木彫で実物そっくりの植物を生み出す作家の個展「須田悦弘」展が、2025年2月2日まで『渋谷区立松濤美術館』で開催中
実物大の木彫りの植物が不思議な空間世界を生み出す現代美術作家・須田悦弘。初期作品からドローイング、古美術品の欠損部分を木彫で補う補作の作品まで展示する「須田悦弘」展が、2025年2月2日(日)まで東京都の『渋谷区立松濤美術館』で開催されている。
まるでそこに生えているかのようなリアルな存在感
独学で木彫の技術を磨き、ホオノキでさまざまな植物の彫刻を制作してきた須田悦弘(1969~)。須田氏によって生み出される植物は全て実物大で、空間と作品が一体となることで、独自の世界をつくりあげている。
広報担当の白石咲良さんは「本物の草花や雑草と見紛うほど精巧に彫られた木彫作品。須田悦弘によって生み出された実物大の植物は、思いがけない場所にそっと置かれます。『渋谷区立松濤美術館』は“哲学の建築家”とも評される白井晟一が設計しました。白井建築を舞台とした、須田悦弘のインスタレーション作品としてもお楽しみいただけます」と、見どころを語る。
白井建築を舞台にした、唯一無二の空間をぜひ体感してみたい。
スルメや雑草を模した、貴重な初期作品も数多く登場
多摩美術大学のグラフィックデザイン科で学び、授業でスルメを彫ったことをきっかけに、独学で木彫を始めたという須田氏。本展では、その時の《スルメ》と須田氏が初めて彫った植物《チューリップ》を展示する。さらに、学生時代に制作した小さな木彫や絵画作品とともに、大学の卒業制作を再現。卒業後初めてとなる公開によって、氏の作品の変遷をうかがい知ることができる。
もうひとつ注目したいのが、古美術の欠損部を補った作品である「補作」だ。2023年には、現代美術作家・杉本博司氏が展覧会名を「補作と模作の模索」と名付けた須田氏の個展が開催された。これまでは“知る人ぞ知る”ものだった補作作品がクローズアップされた。
本展でも杉本氏に依頼されて補った最初の補作作品、鎌倉時代の神鹿像が展示される。実際に手に取り、観察し、研究した上で補われた作品は、一見、どこを補作したのかわからないほど。須田氏の驚異的な観察力と技を堪能できるのも醍醐味だ。
公開制作やアーティストトークなど、イベントも開催
12月15日(日)「公開制作」
本展出品作家・須田悦弘の制作の様子を観ることができる「公開制作」が地下1階展示室(予定)で開催される。10時30分~17時30分、無料(要入館料)。事前申し込み不要。※混雑状況により場所の変更、整理券の配布、観覧時間を制限する場合あり。
1月11日(土)「アーティストトーク」
須田悦弘氏が制作について語る「アーティストトーク」が地下2階ホールで開催。14時~(1時間程度)、無料(要入館料)。定員70名(要事前申し込み、応募者多数の場合は抽選)。申し込みは往復ハガキまたはHP内の申込フォームにて12月17日(火)締切(必着)。
12月14日(土)・27日(金)・1月19日(日)「学芸員によるギャラリートーク」
学芸員が作品を開設するギャラリートークが開催。各日14時~(約30分)、無料(要入館料)。事前申し込み不要。
開催概要
「須田悦弘」
開催期間:2024年11月30日(土)~2025年2月2日(日)
開催時間:10:00~18:00(金は~20:00。入館は閉館30分前まで)
休館日:月(1月13日は開館)・12月29日(日)~1月3日(金)、1月14日(火)
会場:渋谷区立松濤美術館(東京都渋谷区松濤2-14-14)
アクセス:JR・地下鉄・私鉄渋谷駅から徒歩15分、京王電鉄井の頭線神泉駅から徒歩5分
入場料:一般1000円(800円)、大学生800円(640円)、高校生・60歳以上500円(400円)、中学生・小学生100円(80円)
※( )内は区民。金曜は区民無料。
※土・日・祝は小・中学生無料。
※身体障害者手帳などの手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)無料。
【問い合わせ先】
渋谷区立松濤美術館☏ 03-3465-9421
公式HP https://shoto-museum.jp/exhibitions/206suda/
取材・文=前田真紀 画像提供=渋谷区立松濤美術館
前田真紀
ライター
『散歩の達人』『JR時刻表』ほか雑誌・Webで旅・グルメ・イベントなどさまざまなテーマで取材・執筆。10年以上住んだ栃木県那須塩原界隈のおいしいものや作家さんなどを紹介するブログ「那須・塩原いいとこ、みっけ」を運営。美術に興味があり、美術評論家で東京藝術大学教授・布施英利氏の「布施アカデミア」受講4年目に突入。