パリへ「行ってきます」 車いすの前田詩生さん、チーフ販売で五輪渡航費確保
パリへ行ってきます-。生まれつき難病「軟骨無形成症」を患い、車いすで生活する前田詩生(しお)さん(10・城廻在住)が、パリまでの渡航費を捻出しようと自身の描いた絵でチーフを制作。今年3月から販売を始め、これまでに約250枚が売れた。パリへの費用は集まり、8月下旬からのパラリンピック観戦に向けてまもなく旅立つ。
3年前、200以上の国と地域が参加した東京五輪の開会式をテレビで観た前田さんは、世界の大きさを感じた。特に、民族衣装を身にまとい入場する選手の姿に魅了され、その光景をスケッチした。次は現地で観戦したい。少女の心に膨らむ夢に、母・可奈さん(43)や、前田さんに絵を教えてきた芸術家・菊池歩さん(53・二階堂在住)が動いた。
前田さんが東京五輪の開会式を描いた絵を生地に。母や菊池さんらでカットして縫合し、ハンカチや弁当包みなどに使えるチーフを3月から販売。往復の航空券代の目安となる100枚を目標に、1枚3千円のオリジナルチーフは早々と5月に完売した。小学4年生への応援は止まず、追加制作してこれまでに約250枚が購入された。
学校の友達、家族や菊池さんの知人、今回の活動を知った市内外の人々が購入。また、制作協力者も現れ、作り手は10人まで拡大。次々と制作する中で前田家のミシンが故障した時には、機械を貸してくれる申し出があるなど、協力の輪が広がっていった。
渡航費・チケット代確保に「ありがとう」
そのおかげで販売数は伸び続け、渡航費に加えて観戦チケット代を賄えるまでに。「ありがとう」。言葉が上手に発せないこともある前田さんだが、とびきりの笑顔で感謝を述べる。
前田さんと付き添う母・可奈さんは、8月27日にフランスに到着し、パラリンピックの開会式、車いすバスケなどを観戦予定。病気によって左の手足が思うように動かなかったり、思いをスムーズに伝えられなかったりする前田さんだが、思い描いたパリ行きの夢をまもなく実現する。
”真夏の大冒険”に向け旅のしおりを作成。持ち物には、日本の衣装・着物を用意済みだ。