浦島坂田船 “月”をテーマに新たな表現の扉を開いた春ツアー、東京ガーデンシアター公演をレポート
浦島坂田船 Spring Tour 2025 ~月~
2025.2.21 東京ガーデンシアター
うらたぬき、志麻、となりの坂田。、センラの4人からなるボーカルユニット・浦島坂田船が、2025年2月より過去最多公演数全国20都市のホールをまわる春ツアー『浦島坂田船 Spring Tour 2025 ~月~』を開催。そのひとときは、まさに春爛漫。2月21日に東京・東京ガーデンシアターで行われたツアー初日の模様をお伝えする。
中国語で“ユエ”と読む“月”が冠された今回の春ツアー。ステージを覆う紗幕に夜桜と月が映る水面が投写され、輝く月光に浮かび上がる4人のシルエット。はるかなる月の都から、歌を愛する4人衆が訪れたのだ。ドラマティックな幕開けを飾ったのは、ツアー初日前日、2月20日に動画配信されたばかりの「月華」。それぞれのメンバーカラーに染まる羽衣を揺らめかせながら<あなた>を想う歌声を響かせしなやかに舞うそのさまは、夢か現か息を呑むほどに美しい。
うらたぬきの「いこうか!」という声を合図に紗幕が振り落とされ、志麻が「おまえらのこと愛しちゅうよ!」と愛を叫んだ「花鳥風月」では、漢服を想起させるような今ツアーのキービジュアルそのままの衣装をまとった4人の姿があらわに。それぞれのメンバーカラーの唐傘を手に<夢の宴>へといざなった「百花繚乱」。メンバーにつられてcrew(浦島坂田船ファンの呼称)も大きくクラップ&コールした「花吹雪」。センラの巧みな歌いだしからがっちり心を掴まれ、4人のケミストリーと客席で揺れるペンライトの瞬きが生み出す<絶景>に心が震えた「絶景」。花魁さながら扇を手にうらたぬき&となりの坂田。、志麻&センラが背中合わせになったり扇ぎ合ったりした「花や、花」。浦島坂田船には、和情緒漂う楽曲、華やかできらびやかな世界観がやっぱりよく似合う。
花のお江戸から現代の夜の街へと蝶に導かれ、「月夜」ではマントを脱ぎスタイリッシュなダンスで魅せる4人。時を超えても変わらずに光り輝く“月”をシンボルに月にまつわる楽曲をちりばめた今ツアー、生まれては消えていく人の世の儚さと美しさが際立っている。
ミラーボールに反射する無数の光の粒がロマンティックムードを高めた「年に一夜の恋模様」。crewに全力で歌と想いを届ける浦島坂田船、4人の歌と想いを全力で受け止めて応援するcrew。お互いがお互いの<一番星>であることをあらためて感じた「Starry Heaven」。メンバーとcrewが一丸となって<今>を<謳歌>した「祭唄」。刻まれていく1曲1曲が色鮮やかだ。
4人が100均アイテムを駆使してコスプレに挑戦する幕間映像『月になりきれ選手権』では、うらたぬきがツキノワグマに、となりの坂田。がおぱんちゅうさぎに、志麻がルナトーン(『ポケットモンスター』に登場するモンスター)に、センラがセーラームーンに変身。驚きのハイクオリティ&美脚(!?)で優勝を勝ち取ったセンラはじめ、躊躇なく各キャラクターになりきった4人の創意工夫、噴飯ものであった。
桜色をとり入れたカジュアルコーデにチェンジし、うらたぬきがアクロバティックなダンスも病みつきビートもものにしてしまった「十五夜オツキサマ」、志麻が切ない恋心に揺れた「さよならグッバイ」、。センラの艶っぽさに拍車がかかった「Pudding」、となりの坂田。が「黙って俺についてこい!」と男気を見せた「無駄≠無駄」と個々に沼らせたソロ歌唱に続いては、コラボパートへ。スリリングなかけ合いや<大嫌い>の応酬もエモーショナルなうらたぬきとセンラの「インビジブル」、ギラついた志麻ととなりの坂田。が<互い讃え踊って救われ>る「ダンサブリミア」、それぞれの濃密なバディ感もたまらない。
再び4人がそろい、軽やかステップでビッグラブを届けたのは2月14日に動画公開された「ハッピーエンドは笑うように」。<この恋は特別>と笑顔で歌う4人に、crewの心拍数は爆上がりなはずだ。
あちらこちら自由に迷走(?)するツアー初日ならではのロングMCで和ませたあとは、ライブで初披露の「超毒的 LOVE」へ。ポップとダークが入り混じる曲展開&歌詞は、4人の手にかかってますます中毒性の高いものに。
キュートな振り付けや連結ダンス、うらたぬきとセンラ、志麻ととなりの坂田。の背中合わせ、軽やかハイジャンプと見どころ詰め合わせな「Recipe」。ロックに突き抜けて志麻の渾身ロングトーンにcrewのコールもよりいっそう熱を帯びた「4 REAL IN ACTION!!!!」。4人の扇情的な口上、うらたぬきの「今日帰さないけどいい?」にcrewの悲鳴のような歓声が上がった「花魁俺嵐コンフュージョン」。振り向きざまのポーズといいラストポーズといい、4人のあざとかわいいが限界突破した「わたしの一番かわいいところ」。硬軟自在、終盤のたたみかけが容赦ない。
「「わたしの一番かわいいところ」、くると思わなかったでしょ?」としてやったりな笑顔を見せつつ、「みなさんのおかげで自分たちを好きになれています」と胸の内を明かしたうらたぬきはじめ、愛慕の眼差しを客席に向ける4人。いつだって、crewのことを想っている彼らである。
「一緒に歌いませんか?」と呼びかけた本編ラストは、「そらに、ひらり」。顔を見合わせながら歌声をていねいに重ね、寄り添い大きく腕を振ってcrewの大合唱を浴びる4人。ツアー初日にして、そこにしかない温かな多幸感が満ちていた。
アンコールでは、お団子ヘアクリップを頭につけて「わたしの一番かわいいところ」のかわいいを更新してしまった4人。「アイシナヨ」では、ダンサーも巻き込んでのまるでそんなの関係ねぇなワンハンドダンベルローイング風なダンスで沸かせる場面も。
両手でつくる月ポーズでcrewも含めての記念撮影をしたあとは、「最後はぶち上げソングを初披露します!」と宣言、「crewならできる!狂気的に楽しい世界にしよう!」と呼びかけて「熱々ワッショイダンス」へ。赤いきつねと緑のたぬきのアンバサダー就任記念ソングであり、crewとともに大海原を進む浦島坂田船の生きざまと信念が感じられる新たなキラーチューンである。その初披露とは思えない爆発力とcrewとの一体感によって、ポテンシャルの高さがあらわになったように思う。
古より夜を照らし、人々に愛され詠まれてきた“月”をテーマに新たな表現の扉を開いた浦島坂田船。次の春が、今から待ち遠しい。
文=杉江優花
撮影=堀卓朗[ELENORE]