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実力派ボーカリスト 国分友里恵【最新インタビュー】シティポップ人気のキーマン登場!

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2024年10月09日 国分友里恵のベストアルバム「国分友里恵 ベスト・コレクション」発売日

国分友里恵初めてのベストアルバムがリリース


現在も続くシティポップ人気の中、キーマンとなるアーティストのアルバムがアナログで再発されたり、キャリアを俯瞰できるベストアルバムの発売が相次いでいる。その中でも再評価著しい女性ボーカリスト、国分友里恵初のベストアルバム『国分友里恵 ベスト・コレクション』が10月9日に発売された。

海外でも大きな注目を集める「Just a Joke」「I wanna Be With You」をはじめ、これまでリリースされてきた7枚のアルバムとシングルの中から、レーベルを越えてセレクトされた珠玉のナンバーを収録。さらには角松敏生とのデュエット「It's Hard To Say Good-Bye〜さよならは愛の言葉~」や中山美穂への楽曲提供でミリオンセラーとなった「ただ泣きたくなるの」の国分バージョンも収録されている。

ファンキーなナンバーやシティソウル、バラードまで幅広い音楽性を持つ国分友里恵だが、一方では幾多のレコーディングにコーラスとして参加、さらにはSHAMBARA(シャンバラ)のボーカル、山下達郎のツアーコーラスなど、その活動は多岐に渡る。

今回、国分友里恵自身に、そのキャリアを語っていただくインタビューが実現した。1985年に結婚、公私に渡るパートナーとなった作編曲家・プロデューサーの岩本正樹氏も同席のもと、その芳醇な音世界と凄腕ミュージシャンたちとの邂逅を紹介。日本の音楽シーンにおける彼女の重要度があらためてお分かりいただければ幸いです。

好きで聴いていたのはアレサ・フランクリン


―― 音楽との出会いはいつ頃からでしょうか。

国分友里恵(以下:国分)小さい頃から歌が好きで、元々クラシックピアノを習っていたんですが、中学になってからは声楽も始めるようになって。音大に進む道も考えていたんですが、高校の頃、アマチュアのコーラスグループに入ったり、友達とバンドを始めたりして、次第にポップスに興味が向いていったんです。

―― プロになるきっかけはどんなことでしたか。

国分:NHKの教育テレビ(現:Eテレ)の番組でコーラスをやったり、『8時だョ!全員集合』の合唱隊のアルバイトをしたり(笑)。そんなことを経験していくうちに、金子マリ&バックスバニーのベースだったナルチョ(鳴瀬喜博)のバンド、QUIZにボーカルで参加することになったんです。それが『MYTHTIQUE』というアルバムで、金子マリさんがリードボーカルだったのですが、レコード会社との契約があって参加できなくて、私が差し替えで入ったんです。それがプロの世界に入るきっかけですね。

―― 当時、お好きだったアーティストは?

国分:好きで聴いていたのはアレサ・フランクリン。あんな声が出せたらいいなと憧れていました。コピーしていたのはパティ・オースティンとか、ジャズ、R&B系のボーカリストです。

ファーストアルバムは林哲司プロデュース


―― 1983年に当時の RVC/air RECORDS からファーストアルバム『Relief 72 hours』が発表されますが、これは林哲司さんのプロデュースですね。

国分:ナルチョのバンド、QUIZのコーラス隊は “Fates” という名前で、私と桑田りんちゃん、佐藤めぐみちゃんの3人。その中から誰か林さんがプロデュースをしたい、ということになり、最終的に私になりました。多分林さんの描くポップセンスと私の声が合う、と思われたみたいです。昨年、林さんの作曲活動50周年記念コンサート『ザ・シティ・ポップ・クロニクル』にも出演させていただき、パンフレットには “教え子みたいなものです” とか書いてくださって、すごく嬉しかったです。

―― 今回のベストアルバムには、『Relief 72 hours』から林さんが作曲した「恋の横顔」「Love Song」「Just a Joke」のほか、野力奏一さん作曲の「スノッブな夜へ」など5曲が収録されています。

国分:野力さんはこの頃、ご自身のバンドもやっていて、メンバーも重なっていたんですね。「スノッブな夜」はそれで書いてもらった曲です。同じ頃、私も彼のファーストアルバム『NORIKI』(1983年)に参加しています。

―― 今回のベストには未収録ですが、佐橋佳幸さんが「Weekend Love」という曲を作曲されていますね。

国分:佐橋くんは友達だったんですよ。ナルチョのバンドで私と一緒にやっていた桑田りんちゃんは、最初、佐橋くんが結成したUGUISSの初代ボーカリストだったんです。

―― このアルバム、演奏メンバーに青山純さん、伊藤広規さんなど、山下達郎さんのリズム隊が参加していたり、作曲にも達郎バンドのギタリストだった椎名和夫さんが参加。一方で井上鑑さん、林立夫さん、今剛さんなどパラシュートのメンバーも参加されたり、とてつもなく豪華ですね。

国分:メンバーは林さん経由で集めていただいて。椎名さんに関しては、私、その頃難波弘之さんと椎名さんがやっていたGEARというバンドでボーカルをやってたんです。それで椎名さんに曲を書いてもらった、そういうつながりですね。

シティポップの人気曲「It’s Hard To Say Good-Bye〜 さよならは愛の言葉」


―― どの曲も、物凄くファンキーで、パワフルです。ブラコン的なボーカルも、この時代他にいないスタイルでした。そして、デビューの83年には角松敏生さんとデュエットした「It's Hard To Say Good-Bye〜さよならは愛の言葉~」(角松の12インチシングル「Do You Wanna Dance」のカップリング)もリリース、現在ではシティポップの人気曲として高い注目を集める楽曲ですが、角松さんとお仕事されるようになった経緯は?

国分:角松くんとディレクターが一緒で、彼が私に興味を持ってくれたみたいです。あまりいないタイプのボーカリストだったこともあって、角松くんの方から一緒にやろうと声をかけてくれて。レコーディングの後、彼のコンサートツアーのコーラスもワンシーズンやりました。

―― 今回、ベストアルバムに収録されたものは羽場仁志さんとのデュエットバージョンで収録されています。

岩本正樹(以下:岩本)羽場くんは、知り合いのスタジオに彼のデモテープが置いてあったんです。“これ聴いてみてください” と言われ、カセットをもらいました。そうしたら衝撃的な内容で、まだデビューもしていない時期でしたが、そこで一緒にやることになったんですね。その後すごい売れっ子になったけれど、いまだに “国分さんと会わなかったら今の僕はありません” って言ってくれます。

国分:私も彼の曲が大好きになっちゃって、2作目の『STEP』から参加してもらっています。

岩本:100曲ぐらい預かったんですが、その中からチョイスしています。

ビーイング系のミュージシャンが多く参加した「STEPS」


―― 1987年リリースの『STEPS』は、全曲が羽場さんの作曲、アレンジは全て岩本さん。「I GOT YOU INSIDE OUT」などのダンサブルなビートの作品と、アーバンソウルな「I Wanna Be With You」などが今回のベストに収録されています。演奏メンバーにはギターの北島健二さんをはじめ、ビーイング系のミュージシャンが多く参加していますね。

岩本:当時の私がビーイングの所属で、健ちゃんと一緒にレコーディングをしていたので、その繋がりで頼みました。彼のソロはとにかく目立つんですが、カッティングは長田進くんというギタリストがめちゃくちゃいいカッティングをするので、彼にお願いしています。

―― 長田さんは佐野元春さんのハートランドに加入して間もない頃ですね。この時期、国分さんはライブ活動をされていたんですか。

国分:当時、下北沢に “T5” っていうライブハウスがあって、すごく小さな箱でしたが、そこで “野力バンド” や自分のバンドもやっていたんです。

―― 1986年にシングル「流れるままに〜落花流水〜」がリリースされています。西城秀樹さんが主演した『傷だらけの勲章』という映画の主題歌です。

国分:これも林さんの曲ですね。私と秀樹さんのディレクターが同じ方で、それでタイアップが決まったんです。

SHAMBARAのビジュアルプロデューサーは山本寛斎


―― 89年からカシオペアの櫻井哲夫さんと神保彰さんのSHAMBARAにボーカリストとして参加されています。

岩本:ポリドールのディレクターとお付き合いがあって、その人が櫻井さんと神保さんも担当していたので、彼らを中心にボーカルバンドを組みたい、という話が持ち上がったんです。

国分:SHAMBARAはビジュアルプロデューサーを山本寛斎さんにお願いして、ものすごく派手なステージをやったんです。動きとか全て決められて、ステップ踏んで、慣れないことをやりました。私としては面白かったし、評判も良かったんです。

―― SHAMBARAでの活動と前後してリリースされた3作目の『Silent Moon』ですが、ここで国分さんの世界観が確立されている感があります。

国分 そうですね。私も大好きな作品です。

中山美穂に提供した「ただ泣きたくなるの」がミリオンセラーに


―― そして95年、岩本さんの作曲、国分さんの作詞で中山美穂さんに提供された「ただ泣きたくなるの」がミリオンセラーに。

国分:2人で曲を作ってみようということで、私が歌詞をつけて、デモテープを作って、当初は自分で歌うつもりでした。そのテープを何人かのディレクターに渡したところ、中山さんサイドに渡って、ぜひこれを歌いたいというお話をいただいたんです。中山さんご本人が気に入ってくださったみたいで、すごくラッキーなことでした。ドラマの主題歌になるというので、中山さんが歌詞を加筆されたので、作詞は共作という形になっています。

岩本:今回、ベストアルバムに収録されているバージョンは、国分本人の歌詞なんです。

―― この時期に発売された5作目のアルバム『憧憬』は、デビュー作のファンキーなR&Bスタイルから一転して、バラード曲が増えた印象があります。

国分:アルバムのタイトル曲の「憧憬」が、『知ってるつもり?!』(日本テレビ系のドキュメンタリー教養番組)のエンディングテーマ曲に起用されて、それをきっかけにバラード調に路線を変えたんです。

――7作目の『Reservations for Two』というアルバムは、カシーフのプロデュースによるロサンゼルス録音ですが、どうしてこの企画が成立したんでしょう。

岩本:国分のアルバムを ”アメリカのサウンドでやりたい” という話をディレクターが持ってきてくれて、こういう形になったんです。

国分:私も以前、カシーフは好きで聴いていたんですが、うーん、実際にやってみると想像していたのとは違う感じで…。見た目も太っちゃって(笑)、スタジオワークもきっかり5時で終えて、その後、バスケットボールをやりに行くらしく(笑)。プライベートを優先したい人で。日本じゃあまり考えられないですよね。最初はイヴリン・キングやジョージ・ベンソンと一緒にやる話だったんですけどね…

―― 実現していたらすごいことでした。

国分:ねえ。実現したかったけれど、またそれは別予算みたいなことになっちゃうので。でも、周りのスタッフがみんないい人たちで、それだけでも良かったかな。振り返ると面白い体験でした。

16年間務めた山下達郎のコーラス


―― 同じ頃、山下達郎さんのアルバム『COZY』のリリースに合わせた1998年からのツアー『PERFORMANCE ’98-’99』にコーラスで参加されます。

国分:それまで達郎さんのコーラスをやっていたCandee(高尾のぞみ)が亡くなって、それでやはりコーラス担当だった佐々木久美ちゃんから “誰かいない?” と声をかけられて。“私じゃだめかしら” と言ったら、話を通してくれて。達郎さんとお会いした時も “まんざら知らない仲でもないから” と言ってくれて、オーディションを受けて採用されたんです。2014年まで16年間務めました。

―― 達郎さんはやはりコーラスに関しては色々と…。

国分:まあその都度それなりにリクエストはありました。公演時間が長いので、楽しくもあり大変だったりも有り、で(笑)でも楽しい方が勝ってました。ある時、コーラス隊で練習していたら “あんたたち、うまいねえ” とか言われたことがあります。

ポップスだ、讃美歌だという分け方は関係ない、自分が歌いたいものを歌っていけばいい


―― この時期から、現在に至るゴスペルの活動が始まりますが。

国分:まだクリスチャンではなかった時期に “讃美歌みたいな曲を作ろうか?” と岩本と話して始まったんです。それで96年に洗礼を受けました。私は小さい時から歌うことだけに注力してきて、そのモチベートしてくる力がどこからくるのか? と考えたんです。売れているわけでもないし、この先どうしようかとも思っていたんですが、それでも何らかの力が働いているのだから、その力に向かって歌っていこうと思って。“私を歌わせてくれているのは誰ですか?” そんな気持ちで作ったのがこの時期のアルバムです。

―― 音楽を続けていく上でのマインドに、大きな変化があったんですね。

国分:ええ。私が詞を書けるようになったのもその時期なので、何か大きな力があると思ったんです。キリストを信じるようになってからは、讃美歌やゴスペルも歌えるようになりました。信じていないのに歌うことはできないんです。信仰していないのに「アメイジング・グレイス」とか歌う人がいるけれど、私にはできない。もちろん歌うのは自由ですが、私はそういう自己満足が苦手なんです。

―― ポップスと讃美歌の差異を感じることは。

国分:ポップスをやっていて、クリスチャンになったからいきなり讃美歌に変わるのも変だし、自分の中では歌いたいから歌う、という意識もあったので。今となってはもう、ポップスだ、讃美歌だという分け方は関係ない、自分が歌いたいものを歌っていけばいいと思うようになりました。

ベストアルバムの発売に合わせライブも開催


ーー 今回、国分さんにとって初のベストアルバムのリリースとなります。しかも2枚組での発売とあって、これは国分さんが残してきた作品が再評価され、注目が集まっているからこそですが、こういった現在の状況について、どのように思われていますか。

国分:びっくりしています。しかも2枚組というのに耳を疑いました(笑)。もちろん、喜んでいるんですが。

岩本:30年前に評価して欲しかったかも(笑)

国分:でも、私はこれでいい、やっていて良かったな、という気持ちですね。セールスとは関係のない、それより一段上のところで評価されたんだなと思っています。聴き返してみても、こんなに面倒くさいことをやってたんだ!とか思いますよ(笑)。でもミュージシャンにはすごく恵まれていました。それで色々な仕事が広がっていったところもあるのかな。

―― ベストアルバムの発売に合わせ、10月13日(日)には東京・目黒のBLUES ALLEY JAPANでライブも開催されます。

国分:最近、若い子も来てくれて、何年か前に逗子でやった時、19歳ぐらいの男の子に “サインしてください” と言われて “へえー、すみません” とか言っちゃったことがあった(笑)。YouTubeにも英語で書き込みがあったり、私の楽曲が意外な形で広がっていると感じています。みなさん、ぜひ今回のベストアルバム、いっぱい聴いていただいて、ライブにも足を運んでいただき、どんどん好きになってください。

Information
国分友里恵 Best Collection

発売:2024年10月9日
価格:¥3850(税込)
仕様:CD2枚組・全32曲収録・最新リマスタリング・高品質Blu-spec CD2
詳細:
https://lgp.lnk.to/YurieKokubu_BestCollection_PKG

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