新潟の酒蔵が披露した〝こだわりの白いツブ〟 「ビーズではありません」...正体に2.1万人感動
「ビーズではありません」――そんなつぶやきと共に投稿された〝つぶ〟の写真が、多くのXユーザーを驚かせている。
2025年2月5日に新潟県新発田市の酒造メーカーである「菊水酒造」がX公式アカウント(@KIKUSUI_PR)から投稿したのは、白く透き通るような、とても小さな〝つぶ〟の群れ。
すりガラスのような質感だが、呟きはこう続く。
「精米歩合【23%】の酒米です」
なんと、これは米粒だという。玄米を表面から削っていき、残った23%が、このビーズ状のモノ、というわけだ。
ポストには2万1000件を超えるいいねのほか、
「精米するとここまで 研ぎ澄まされるのですね......」 「心白の白さが美しい」 「まるで酒米のブリリアントカットのようだわ」 「白いイクラですね」 「なんて贅沢。技術の極」 「23%ってかわいい」 「のこりの77%の行方が気になる」 「やっぱり日本酒はこだわりが作る贅沢な酒ですね」
といった絶賛の声が相次いでいる。
こんなに小さく、丸く削るのは想像力を働かせるまでもなく大変な作業のはず。いったいどうして、ここまで削るのか?
Jタウンネット記者は菊水酒造に詳しい話を聞いた。
一度は途絶えたとされる「幻の酒米」
Jタウンネットの取材に応じた菊水酒造の広報担当者によると、この酒米(酒造好適米)の品種名は「菊水」だ。代表的な酒米である「越淡麗」や「五百万石」の祖先の米で、〝幻の酒造好適米〟とも呼ぶべき米だった。1945年には途絶えた品種だと言われていたそうだ。
「育成のむずかしさはあるものの雑味の出にくい特徴に魅力を感じ、さらに、社名と同じ菊水という名前に強い縁を感じたことから、酒米『菊水』を復活させることを決意しました」(菊水酒造」広報担当者)
そして、新潟の専門農家グループ「共生の大地にいがた21」の手により、1997年にわずか25粒の種籾から酒づくりができるまで収量を増やすことに成功したという。
そんな菊水を精米歩合23%まで削るには、長い時間が必要だという。表面から少しずつ、ゆっくり削っていくからだ。
「精米歩合23%まで磨くには、1800キロで約90~100時間程度かかります」(菊水酒造広報担当者)
ちなみに本醸造(精米歩合70%)の場合は、1800キロで約10時間。本醸造の約10倍も時間をかけるのだ。
ちなみに、削った時に出る米ぬかは、こめ油、米菓の原料の一部として使われたり、家畜の飼料にしているとのこと。
さて、菊水酒造のお酒で精米歩合23%の米を使っているのは、純米大吟醸酒「蔵光」だ。
純米大吟醸酒の条件とは、精米歩合50%以下の米を原材料とすることである。
なぜ、それを大幅に下回る精米歩合23%まで削るのか。その理由を尋ねてみた。
「澄みきった味わいを追求して、限界まで米を削った結果、弊社での精米の限界値が23%でした。 それ以上削ると、正直なところ酒造りに使える心白を含んだ米なのか砕米なのかの判別が難しいということもあり、当社ではここを限界値にしました」(菊水酒造」広報担当者)
精米歩合の限界にまで挑戦した結果、ということらしい。
限界まで削った結果として現れる、神秘的な美しさを放つ〝つぶ〟。
その姿が多くの人々を感心させ、大反響を呼んだことについて、「社員一同大変驚いています」と広報担当者。また、次のようにもコメントした。
「日本酒は、精米歩合や原材料、仕込みの差で、全く違った仕上がりになる、非常に奥深い世界です。 少しでも多くの方に、日本酒の楽しさや魅力を知っていただけたら大変嬉しいです」
限界まで磨かれた米の酒、「蔵光」。そのことを知って飲めば、また新たな感動があなたに訪れるかもしれない。
菊水酒造
〒957-0011 新潟県新発田市島潟750 公式サイト:https://kikusui-sake.com/home/jp