【今週の『忘却バッテリー』の話題は?】どっちも勝っちゃいけないの!? 読者の心は板挟み状態……桐島が巻田をイジり倒すのはなぜ? 2人の過去も話題に<175話>
マンガ誌アプリ「少年ジャンプ+」で連載中のみかわ絵子先生による大人気漫画『忘却バッテリー』。中学時代に“怪物バッテリー”として名を馳せた天才投手・清峰葉流火と捕手・要圭が、要が記憶喪失になったことをきっかけに野球部のない都立高校に入部し、かつて自分たちが挫折させた球児たちと再び野球に打ち込む日々を描いた高校野球漫画です。
ギャグ調に描かれる男子高校生たちの日常と野球に真剣に取り組むゆえにぶつかるシリアスな問題との絶妙なバランスが多くの読者の心を掴み、2024年4月にはアニメ第1期が放送され、第2期の制作も決定しています。また、主題歌となったMrs. GREEN APPLEの「ライラック」はその年のレコード大賞を受賞し、こちらも大きな話題となりました。
隔週木曜日はそんな『忘却バッテリー』の更新日! 5月29日には最新175話が公開されました。前話ではついに試合が動き、小手指は氷河に1点先制されてしまいます。氷河は、エース・桐島が小手指・瀧の投球モーションを完璧にトレスするという非凡な技を使って、完璧に対策をしていたのです。ここから試合はどう動いていくのでしょうか。
本稿ではSNSに寄せられた反響とともに、175話の内容の振り返りや考察をしていきたいと思います。
※本稿には、175話のネタバレが含まれますのでご注意ください。
まだまだ続く氷河のターン! 巻田の成長に胸が熱くなる!
175話でフォーカスされたのは、氷河の2年・巻田。巻田と言えば自信過剰で桐島にイジり倒されおもちゃにされている姿が印象的ですよね。
そんな巻田の入部当初からのストーリーが描かれましたが、なんと入部したての頃から先輩相手に「自分が一番!」と言い切る生意気ぶりを見せていて、上下関係のある部活動に所属していた筆者は、読んでいてちょっと肝が冷えてしまいました……。
しかし、そんな巻田をオモロいと感じ、積極的にイジるようになった桐島は、ふざけ調子のやり取りの中に時折“本気”を滲ませます。特に読者の多くが「ゾクッとした」「鳥肌立った……」などとコメントしたのは糸目の桐島が開眼して言った「お前 ホンモノ知らんやろ」のひとコマ。
「ホンモノ」とはもちろん、弟・夏彦のこと。普段のにこやかな表情から一転した真剣な表情は、兄である自分を超えるどころか世界を狙えるほどの才能を、すぐそばでまざまざと見せつけられてきた桐島の苦悩を物語っています。
要は幼馴染である清峰の才能をそばで見せつけられてきた苦悩を抱えていますが、桐島秋斗が才能の差を突きつけられたのは弟という幼馴染よりも近しい人物であり、さらに同じ投手というポジションの相手。それは私たちの想像をはるかに超える苦しさだったのではないでしょうか。
そんなバックグラウンドを持つ桐島から見れば、自分さえも超えられないのに大口をたたく巻田は井の中の蛙のように見えたでしょう。しかしその一方で、自分よりも上手い人を前にしても自分の才能を信じることを止めず、自分が一番になるため努力を欠かさない巻田は、眩しい存在でもあったのではないでしょうか。
だからこそ、巻田の大言壮語が真実になるように、イジり倒しながらも後輩を導き、その成長を見守ってきたのだと私は感じました。だからこそ、バットを振った瞬間に「意地でも打てやボケェ」と桐島らしからぬ熱い言葉が出たのだと思います。
暴言のようなエールに力技で応えた巻田は見事ヒットを出し、氷河は追加点を獲得! 読者は「桐島の巻田への思いに泣けた……」「巻田が打ったところでヨッシャ!って声出た」「氷河大好きおじさんなので涙が……」と大盛り上がり。桐島と巻田の関係性が深堀された熱い回となりました。
どっちも勝っちゃいけないの!? 読者の心は板挟み状態……
桐島・巻田コンビの過去と試合展開で胸を熱くさせられる一方で、小手指としてはどんどん窮地に追いやられている状況。読者の多くが「小手指に勝ってほしいけど、氷河にも勝ってほしい」という矛盾した感情を抱いているようです。
巻田がヒットを打ったシーンでも「打ってうれしい、打たれて辛い…」「巻田が打てたの嬉しいのに、瀧と智将が打たれたの辛いよお」と二つの感情に苦しむ様子がうかがえます。
本作の良さはどんな球児(たとえ名前のないモブでも)にもドラマがあることをきちんと描いている点だと思うのですが、それゆえにどのチームも応援したくなってしまうんですよね。
「心がふたつあるみたいでしんどい……」「どっちも勝っちゃダメなんですかねぇ!?」「みんな主人公じゃんみんな勝って甲子園行けるってことでいいじゃん!!」と情緒を乱される読者が続出しているようです。
しかしながら、ここまで打たれてしまうと瀧の精神面も心配になってきてしまいます。胆力のある選手ではありますが、少なくとも本作で描かれる中では彼がこんなに打たれるのは初めてのことです。
また、瀧は過去が描かれたり人間性が掘り下げられたりということがされていない人物でもあるため、ここから瀧のバックグラウンドが描かれることを期待する声も上がっています。
7人もの彼女と本気で付き合いながら野球にも本気で向き合う謎多き球児・瀧。彼はどんなドラマを持つ球児なのか、私は気になって仕方ありません。さらに、この窮地を智将がどう乗り越えていくのかも楽しみなポイントです。智将・要圭がこのままやられっぱなしで終わるとは思えません!
頼もしいチームメイトとともに苦境を乗り越え、成長していってほしいと思います!(とはいえ、氷河が負けるところも見たくないですね……一体どうすればいいんだ……)