海のマチなのに…函館に実はなかった水族館 70年の悲願「地元の海を体感」実現目指す
「函館にも水族館がほしい」
「イカのマチ」北海道函館市で、ある施設を作ってマチを盛り上げたいと市民の気運が高まっています。
10月、函館で行われたトークイベント「道南EXPO!2025」。そのテーマに、地元の人たちの心が躍りました。
『みんなで道南に水族館がある未来を描く』
函館に「水族館」を作ろうというのです。
水族館構想の発起人である齊藤いゆさんは「水族館に行ったこと、楽しんだことは、一生なくならないと思っている」と力強く話します。
海のマチなのに、ありそうでなかった水族館。
市民も「子どもが水族館が大好きで、函館にも水族館がほしい」と注目しています。
「きょうこの日がキックオフとなって、新しい水族館の構想につながったらうれしい」と話す齊藤いゆさん。
ふくらみ始めた夢は叶うのか、取材を進めました!
海のマチなのに…
「ホシザメというサメなので身の質が透明なんですよ」
齊藤いゆさんが働くのは地元の水産卸会社。そのかたわら、『おさかな専門シンガーソングライター』として、魚にフィーチャーした楽曲の制作や、海や魚とふれあうイベントも手掛けています。
なぜ、水族館を作りたいと思ったのでしょうか?
「海のマチなのに子どもたちが海と接する機会がなかったり、魚に触れる機会がないなと肌で感じていて、海と生きる人たちと関わる機会を作れるのが水族館じゃないか」
漁業の不振と後継者不足で、活気が失われつつある函館。
齊藤さんは「使われない魚の新商品」をプロデュースするなど、函館を活気づける取り組みをしています。
「道南は、森もあって川もあって海もあるところなので、生き物の変化も楽しめる水族館があってもいいのではないか」
函館の水族館は何度も計画された「夢」
函館では、これまでにも「水族館」設置の構想がありました。
70年前の1950年代、道が水族館の建設を計画。函館、小樽、室蘭が候補地にあがり、結果、室蘭に開設されました。
さらにその30年後には、函館港に浮かぶ人工島の公園「緑の島」に水族館を設ける構想が、経済界から浮上。
水族館建設期成会の担当者は、1984年取材当時の映像で「港の中に水族館なんてのは初めてだと。決して我々にしては夢ではないということ」と話しています。
しかし、バブル経済の崩壊でその「夢」も泡と消えてしまいました…。
そして今度は、函館市が建設を計画。
道南にすむ海洋生物を集めた「大パノラマ水槽」が目玉でしたが、財政難で実現に至りませんでした。
今こそ、「変化」を伝える水族館を
北大名誉教授でスルメイカ研究の第一人者の桜井泰憲さんは、当時計画の立案に携わったメンバーの1人です。
「函館の街に沿った将来構想として、世界で見られないような生き物が多く普通に泳ぐ水槽があって、それを楽しんで見られる場所があればいい」
海洋環境の変化で、マチの水産業も変化するなか、水族館構想の発起人である齊藤いゆさんは、水族館が地元の海と生き物のことを考える場になればと思っています。
「海の環境の変化が楽しめるように、どんな魚がきても今の『地魚』を伝えられるような水族館があるといいかな」
民間主導は歓迎だけど…
市民レベルでわいてきた水族館構想を、トップはどう考えているのか。
函館市の大泉潤市長に聞きました。
「函館市は人口減少で経済が縮小して、非常に大きな課題だと思う。その課題解決につながるのであれば、もし水族館建設のプラン・アイディアや動きがあったときに我々としても協力していくことになるのではないかと考える」
「民間主導の取り組みは歓迎」と前置きしつつも、資金の支援などには、慎重な姿勢を示しました。
齊藤いゆさんは「70年間函館に水族館を建てたいと熱く思っていた人たちの思いを、この函館にみんなで建てたいと思います」と夢を膨らませます。
めざす水族館の姿
めざすのは、漁師の仕事体験や地元でとれる魚を展示し、併設するレストランで「地魚」を味わえるなど「地元の海」を体験できる水族館です。
それを市民みんなで一緒に考える「まちづくり型水族館」を目指すと意気込んでいます。
齊藤さんたちは、11月27日に実行委員会を立ち上げて本格的な活動を始める予定です。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年11月3日)の情報に基づきます。