シンデレラ役・金子扶生が魅せる等身大のヒロイン~ロイヤル・バレエの名作『シンデレラ』を「英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ 2024/25」で上映
英国はロンドンのコヴェント・ガーデン、「ロイヤル・バレエ&オペラ(RBO)」で上演された、ロイヤル・オペラ、ロイヤル・バレエ団による世界最高峰のオペラとバレエを、特別映像を交えて映画館上映する「英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ」。今シーズンも全10作品<バレエ6作品/オペラ4作品>を各1週間限定で全国公開する。ライブでの観劇の魅力とは一味違う、映画館の大スクリーンと迫力ある音響で、日本にいながらにして最高峰のオペラとバレエの公演を堪能できる至極の体験を味わえる。
2025年2月21日(金)からは、ロイヤル・バレエによる華麗なファンタジーの名作『シンデレラ』(振付:フレデリック・アシュトン 音楽:セルゲイ・プロコフィエフ)が、TOHOシネマズ日本橋ほか全国で1週間限定公開される。日本出身のプリマ・バレリーナ、金子扶生が主演する本作の見どころを、舞踊評論家、森菜穂美氏の解説とともに紹介する。
1948年に初演されて以来、ロイヤル・バレエをはじめ、世界中のバレエ団で上演されてきた『シンデレラ』。この作品は、英国ロイヤル・バレエの創立に深く関わり、ロイヤル・スタイルを作り上げたフレデリック・アシュトンによって振り付けられた。実は、英国の振付家として初めて手掛けた全幕バレエ作品であり、20世紀の英国バレエの歴史において最も重要な古典作品の一つとされている。
森氏は本作におけるいくつかの注目ポイントを挙げる。まずは、ヒロインのシンデレラ役を演じた金子扶生について。金子は、2021年にプリンシパルに昇進して以来、次々と大作に主演し、今やロイヤル・バレエを代表するプリマ・バレリーナとなっている。本作でも難しい技術が求められる中、「お姫様に変身した姿の華やかさ、精緻な技術と健気さの中に聡明さを湛えた繊細な表現力が光ります」と森氏は金子の見事な演技力に賞賛を送る。
また、王子役のウィリアム・ブレイスウェルについて、森氏は「(ウィリアムは)この役に共感できるところや温かみを持たせたいと語っており、実際に温かい人柄や優しさを感じさせる、理想的な王子様としてノーブルに、そして伸びやかで華麗な踊りを見せています」と述べる。金子が演じるシンデレラとのクラシカルなパ・ド・ドゥにも注目だ。
また、シンデレラの義理の姉たちもひときわ存在感を放つ。森氏は、「英国伝統のパントマイム劇の要素を盛りこんで、女装した男性ダンサーがユーモラスに義理の姉たちを演じて舞台狭しと暴れまわります。このことによって、彼女たちがシンデレラをいじめているわけではなく、家族の一員としてお互いが実は仲良しであることも示されています」と解説。アシュトンによる振付は、単なるシンデレラ・ストーリーに留まらない様々なイメージやキャラクターたちに富んでいることも大きな魅力なのだ。
さらに、本作では実力派日本人ダンサーたちの活躍にも注目だ。2020年に入団した日本出身の若手ソリスト・五十嵐大地は道化役を演じ、2幕の舞踏会の冒頭から驚くべき高さの跳躍を連発し、その踊りに思わず目を奪われる。夏の精を演じたファースト・ソリスト、佐々木万璃子は、夏の気だるさを情感豊かに表現する。星の精や舞踏会では佐々木須弥奈の姿も見ることができる。
世界最高レベルのダンサーたちによる華麗な踊り、プロコフィエフの美しく壮大な音楽、ファンタジックな変身場面や豪華絢爛な舞踏会とファッショナブルな衣裳、愉快な登場人物たちと余韻の残るハッピーエンドで、誰もが幸せな気持ちで劇場を後にできる名作を、ぜひ映画館で心ゆくまでご堪能いただきたい。
※森菜穂美(舞踊評論家)による『シンデレラ』解説全文は下記↓URLにて閲覧可能です。