男性不妊の検査って?費用や検査期間、セルフチェックまで【専門医が解説】
「男性不妊」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?実は、不妊の原因のおよそ半分に男性側が関わっているといわれてるのです。男性不妊かどうかを判断する「検査」について、半世紀にわたり男性不妊研究に力を注いできた不妊治療クリニック「オーク会」の泌尿器科専門医(男性不妊専門医)が解説します。
男性不妊の検査にはどのような種類があるの?
子どもを望んでから1年以上経っても妊娠しない場合、不妊と考えるのが一般的です。
不妊カップルの2組に1組は、男性側にも原因があることが分かっています。
男性不妊治療の第一歩は、まずクリニックで全般的な男性不妊診察を行うことから。
男性不妊の問診では、最初に下記のようなことを伺います。
・現在の服用している薬について(糖尿病薬、抗うつ剤、抗がん剤、AGAの服用の有無など)
・喫煙歴
・病歴
その後、視診・触診をしながら以下を診察します。
・体重、身長、指極長の測定
・顎髭の生え方、恥毛の程度
・精巣の位置(精巣内に無い等)
・精巣に問題がないか
問診や視診、触診と同時に行われるのが、一般的にイメージされることの多い男性不妊の検査「精液検査」です。
精液検査については、WHOが量や精子濃度、運動率など細かくガイドラインを設けており、検査日による変動が大きいこともあり少なくとも2回の検査でベースラインとなるデータを見ることが有用とされています。
調査でも判明していますが、同じ人でも日によって検査結果の数値が大きくぶれることがあるためです。
意外かもしれませんが、造精機能の判定に血液検査も同時に行います。
これは、男性ホルモンや精子を作る機能が低下していないかを検査するためです。
その他、性機能障害(勃起不全、性交障害、射精障害など)に関する相談や指導、薬の処方を行うこともあります。
費用や時間はどのくらいかかる?
男性不妊診察や精液検査のほかにも、さまざまな検査があります。
治療の進め方、現在どの治療段階であるか、お二人の年齢などによって受ける検査は変わるため、金額や結果が出るまでの期間もそれぞれです。
一般的なケースとして参考にしてください。
【男性不妊の検査にかかる費用と期間(参考)】
※医療法人オーク会で検査をした場合の参考費用です。
■1回目の男性不妊診察:約2,500円
問診、触診、視診、超音波検査を行います。
診察結果はその日にお伝えすることが可能です。
■精液検査:約400円
量や精子濃度、運動率など8つの項目を検査します。初診時に検査することもできます。
検査結果は当日お伝えすることが可能です。
■血液検査:約2,200円
男性ホルモンや精子を作る機能が低下していないかを検査します。初診時に検査することもできます。
検査結果は約1週間でお伝えすることが可能です。
その後、精液検査で異常が認められた場合や治療を進行していく中で、以下のような細かい検査を行うこともあります。
精子がDNAの損傷を受けている割合(断片化率)が高いかどうか(精子の質)を見る検査及び精液中の酸化還元電位(酸化ストレス度)を測定する高度精液検査があります。
不妊症の男性は精液中の活性酸素濃度が高く、抗酸化物質の濃度が低い可能性があるため、最近では必須の検査となっています
■DNA断片化指数検査(DFI検査):約13,200円
■精液中の酸化還元電位(酸化ストレス度)を測定する検査(ORP検査):19,470円(DFIとセット)
胚発育不良の原因、および精液検査が良好なのに受精率、妊娠率の低下を来す原因となるDFI/ORP検査が重要でです。検査結果は約3週間でお伝えすることが可能です。
検査が多く複雑に感じられるかもしれませんが、あまり不安に思わず医師と相談しながら必要な検査を決めてくださいね。
※DFI検査、ORP検査については保険適用外のため全額自己負担、その他の検査費用は原則保険適用となります。保険適用になる検査の場合でもドクターの判断により自己負担となる可能性がありますので、詳しくは担当医に確認してみてください。
検査のタイミングはいつが良い?
男性の検査のタイミングについては、聞かれることが多い項目です。
不妊治療は、男性だけ・女性だけが頑張るのではなく、原因を見つけるためにも最初から男女一緒にスタートをすることが大切です。
そのため、可能であれば同時に検査を行うことを強く推奨しています。
例えば、男性不妊で精子の運動率が悪く治療を行った場合、すぐに良くなるわけではありません。
3ヶ月程度(治療によっては半年)と、時間がかかるものです。
その間に女性ができる治療もあるため、最初から2人で受診することで、治療のスケジュールや選択肢が広がりますよ。
セルフチェックは何をすればいいの?
まずは、下記に心当たりがあるかどうかを考えてみてください。
・成人してからおたふく風邪にかかったことがある
・性病にかかったことがある
・タバコを吸っている
・日常的に強いストレスを感じている
また、自宅で検査を行えるキットも販売されています。
■プレグナクト
濃度、量などを郵送で検査できるキットです。
■TENGA MEN’S LOUPE メンズルーペ
スマホを使ってご自宅で簡単に精子を観察できるキットです。
セルフチェックを心がけることも大切ですが、専門医としてはクリニックでの診察を推奨しています。
キットは自宅でできるため手軽ではありますが、医療的に正確な検査結果として認められているわけではありません。
あくまでもクリニックに行く前の心の準備、目安として活用することをおすすめします。
最後に
不妊治療を始めようと考えるとき、女性と違い、男性はまだご自身が「病院に行く必要がある」という認識がない方も多いです。女性だけが治療を続け、なかなかお子さんが授からないために男性の検査も行ってみたら男性側に原因があったというカップルを以前から多く見てきました。
今は以前よりも最初から2人でクリニックを訪れるカップルが増えましたが、まだまだ男性不妊についての認知は低いように感じています。
不妊治療はどちらかだけが頑張るのではなく、最初から男女一緒にスタートをするのがとても大切です。
まずはお2人で不妊治療ができるクリニックを訪れてみたり、お近くの男性不妊専門のクリニックを探してみたりしてみてください。
監修者
◆岩本晃明(いわもと てるあき)
日本生殖医学会認定生殖医療専門医、日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医
国際医療福祉大学病院リプロダクションセンター(婦人科)の中に日本で初めて独立した男性不妊部門を設立。周囲の医師の協力や複数の医院からの紹介で徐々に認知が進む。また、男性不妊ドクターズ(NPO法人)を立ち上げ、夫婦二人での診察の重要性を啓蒙し続けている。現在は医療法人オーク会の男性不妊外来で診察を行っている。
医療法人オーク会