大規模サイバー攻撃による「試練の年」でも売上高を伸ばしたKADOKAWAの底堅い今期決算
KADOKAWAは5月8日、2025年3月期の通期連結決算を発表した。売上高は2779億1500万円(前年比7.7%増)、営業利益は166億5100万円(同9.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は73億9200万円(同35.1%減)だった。2024年6月に発生した「BlackSuit(ブラックスーツ)」を名乗るハッカー集団によるサイバー攻撃の影響で、ニコニコサービスのクリエイターへの補償や調査、復旧作業などを特別損失として24億1300万円を計上しており、大幅な減益となった。
KADOKAWAは、経営陣にとって「試練の年」であったとしているが、仮にサイバー攻撃による影響がなかった場合、前期比で売上高は11%増、営業利益は16%増だったと試算しており、事業自体は好調だったといえる。昨年11月にはソニーグループが買収に向けた協議に入るなど(最終的には追加出資にとどまる)、KADOKAWAが得意とするアニメやゲームなどのIP(知的財産)をベースにした成長戦略が今期決算の底堅さに繋がっている。
部門別での業績は、出版・IP創出事業の売上高は1513億6700万円(前年比6.6%増)、営業利益は83億7200万円(同19.2%減)だった。アジア、米国で雑誌と書籍の販売が好調で、海外事業が増収だったものの、国内はサイバー攻撃の影響で出荷が減少し減収となった。
アニメ・実写映像事業は、売上高は510億9200万円(同10.9%増)、営業利益は47億2900万円(同3.4%増)だった。アニメ作品「推しの子」の2期などの人気シリーズの国内外での配信やグッズ、ゲーム向けのライセンス収入が好調だった。ゲーム事業は、売上高は355億9700万円(同32.5%増)、営業利益は95億3800万円(同20.0%増)だった。
Webサービス事業は、売上高は180億3800万円(同15.7%減)、営業利益は9億9800万円の赤字(前年は3億6200万円)だった。サイバー攻撃によってニコニコ関連サービス全般が停止した影響が大きく、営業赤字となった。教育・EdTech事業は、売上高は151億1900万円(同12.9%増)、営業利益は23億8200万円(同37.9%増)だった。ドワンゴが運営するN高等学校とS高等学校の生徒数が増加し、バンタンが2024年4月に開校したKADOKAWAアニメ・声優アカデミーも生徒数が増加したことで増収増益だった。
キャラクターグッズなどの企画・販売を行うMD事業とところざわサクラタウンなどの施設運営事業を担うその他事業は、売上高は178億8100万円(同11.9%減)、営業利益は42億400万円の赤字(前年は43億9900万円の赤字)だった。
KADOKAWAの2026年3月期の連結業績予想は、売上高は2919億円(前年比5.0%増)、営業利益は167億円(同0.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は114億円(同54.2%増)を見込む。