韓国・突然の戒厳令から一週間。市民はどう感じてた?生活はどうだった?
韓国の突然の戒厳令から一週間。韓国の政治は混乱が続いていますが、この一週間、市民の生活はどうだったのか。今日は、韓国で暮らす方々に、お話を伺いました。
大学の正門前では【光化門に集まれ!】というビラを配る学生が。
まずは、ソウル西部の学生街、新村(シンチョン)にある延世(ヨンセ)大学に通う、26歳の日本人の女性のお話です。
・「授業だけは行ってたので、外の様子っていうのは学校と家の往復になってしまうんですけど、徒歩の距離なので、あんまりいつもと変わることなく、普段通りでした。
あ、でも、学校の正門で、ユン・ソンミョルを解任せよ!大学生は今すぐ光化門に集まれ!って書かれてるチラシを配ってる学生がいて、韓国人の学生は、そういうデモに参加するとか、積極的に行動してるなっていうのを、すごく感じました。
昨日(6日土曜日)とかも、iPhoneの緊急の通知が来てて。デモによる、たぶん人が溢れちゃってるから、光化門のところ、国会議事堂の前に、たぶん電車を止まらなくするように、してたみたいで、ずっと警報が鳴っていました。普段ないですね、梨泰院のときも、すごいいっぱい来てたんですけど、普段こんなにバンバンバンバン来ること無いので、そうのも見て、ちょっとあんまり外、今は出ない方がいいかなっていう風に感じます。」
大学の授業も、通学路もいつも通り。でも大学に着くと、デモを募るビラを配る学生がいて、しかも、午後にはビラを配る学生も、立て看板や横断幕のようなものも、増えていったそうです。
こちらの学生さんは、戒厳令が出たというのを朝起きて知って、なんのことだか分からず、すぐにインターネットで調べました。すると、国会議事堂の前(光化門)でのデモの生配信がされており、デモに参加している人の多さにも、軍人の多さにも、本当にびっくりして、日本人の学生仲間と【私たち大丈夫だよね】とメッセージを送りあったそうです。
彼女たちの生活に、直接の変化は今のところ無いですが、「本当の意味では普通では無いかなって感じるので気をつけなきゃなと思ってます。」と話していました。
旅行関係です。4日の朝は予約キャンセルが増えて心配でした。
続いては、ソウルの南東部、江南(カンナム)にお住まいの41歳の男性。ソウル駅近くで、旅行関係のお仕事している、キムさんに話を聞きました。
・「最初はすごく心配してました。でも朝起きたら何も無かったように、失敗した戒厳令とニュースに流れてて、ちょっとホッとして職場に向かいました。
一番変わったのは初日。韓国の旅行、新しく予約する人たちがすごい減ったり、予約をキャンセルする件数が増えて、ちょっと不安だったんですけれども、五日ぐらい目からは、日常に戻ってちょっとひと安心してるところです。
そうですね、どちらかと言ったら、なんだったんだって思うんですね。確かに、自分の気持ちがこうだからやりました、間違えました、申し訳ないです、とは言ってますけれども、もう無かったことには出来ないので、ホントになにやって・・・もうどういう気持ちでやったのか、どこを反省して、自分がこれからどういう風にこれを回復していくのかっていう方向性については全く説明がなかったので、もうちょっと明らかに国民に説明してほしいなっていう風に思ってます。」
旅行関係のお仕事は、戒厳令発令の直後に影響があったんですね。キムさんのところでは、今のところ日常に戻っているということでしたが、1月からは韓国旅行の値段が安くなり集客を期待している時期。それなのに、今後の情勢によっては、また影響が出るかもしれないと心配していました。
キムさんは、今回の戒厳令の発令に対しては、なにやってんの?とあきれた感じ。ちなみに、41歳のキムさんは、44年前、前回の戒厳令のときは、まだ生まれてない世代。今回、緊急速報が来た時、戒厳令?なんだそれ?と思ってネットで調べた、と言っていました。(もちろん学校で習ったし、両親からも聞いていたけど、ピンと来なかったんです、ということでした。)
この50年の発展を、巻き戻されたような気持ち
そしてもう一人。ソウル市の隣、金浦市に住む49歳の大学講師、パクさんにもお話を伺いました。
・「どれくらい驚いたかを説明するのは難しいけど、寝れなかったくらいです。なぜなら、昔、戒厳令が出た時は、軍人たちが、反対する市民たちに対して暴力をふるったので、また今回も同じようなことが起こらないか、それが一番心配でした。
う~ん、今、私が思うことは、韓国という国が、今まで様々な分野で発展してきたじゃないですか?経済を始め、エンタメ、そして、民主主義の発展。それが、今回、大統領が戒厳令を出したことで、この50年間の発展を昔に巻き戻してしまったようなものだということです。」
この50年を、巻き戻してしまった、台無しにされたような気持ち、と、とても失望し、とても怒っていました。
戒厳令は解除されたけど、あってはならないことが起こったと思っている。だから、ソウルだけではなく、大きな都市を中心に、全国でどんどん人が集まって、デモが大きくなっています、と。
軍は国民を守ってくれる存在になった、と信じてる
そしてさらに上の世代の人たちの反応について、先ほどのキムさんが見聞きした、身の回りの年配世代の方々のお話です。
・「前は、今と違って、その時の軍っていうのは、すごい怖い存在だったんですけども、この何十年か、軍っていう存在は国民を守ってくれる存在だって、みんなもそういう風に信じてますので、今になったら想像できないね、2024年にもなって、前と同じこと起きたら、韓国はもう終わりでしょ、そういうことありえない、っていう風に、お年寄り方はおっしゃっています。」
前回の戒厳令を体験した世代は、あんなことは今はありえない、軍は国民を守る存在になったんだ、と信じているんです。これは、この44年間積み重ねたものの結果ですよね。
韓国は、巻き戻ったのか、とどまれたのか。
まだまだ混乱の中にいる韓国市民は、巻き戻るのか、とどまるのか、どちらになるのか・・・。不安を抱えた日々になります。
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材・レポート:近堂かおり)