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【耐え難い悪臭】神話・伝承に登場する「臭すぎる」怪物たち

草の実堂

画像 : 白容裔 public domain
画像 : 臭い! public domain

人間には視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚の五感が備わっている。

嗅覚は、新鮮な食べ物と腐敗した食べ物を判別したり、獣の糞の臭いを察知して危険を回避したりする役割を果たしてきた。

しかし、神話や伝説の世界では、臭いで人間を死に至らしめる恐るべき怪物伝承が語り継がれている。

今回は、そうした「臭い」にまつわる伝説の存在について解説する。

1. 白容裔

画像 : 白容裔 public domain

白容裔(しろうねり)は、妖怪画家・鳥山石燕(1712~1788年)の画集『百器徒然袋』で描かれた妖怪である。

布巾が時を経て、竜のごとく変化したのがこの妖怪であるとされる。

石燕による解説文には、「白うるりは徒然のならいなるよし」とあり、これは「徒然草」に登場する「しろうるり」という謎の人物のことを指している。

このことから、白容裔は石燕の言葉遊びによって生み出された妖怪だと考えられている。

その正体がボロ布であるという設定から、白容裔は酷い悪臭を放つ存在だと解釈されることがある。

人間の体にまとわりつき、その臭みと粘液で悶絶させる、公害のような恐るべき妖怪として、今日では語られることが多い。

2. オッケルイペ

画像 : オッケルイペ 草の実堂作成

人間にとって、もっとも身近な臭いものといえば、「屁」であろう。

屁には硫化水素・インドール・スカトールなどの臭味成分が含まれ、強烈な刺激臭を発する。

そんな屁を司る世にも珍しい妖怪が、北海道のアイヌ民族に伝わるオッケルイペである。

人が一人で家にいるときにこの妖怪は現れ、「ポアッ」と音を立てて屁をこく。
その臭いは激烈であり、普通の人間が耐えられるレベルではないという。

それも一発のみならず、二発、三発と、家中のあちこちで放屁の音は鳴り響き、遂には辺り一面が悪臭で包まれてしまう。
まさに災害のような妖怪といえよう。

この妖怪への対処法は、こちらも負けじと屁をこくことである。
そうするとオッケルイペは人間の屁に恐れをなし、去っていくのだそうだ。
都合よく屁が出ない場合は、口で放屁音を真似するだけでも、効果があるとされる。

アイヌの言語学者・知里真志保(1909~1961年)の著作『えぞおばけ列伝』には、人間に化けたオッケルイペの伝承が記されている。

ある船頭が客を舟に乗せたところ、その客は爆発的な屁をかまし、舟を粉砕したという。

「奴はオッケルイペだったのか」

そう思った時には既に遅く、乗員は全員川に投げ出され、ずぶ濡れになってしまった。

数日後、オッケルイペが性懲りもなく舟に乗ってきたため、これを撲殺したところ、跡には黒い狐の死骸が残っていたという。
この黒狐の毛皮は、高く売れたそうだ。

3. フヴッコ・カプコ

画像 : フヴッコ・カプコ 草の実堂作成

フヴッコ・カプコ(Hvcko Capko)は、アメリカの先住民族・セミノール族に伝わる怪物である。

その姿はオオカミに似ているが、体格はロバほどもあり、さらに馬のような尾と、非常に長い耳を持っているとされる。

常時凄まじい悪臭を放っており、その臭いを嗅いでしまった者は、もれなく病気になってしまうという。

ありとあらゆる病の媒介者として、セミノール族はこの怪物を非常に恐れていたそうだ。

4. ボナコン

画像 : ボナコン 草の実堂作成

ボナコン(Bonnacon)は、ヨーロッパにおいてその存在が信じられていた、世にも恐ろしい怪物である。

古代ローマの博物学者・ガイウス=プリニウス=セクンドゥス(23~79年)の著作『博物誌』にて、存在が言及されている。

それによると、ボナコンはマケドニア(バルカン半島中央部)に生息する怪生物であり、その姿は牛に似ているが、馬のようなたてがみを持つとされる。
また、硬くて太い角も有するが、内側に反り返っているため、戦いに役立つことはないそうだ。

この生物の最大の武器は「糞」であるという。

ボナコンは外敵から逃げ回りつつ、信じられない量の糞をひり出す。
その量は、約8000平方メートルもの土地を、埋め尽くしてしまうともされる。
さらにこの糞は大変臭いうえに、異常な高熱を帯びており、触れた生物は一瞬で焼け焦げて死んでしまうそうだ。

文字通り「ヤケクソ」というわけである。

5. メフィティス

画像 : メフィティス 草の実堂作成

メフィティス(Mefitis)は、古代ローマやイタリアにおいて信仰されていた、悪臭と毒ガスの女神である。

火山や温泉、間欠泉などから噴き出る、硫黄を含んだ蒸気を神格化した存在だと考えられている。
イタリアは火山が多いため、この女神を祀る神殿は様々な場所に建てられていた。
かの火山灰に沈んだ町「ポンペイ」でも、メフィティスは信仰されていたという。

古代ローマ人は、地面の亀裂などから噴き出る毒ガスで動物を殺し、この女神へ供物として捧げていたとされる。
そうすることでメフィティスは、毒ガスの被害から人間を守ってくれるだろうと考えられたからである。

また、メフィティスの名はスカンクの学名にも用いられており、シマスカンク(Mephitis mephitis)とセジロスカンク(Mephitis macroura)の2種類が現存している。

スカンクといえば、猛烈な刺激臭を放つ動物として名高く、その激臭ゆえに、悪臭の女神であるメフィティスの名が冠せられたのである。

参考 : 『えぞおばけ列伝』『博物誌』他
文 / 草の実堂編集部

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