アジングで活躍する「エステルライン」は少し厄介 使用する際の注意点を解説
数種類ある釣り糸の中でも、魚種や釣り場の状況によってピンポイントで用いられるのが「エステルライン」だ。このラインは張力に弱く、負荷がかかると切れやすい。しかし他の釣り糸と比べて1.4倍ほど比重が高い。そのため1g前後の軽いジグヘッドも飛ばしやすい利点を持つ。フィネスの釣りには向くラインだが、どんな場面でも基本的に「取扱注意」の札がつく。困らせどころを知り、うまく扱おう。
エステルライン、使いにくいのは確か
アジングや管理釣り場のフィネスの釣りに多用されるのがエステルラインだ。かつては川の釣りでも使われていたらしい。上述の特徴を持ち、繊細な釣り物のメインラインとして重宝されるが、それ以外ではほとんど出番がないものとも言える。このラインは水なじみが非常にいいかわりに、切れやすいのだ。
弱点はそれだけではない。性質上、イト同士が引っ付きやすい。そのため投げたときにイトがモモってしまったり、バックラッシュすることもある。ここが困らせどころだ。長所を消す難点ともいえよう。
ライン強度も高くはない。アジングのメインラインといえば、エステルライン0.3号だ。同じ号数ならばPEラインならば6lb(約2.5㎏)前後の張力に耐える。エステルラインは0.3号でも1.7lb(約600g)の張力にしか耐えない。「水なじみがいいこと」「軽量リグが扱いやすいこと」以外には何かと厄介で、PEラインやフロロカーボンラインのユーザーの視点で見れば「何がいいんだ、こんなライン」と思うこと間違いない。
バックラ、モモリはこうして抑える
エステルラインはイトとイトがエアノットしてしまってモモったり、何本かの線が重なってしまってクルクルして、収拾のつかないバックラッシュに発展することもある。
だがこの症状は予防できないものでもない。また仮に発生してしまっても、軽度な状態であれば、ちょちょいと手を入れれば治せる。
ラインが絡むトラブルの予防
バックラもモモリも、起きる原因はほとんど同じだ。リグを投げて巻き出すときに、ラインローラーにイトがふわっと乗ってしまっていて、負荷がかかっていない。この状態でハンドルを巻くとふわふわとラインがスプールに収まりきらず、イト落ち、モモリ、果てはバックラッシュへと至る。
エステルラインの取り扱いの基本――ないしライントラブルの予防として、必ず、巻き出しの負荷をきちんとかけることを意識しよう。着水時にサミングして、ラインスラックを出しすぎないようにする。そこから、まるでイトに軽いアイロンをあてるようなイメージですーっと取り、そのあとリーリングを始める。リグの存在感を手元で常に感じながら巻いていく。するとスプールにきれいにイトが収まる。
またアジングやエリアトラウトでは、投げたあとに手元のイトを軽く引っ張るようにしておくと、目で見なくてもイトの状態がどんなものか蝕知できる。違和感があれば、ライントラブルの芽だ。すぐにイトがどんなふうになっているか確認して、確実に摘んでおきたい。
下巻き注意!コブを作らない
エステルラインもPEラインも同じだが、細い釣り糸をスプールに巻くときには、下巻きにも注意しなければならない。下巻きと本線をノットすると、そこでコブができてしまい、巻いていくときにそのコブに引っかかったままイトがスプールに収まっていく。すると、投げる時にコブにラインが引っかかってまったく飛ばない、あるいはキャスト切れのトラブルもたまに起こる。
ラインのコブはその場でぱぱっと処理できるものではない。最初から巻き直さなければならないのだ。
細いラインを使うときには、下巻きを必要量巻いて切ったラインはテープを使ってスプールに留めておこう。その上から、新しく本線を巻いていく。ノットしてしまうと必ずコブができるので、テープ(なるべく強度が高く耐水性が高いテープ)を使うのだ。基本的にエリアトラウトやライトゲームの下巻きには、3lbのラインを使う。それ以上太いと、今度は下巻きのイトの隙間に本線が食い込んでしまう。
慣れれば一級品のライン
ここまで聞くと注意事項が多すぎてエキスパート向けのラインにも思えるエステルラインだが、実際使ってみると、そんなことはない。慣れてしまえばフロロカーボンラインやナイロンラインと同じように使えるし、強度の低さもドラグで補えば大きな魚を釣りきる力もある。
高比重で軽量リグを飛ばしやすいこと、そして水なじみの良さは、他のラインが持たない特別な能力だ。エステルを制するものがフィネスの釣りを制する。
<井上海生/TSURINEWSライター>