【インド興収1位】人気スター俳優のツルピカ頭&ぶっ飛び展開のW衝撃!ボリ&コリウッド本格タッグ作『ジャワーン』
興収No.1!シャー・ルク・カーン最新作
以前、『PATHAAN/パターン』の紹介をした時に、「2023年のボリウッドは“シャー・ルク・カーン・イヤー”だった。いや、ボリウッドことヒンディー語映画界だけではない、インド中が“シャー・ルク・カーン・イヤー”となったのだ」と書いた。その立役者となった作品が、2023年9月に封切られインド興収第1位となった本作『JAWAN/ジャワーン』だ。
ボリウッドの“キング”ことシャー・ルク・カーン(以下、シャー・ルク)と、南インドのタミル語映画界で、“大将”ことヴィジャイ主演作のヒットを連発した監督アトリーがタッグを組む――そのニュースだけでインド中をアッと言わせたこの『JAWAN/ジャワーン』が、ついに日本でも公開である。
え、この人が主人公? な刺激的ルックス
※物語の設定に一部触れています
「ジャワーン」は「若い、勇敢な」という形容詞と、「青年、兵士、警察官」などの意味で使われる名詞とがあるが、ここでは「戦う勇敢な兵士」というぐらいの意味だろうか。できあがった『JAWAN/ジャワーン』は、意外性にあふれる作品となった。
冒頭の導入部からして、インド北部の国境の村を舞台に、大けがを負って村人に助けられた男が、隣国から攻め込んで来た残虐な軍人たちに1人で立ち向かう、という不思議なエピソードが展開する。村人は、シャー・ルク演じる彼を「メシア(救世主)」と呼ぶのだが、では、この男が主人公なのか?
と思っていると、舞台はいきなり30年後のムンバイに飛んでしまう。地下鉄ジャック事件が起き、リーダーと6人の手下が姿を現すのだが、そのリーダーを演じるシャー・ルクの格好がまた、意外性にあふれすぎて、ファンなら卒倒もの。彼の頭は、つるっつるの丸坊主なのだ。私は見ていて玉羊羹(風船羊羹とも。食べたことありますか?)を連想したほどで、針でつつくとパーンと表面が割れそうな感じのつるつるぶりである。この男が、本作のヒーローなのだろうか――?
意外すぎる展開に“ついていけない”ほどの面白さ!?
そんなつるつる男と若い女性6人からなる地下鉄ジャック実行部隊は、事件鎮圧のため出動したフォース・ワン(テロ対策特殊部隊)のナルマダ・ライ警部(ナヤンターラ)と交渉し、農業大臣を連れてこさせる。そして、インドの農業政策の貧弱さを鋭く指摘、困窮して自殺に追い込まれる農民が多いことを述べて、農民たちへの補償金を要求する。武器商人カリ(ヴィジャイ・セードゥパティ)の娘が地下鉄車内に乗り合わせていることを盾に取り、カリに巨額の身代金を振り込ませて、それをすぐさま全国の困窮農民の銀行口座――70万件もある――に分散振込するのである。
ここまで来てやっと、つるつるシャー・ルクと6人の女性たちが義賊であることがわかるのだが、義賊エピソードはもう一つ続き、なるほど、6人の女性たちの身に起こったことが義賊行動を起こさせる要因となっているのだな、と納得できる。そして、続いてはどの女性のエピソードが……とか思っていると、ストーリーはまたまた別の転換を見せる。もう、意外性に溢れすぎていて、ついていけないほど楽しいのが、『JAWAN/ジャワーン』なのである。
世界興収200億超にも納得の中毒性! 豪華カメオ出演も
こんな複雑な脚本を書いたのもアトリー監督自身であるが、共同脚本のS.ラマナギリヴァーサンは監督が以前からタッグを組んでいるベテラン脚本家で、今回シャー・ルクを迎えて、2人が張り切った結果がこの意外性メガ盛り脚本になったのでは、と思う。意外性だけではない、ユーモアもギャグも、優美な恋物語にメロディアスな歌のシーンも、そして見ごたえのあるアクションシーンもきちんと盛られている。
中でも出色なのが、後半に出てくるトラック輸送団とそれを追うシャー・ルクたちのアクションシーンで、登場する様々なアクション設計に目を奪われる。ここまで張り切らなくてもよいのでは、と思うぐらい中身の濃い作品となった『JAWAN/ジャワーン』は、何度見ても楽しいので、きっとまたリピーターが続出することだろう。
カメオ出演も豪華で、ディーピカー・パードゥコーンはカメオの枠にはとうてい収まらない、素晴らしい演技を見せてくれる。今年の9月8日に、ランヴィール・シンとの初めての赤ちゃん、女の子のママとなったディーピカーだが、本作では男の子の母親役を演じている。
もう1人の重要なカメオ出演者は、公式サイト等で言及されていないので口チャックにしておくが、脱力系の面白い使われ方をしていて、ご本人も面食らったのではないかと思う。カメオと言えば、アトリー監督もソング&ダンスシーンに一瞬出演し、シャー・ルクとお揃いの衣装で歌い踊るサービスぶりを見せている。
インド映画の楽しさをとことん味わわせてくれる『JAWAN/ジャワーン』、114億8千万ルピー(206億6千万円)という世界興収は伊達じゃない。この、シャー・ルクとアトリー監督の南北インド映画ブレンド大作を、心ゆくまで楽しんでほしい。
文:松岡 環
『JAWAN/ジャワ―ン』は2024年11月29日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー