【知られざる神戸名物・野球カステラの歴史を紐解く】野球カステラ愛好会・代表が語るその魅力とは
多様な交流が行われ、誇るべき文化が数多く生まれてきた神戸。その中でも長い歴史を持ち、地元民から愛されてきた「野球カステラ」をご存じでしょうか?
このたびKissPRESSでは、その伝統を残そうと活動する「野球カステラ愛好会」の代表で、神戸市職員の志方さんにインタビューを敢行!手掛ける職人ですら知らなかったその歴史を紐解き、伝統を守るために奔走する活動の裏には一体どんな想いがあるのでしょうか?
【野球カステラとは】
「野球カステラ」とはその名の通り、野球に使われる道具を型取ったカステラのこと。瓦せんべいを手掛ける店が”サブメニュー”として販売していたもので、和菓子や洋菓子の製造を行う「本高砂屋」が大正時代に始めたとされています。
―まずは「野球カステラ」との出会いを教えてください
「地元産業活性化」を推進する市職員としての業務で、瓦せんべい屋さんを周っていたところ野球カステラに出会いました。調べていくと市外にも数件お店があるものの、ほとんどのお店が神戸にあることが分かったんです。「これは神戸ならではのものに違いない!」と思いました。
歴史的な背景を調べていくと、神戸では旧居留地などに住む外国人たちがスポーツクラブを作り県内外の人たちと試合を楽しむなどといった文化があったそうです。当時ハイカラな要素があるものはよく売れたので、そこから野球道具を型取ったカステラが販売されたのかな?と考えています。
―兵庫県といえば甲子園のイメージがあって、そこから来ているものなのかと想像していました!そこからどうして愛好会を立ち上げたのですか?
「野球カステラ自体、店の近隣の人以外には広く知られていない」という現状があったんです。伝統を守るためにも情報発信を行わなければ、と感じたことが5年ほど前にプライベートで愛好会を立ち上げたきっかけです。
どこにどんな店があるのかが分かるマップ作りのほか、野球カステラの歴史に関する調査、あと焼き型は新たに作ることが難しいのでその管理をしています。最近では「焼き型バンク」を立ち上げ、野球カステラを作りたい人への貸出なども行っています。
―部屋にもかなりの型がありますが…これは1つ1つ違っているんですか?
そうです。店によって少しずつ違っています。あと今の野球道具とは違った形のものも多いです。例えばカバンのような道具がありますが、研究するうちに、これが審判がカウントを覚えておくために使われていた道具「インジケーター」であることが分かってきました。
ですが職人さんの中にはカバンだと思っている人もいて、「実はこういう道具みたい」と説明すると驚かれる方もいましたね。こうして道具を研究しているうちにその面白さにも目覚め、当時のものに近い野球道具の収集も始めてしまいました(笑)。
―本当にたくさんの研究をされているのが目で見て分かります。職人さんとのやり取りの話もありましたが、愛好会の活動は色々な方面への影響があるのではないでしょうか?
県外からのお問い合わせもあったりして、少しずつ認知度が上がってきているなと感じています。お店の人からは「コロナ禍でも、カステラだけは売れ続けた」「店を支えてくれている」という話もありました。
―いつのまにか”サブ”ではなくなり、神戸の名物として愛されているのですね。最後に志方さんの思う「野球カステラ」の魅力と、愛好会としての活動の展望を聞かせてください。
たくさんの人に知られていたというわけではなかったのに100年もの歴史があり、ロマンを感じられます。また店によって型や味が違いそれぞれの歴史があるのはもちろんですが、そこには神戸の歴史、町の成り立ち、魅力が詰まっているのもポイントです。
産業文化のストーリーを次世代につなげられるのは、現役のお店があってこそ。職人の高齢化や跡継ぎ問題など様々な課題はありますが、店を残したり人を増やすために、出来ることは根気強くやっていきたいですね。
志方功一代表
神戸市職員として勤務する傍ら「野球カステラ愛好会」を立ち上げ、その伝統と歴史を守る活動を行っている。それ以外にも兵庫県ゆかりのドリンクである炭酸飲料や、昭和生まれのレトロ遊具なども研究するなど地域活動を幅広く展開中。