食の宝庫!! 海・山・里が生み出す、“美食の郷 越前坂井”
2024年、北陸新幹線の延伸により、東京から約3時間と近くなった坂井市。福井県内最多の年間440万人の観光客が来訪するまちであることは、意外にも知られていません。東尋坊や丸岡城など名だたる観光地はもちろん、坂井市を旅する魅力のひとつが、皇室にも献上される三国港で水揚げされた「越前がに」や「甘えび」、「若狭牛」などに代表される豊かな食材。そんな“美食の郷 越前坂井”を体感すべく、ミシュラン星付き店シェフが腕を振るった「豊穣のめぐみフェア」をレポートします。
海・山・里を兼ね備えた食の宝庫「坂井市」
2025年1月24日、「豊穣のめぐみフェア」が開催されたのは、東京・南青山にある「ふくい南青山291」。ミシュランの星を持ち、【Äta】や【GOOD LUCK CURRY】など人気店を多数手掛ける掛川 哲司シェフが、坂井市の食材の魅力を最大限に引き出した料理と、福井県を代表する地酒がずらりと並びました。
「代官山のミシュラン星付きレストラン【Äta】へ伺った際にそのおいしさに感激して、坂井市の魅力的な食材を、ぜひ掛川シェフに料理していただきたい! という想いから、今回のイベントが実現しました」
こう語るのは、「豊穣のめぐみフェア」を主催した(一社)DMOさかい観光局 代表理事の刀根 亨さんです。
福井県の北部に位置する坂井市は、南北は約17km、東西は約31kmにもおよぶ、横長の地形。西は日本海に面し、「越前がに」や「甘えび」を誇るだけでなく、東は丘陵地から中山間地へと奥深く、若狭牛や坂井市発祥のブランド米「コシヒカリ」など、海や大地の恩恵を受けた、まさに食の宝庫です。
毎年、皇室へ献上されることでも有名な「越前がに」と「甘えび」
今回の目玉となった「越前がに」は、例年11月6日から翌年3月20日までが漁期で、まさに今が旬。ひと口でわかる濃厚な旨みと上品な甘みは格別です。そのおいしさをダイレクトに味わうため、調理は『越前がにと冬野菜のアイオリ』、『越前がにとアボガドのワカモレ』とあえてシンプルに。
三国港を中心に水揚げされる甘えびは、福井県内の漁獲量の7割近くを占め、ねっとりと舌に絡みつくような食感と、強い甘みが特徴です。
米づくりから手掛ける酒蔵【久保田酒造】と、お隣の永平寺町を代表する【黒龍酒造】
さらに、『生牡蠣とエシャロットビネガー』、『福井サーモンのミキュイ』、『カジキマグロのカツレツ山椒タルタルソース』など、新鮮な海鮮を使ったメニューが次から次へと登場し、ゲストはフリーフローで選べる地元の地酒と共に、ペアリングを楽しみます。
1844年創業の【久保田酒造】からは、骨太な味わいでやや辛口の「超特撰大吟醸 駒ヶ瀬屋」と、雑味がなく袋吊り搾りならではの優しい口あたりの「純米生原酒 鬼作左袋吊り搾り」。米づくりから手掛けている伝統ある酒蔵らしく、米の旨みを生かしたバランスの良い食中酒が人気です。
ミシュラン獲得店シェフも感激した、食材のクオリティやバリエーション
冬の味覚であるイノシシは、掛川シェフのアイデアによってポッサムに。柔らかく仕立てられたイノシシ肉は、しっかりと旨みを蓄え、食べ手を刺激します。
さらに『九頭竜舞茸とアンチョビのタルトフランベ』、『真鯛と越前がにのパイ包焼き』、『華小町トマトとジャガイモのニョッキ』に続き並んだのは、『マハタのオリエンタル姿蒸し』。
イベント前に2日間かけて三国港や農家など生産者さんを巡ったという掛川シェフにとって、坂井市の食材のクオリティやバリエーションはとても印象的だったと言います。
「実際に伺ってみると、坂井市の恵まれた地形や持っている魚種の多さにびっくりしましたし、生産者さんの丁寧な育て方にも感動して帰ってきたので、今日の料理はなるべくそのままの味をダイレクトに味わってもらうよう心がけました」
とりわけ、魚介料理をメインとする【Äta】掛川シェフを唸らせたのが、若狭のハタ。
「初めてみた時、まさかハタだとは思わなかったくらい(笑)、びっくりするほど丸々と太っていて、筋肉質でもあり、調理欲が湧きましたね! もともと中華料理でよく使われる魚なので、今回は香りを強めにつけるオリエンタル蒸しにしました」
魚にクローズアップされることが多い、坂井市にあって注目の「若狭牛」
最後は『和牛の炭火焼き 椎茸とカチョカバロ』と、〆となる『せいこがにのパエリヤ』。「齊藤牧場」の若狭牛は、キメの細かい柔らかな肉質が魅力。掛川シェフは、炭火でローストして、そのしっかりと味の濃い肉味を表現しています。
魚にクローズアップされることが多い坂井市にあって、若狭牛を専門に育てる「齊藤牧場」は昨年、熊本から赤牛を仕入れ、時代に合った赤身のおいしいお肉を育てようと、放牧をスタートした注目の畜産会社。「放牧牛も順調にいけば、2025年の年末頃から、地元料理旅館を皮切りに卸しがスタートできそうです」と、代表取締役の齊藤 力さんは言います。
現代は、遠方の食材もオンライン上で注文したり、流通に乗って手元に届きますが、今回のイベントでは、福井県坂井市の生産者や蔵元と、都内の料理人である掛川シェフがダイレクトに繋がり、多くのアイデアや、BtoBの関係性を確立するヒントが飛び交っていたのが印象的。素材の味に惹かれた食べ手にとっても、実際に現地を訪れてみたいと、あらためて感じる機会になりました。海・山・里を兼ね備えた“美食の郷 越前坂井”の今後に注目です。