【書ギャラリーきよら】千年の都で「かな書」体験。御所西エリアで雅な文化を楽しむ<京都市上京区>
およそ1100年間に渡り、日本の政治と文化の中心であった京都。「千年の都」とも称されるこの地で平安貴族によって雅な文化が育まれました。大河ドラマ「光る君へ」(NHK)では、紫式部が流麗な「かな文字」で源氏物語を描いているシーンが映し出されています。
それを観て「私も素敵にかな文字を書いてみたい!」と思った人もいるのではないでしょうか。そこで、京都御所西に「かな書」が体験できるギャラリーがあるとのことでお話を伺ってきました。
文化の薫り漂う御所西にある、書ギャラリー
京都市営地下鉄烏丸線「丸太町」駅 2番出口を出て左折。歩いてわずか1分のところにあるのが「書ギャラリーきよら」さんです。通りを挟んだ目の前には京都御苑が見える雅な文化の薫り漂うエリアです。
京都で4代続く書家一族
「書ギャラリーきよら」の代表を務めるのは日比野由佳(ひびのゆか)さん。京都で「かな書」の伝統を守り引き継ぐ日比野家の4代目でいらっしゃいます。
日比野家は「昭和の三筆」と称される、初代、日比野五鳳(ひびのごほう)氏(1901-1985)、2代目、日比野光鳳(ひびのこうほう)氏(1928-2023)、3代目の日比野博鳳(ひびのはくほう)氏(1960-)が「かな書」の世界を広げ、4代目、由佳さんによって令和の時代まで脈々とその伝統が受け継がれています。
「きよら」に込められた初代の思い
ギャラリーがオープンしたのは2023年5月。近くに京都御所があるのでたくさんの観光客が行き交う烏丸通沿いにあります。建物は、もとは絵画のギャラリーだったそうです。
ここなら、観光がてら気軽に立ち寄ってもらえるのではないかと、「かな書」の体験もできる書のギャラリーをオープンしました。
いまでは県外のみならず、海外からの観光客も立ち寄り、「かな書」の裾野を広げることができているそうです。
“きよら”とは、濁りのない透明感のある清らかな心持ちのこと。初代 五鳳氏が書に向かうとき「清心」の心構えを大切にしていたそうです。日比野家は代々、その思いを受け継いできたことから、清らかな心でかな書を楽しんでほしいと「書ギャラリーきよら」と名付けました。
読めなくてもいい。余白や散らしを楽しむ
切れ目なく続く流麗な文字。かな文字で書かれた作品の美しさに思わずため息が漏れてしまうほど。しかし残念ながら何と書かれているのか分からない。だからちょっと敷居が高く感じてしまう人もいるのではないでしょうか。
これについて、「読めない、難しいという方がいらっしゃいますが、読めることが全てではないんですよ」と、由佳さん。ひとつの作品の中でどこに余白を作るか、墨の濃淡をどこにつけるかという具合に、様々なバランスを考えながら作品を作っていきます。それらには正解はありません。まるで答えのないパズルを楽しむ感覚ですと話してくれました。
大河ドラマ効果で「かな書」体験者が増加
大河ドラマ「光る君へ」では、平安貴族が流れるような「かな文字」を書いているシーンが度々描かれています。俳優の吉高由里子さん演じる紫式部が、小筆で源氏物語を書いている姿はとても美しいですね。
「私もあんな風に流れるようなかな文字を書いてみたい」そんな風に思った方は少なくないのではないでしょうか。
「書ギャラリーきよら」では、かな書ワークショップで体験することができます。講師の先生が丁寧に教えてくれるので全くの初心者さんであっても安心。道具一式の準備も不要です。
ワークショップ予約者の約3割が大河ドラマ「光る君へ」がきっかけで申し込んだ人だそう。特に40.50代の女性が多いとか。
ワークショップの詳細・ご予約は「Otonami(おとなみ)」から。
「古都・京都で学ぶ流麗な「かな書」の世界 −美しい日本語を書作品に−」
https://otonami.jp/experiences/kiyora/
ワークショップや教室はギャラリー奥の楕円形のテープルにてイスに座って行います。なので足がしびれることはないのでご安心を。この楕円形のテーブルは会話が生まれるようにと、ギャラリーをオープンする際に作ってもらったのだそうです。
薫りと音楽。心を落ち着かせて書に向かう空間
他にもおもてなしの演出バッチリで、耳に心地良い程度の音楽が流れ、かすかにお香の薫りが漂っています。
こういった空間は、心を落ち着かせて書に向き合って欲しいという思いから作り出されました。心を落ち着かせ、息を吸い、吐きながら筆を持つと次第に雑念が消え、書くことに没頭していきます。漂ってくるお香や墨の香りのおかげでいつの間にか深い呼吸ができていることに気づきました。
心を落ち着かせ、今この瞬間を大切にする。書道を通して日常にマインドフルネスな時間を取り入れてもらえたらというのが由佳さんの目指しているところだそう。
ワークショップの始まりは、かなの歴史や日比野家の系譜や作風を学ぶところから。その後、墨を磨り、筆の持ち方をレクチャーされます。筆は博鳳氏がプロデュースした細筆で、他にもきよらオリジナルの道具を使うことができます。
準備ができたら次は線や文字の練習に移ります。まずは先生がお手本を見せてくれるのでしっかりと目に焼き付け、タテやヨコ線、円を書いていきます。
1本の線といえども太くなったり曲がってしまったりと最初はうまく書けず落ち込みそうになります。しかし、先生の分かりやすいアドバイスを受け、何度か挑戦すると次第に細くまっすぐな線が書けるようになるから不思議です。
世界に1つだけの「かな書」作品作り
ある程度慣れてきたらいよいよ作品づくりに入ります。
まずはお手本選びから。新古今和歌集や万葉集・季節の言葉など、たくさんの見本の中から書きたい言葉を選びます。
つぎに台紙選び。ワークショップでは扇か色紙のどちらかを選ぶことができます。
扇の場合は、装飾用の千代紙も2種類まで選べます。
色紙の場合は、好みの色紙を1種類選びます。たくさんの絵柄があるので好みのものや、先に選んだ歌に合うようなものを選びます。
先生のレクチャーを受けながら、選んだ和歌を半紙に何度も書いて練習します。
そしていよいよ本番です。
じつは取材に伺ったこの日、由佳さんのご厚意で参加者の方と一緒に私もワークショップの体験をさせていただきました。(写真は取材とは別日のものです)
色紙の場合、半紙に書いていたときよりも墨の入り具合や筆の滑りに違いを感じました。しかし書き終わった後に「きよら」と書かれた落款を押すと素敵な「かな書」作品が完成! 私たち参加者から感激の声が上がりました。
この日、参加された方にお話を伺うと、「かな文字は読めないけど綺麗だな、書いてみたいなと思っていました。今回思い切って体験してみて楽しかったです。ますます書道をやりたくなりました」とおっしゃっていました。
ほかにも体験者のアンケートでは、何十年かぶりに墨を磨る、筆を持つ体験ができて、あっという間に感じるほど楽しかったと言ってもらえることも多いそうです。
そして、予約サイトOtonami満足度ランキングの関西編では第2位を獲得(2024年4月~6月Otonami調べ)したそうで、人気のほどがうかがえます。
https://lp.otonami.jp/ranking#kansai
もっと学びたい方にはかな書教室も開催しています。
「教室では好きな水差しや文鎮なども選んでもらえるんですよ」と、由佳さん。
お稽古は月2回。初心者からベテランの方まで通ってらっしゃるそうです。お道具を持っていない人も徐々に揃えてもらえばよく、それまではお借りできるとのこと。
教室についての詳細はホームページをご覧下さい。
https://kiyorajapan.official.ec/p/00007
興味を持ったときが始めるチャンス
パソコンやスマホが普及し、手で文字を書く習慣が少なくなった現代。ましてや筆でかな文字を書くとなるとハードルが高いと思うかもしれません。しかし、かな文字は日本で生み出された世界に誇る文化です。
少しでもかな書に興味を持ったなら躊躇せず、まずは体験してみませんか?
「書ギャラリーきよら」でのワークショップはおよそ90分。優しく丁寧なレクチャーを受け、作り上げられた作品を手にすると、もっと上手くなりたいと思うはず。興味を持ったときが始めるチャンスですよ。
ワークショップ予約サイト(Otonami)https://otonami.jp/experiences/kiyora/
※情報は2024年9月時点のものです。
■スポット情報
店舗名:書ギャラリーきよら
住所:京都市上京区烏丸通丸太町上ル春日町425
電話番号:075-791-1005
営業時間:毎週 金・土・日11:00~17:00(ワークショップと教室は別時間)
交通:地下鉄烏丸線 丸太町駅2番出口より徒歩1分