにシンプルにやっていたけど、今回は音の潰した感じというかね。最近は遊びが少なくなってきていたから、今回は遊んでみようと。ただ、(ドラムの)小西は始めはビックリしていたけどね。

鈴木:こっちは口で(リズムやビートの説明を)言っているんだもん。全部口で説明しているから。

マエカワ:35年やっているバンドがやることじゃない(笑)。

鈴木:ドラムパターン全部、口で言ったね。

マエカワ:尊いよね。今回は、そういうのが多くて。鈴木と小西は高校時代にやっていたバンドも全部口で言っていたから。

鈴木:全部「デデデデ」みたいな。

マエカワ:フラワーカンパニーズ以前から、そうだから。新鮮だったよね。

ーー今はスマホのアプリで、ある程度デモが作れて、メールやLINEで送れちゃいますもんね。

マエカワ:そっちの方が本当は良いよね。

鈴木:単純に(デジタルに)乗り切れてないだけだよ。だけど、俺らはこっちの方が早いと思ってやっているから。週2、3回はスタジオにも入っているし。

マエカワ:2001年くらいにパソコンを買って、色々とやってみたけど、個性が出ないなと、面白くないなと思って。これじゃバンドが上手くならんと思って。(ギターの)竹安は今もできるはずだけど、そんな時間があったら(趣味の)料理を作っているはず(笑)。

ーー良いバンドですよね……。

鈴木:あくまでウチのバンドはという話だけどね。絶滅危惧種だから。

ーー最後になんですが、35周年を経て20枚目のアルバムだとバンド名だとか記念的タイトルにしてもおかしくないのに、『正しい哺乳類』という肩の力が抜けた自然体な感じが良いなと思いました。

鈴木:バンド名がタイトルというのは鼻からないから。

マエカワ:それは最初から作らんと思うよ。

鈴木:もしやるとしたら20枚目は外すかな。こんだけやってきて、今そのタイトルを付けたら解散すると思うんじゃない?

ーータイトルも楽曲も自分たちのことだけを打ち出すんじゃなくて、哺乳類やラッコというタイトルからして、物凄く俯瞰的なのが本当に凄く良いなと思っています。

鈴木:いつまでも自分のことだけは鬱陶しいと思ってるから。

ーー素敵なアルバムだと思います。インタビューありがとうございました!

取材・文=鈴木淳史 撮影=福家信哉

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