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発達障害息子、中学は特別支援学級?通常学級?わが家の悩みと決断

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発達障害息子、中学は特別支援学級?通常学級?わが家の悩みと決断

監修:鈴木直光

筑波こどものこころクリニック院長

中学でも特別支援学級に在籍?小6の秋頃、中学校の見学へ

息子のトールは、現在公立中学校の特別支援学級に在籍しています。小学校の頃から特別支援学級だったので、小学6年生の秋頃、中学生になったらどのクラスに在籍するかを決めるため、中学校へ見学に行きました。

この中学校見学は6年生全員で中学校を見学しに行くものとは違い、トール本人と母親のわたし、それから小学校の特別支援学級の担任の先生の3人で行きました。校長先生から、学校生活や行事のことなどのお話を聞き、学校全体の案内をしてもらって、特別支援学級にも見学に行くというものでした。

その時の息子の様子は、少しだけ緊張していたのか口数は少なめで、静かに案内を聞いていました。その姿に成長を感じたのを覚えています。特別支援学級の教室に入った時に、前年まで小学校の同じクラスに在籍していたお友だちがいて、なんとなくホッとしたような様子でした。

「通常学級でもやっていけそう」だけど……担任の先生の意見は

小学6年生の頃のトールは、国語と算数を特別支援学級で、それ以外は通常学級で授業を受けていましたが、通常学級で過ごす時間も何の問題もなく、みんなと一緒に授業を受けることができていました。

勉強面で大きく遅れているということもなく、生活にも問題がなかったので、中学校では通常学級に在籍しても問題ないのではないかと、わたしは考えるようになっていました。

しかし小学校の特別支援学級の先生からは、特別支援学級に進学することを勧められました。
先生によると、トールは通常学級で授業を受けて特別支援学級のクラスに帰ってきた時、ホッとした様子を見せることが多かったようです。

集団生活には馴染めるようになってきたけれど、苦手であるという本質が変わっていたわけではなく、集団を離れて1人でホッとできる時間がトールには必要なのではないかというのが先生の考えでした。

特別支援学級に在籍していれば、そのような時間を取りながら生活ができるけれど、通常学級に在籍すると難しくなるかもしれないとのことでした。

小学校の頃とは違い、あまり迷うことなく決断できた在籍クラス

そのような先生の意見やトール本人の考えもあり、中学校で特別支援学級に在籍するというのは、すんなりと決断できました。小学2年生の頃、通常学級と特別支援学級のどちらかに決める時には、あんなに長い時間悩んだのに……と、積み重ねてきた時間は有意義なものだったと改めて感じました。

中学校で特別支援学級に在籍していると、内申点がつかずに高校進学に不利になるという話を聞いたことがあったのですが、トールの通う中学校では在籍クラスにかかわらず、通常学級の生徒と同じように成績がつけられるとのことでしたので、その点で悩まなくてよかったのはすごく大きなポイントでもありました。

中学進学にあたり、もう一つの大きな悩みだった「転校」

在籍クラスをどうするかという以前に、わが家には転校するかどうかという問題もありました。トールが小学6年生の間、夫が転勤のために単身赴任をしていたからです。卒業まであと一年というタイミングだったので、小学6年生での転校は見送ったのですが、中学校進学と同時に夫の転勤先に引っ越しをするか、決めなければなりませんでした。

しかし引っ越しをすると、トールのことを知ってくれている友だちや、放課後等デイサービス、習い事や病院なども変わらなければなりません。やはり6年間かけて築いたトールの人間関係をリセットして、また一からつくり上げていかなければならないと思うと不安が大きく、結局、夫の赴任先にはついて行かずに残ることに決めました。トールが中学校に進学した今、周りの子との関係も良好な様子を見ていると、やはりそのまま進学して間違いではなかったなと感じています。

この先の高校進学の時に、もしかしたらまた引っ越しを考えることになるかもしれません。
どんな土地でどんな学校を選ぶのかまだ全く分かりませんが、これからもトールが希望する進路を選んでいけるよう、サポートしていけたらと思っています。

執筆/メイ

(監修:鈴木先生より)
トールさんのASD特性を考えると、あまり環境を変えるのは好ましくないので、小学校の顔見知りのいる中学校に進学したことはよかったと思います。高校からは普通科・工業科・商業科・園芸科・料理科・フレックススクール・通信制など自分で選べるので、自分に合った高校へ行ければいいのです。知的に遅れがないような場合でも、知能検査(WISCなど)の結果次第で、各指標の数値に凸凹がある場合は特別支援学級でのサポートが必要になる生徒さんもいます。

今回のように、ASD特性から一人の時間を大事にしたい、特性による困りごとや学習面での苦手に対するサポートが必要、あるいは通常学級では集中できず別の教室のほうが勉強できる……など、いくつかのポイントを加味したうえで本人が特別支援学級を希望するなら、そこに在籍していたほうが丁寧だと思います。所属クラスが通常学級であっても、特別支援学級であっても、毎日登校できればいいのです。本人にとって環境のいい居場所があり、悩みを丁寧に聴いてくれる相性のいい先生がいれば、中学を卒業して進学・就職へと道は開けるものと私は常々考えています。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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