最大100万円+αの移住支援金あり!自治体の就職支援で転職すべき5つの理由【自治体の就職支援①】
少子高齢化が進むなか、人手不足は特に地方で深刻さを増している。対策として進むのが、自治体の就労支援。求人情報のWEB公開や、移住+就労の相談窓口などのほか、世帯で最大100万円に子育て加算もある支援金などで、地方への転職をバックアップする。いま知らなきゃ損する自治体の就職支援を大解剖!
掲載:2025年4月・5月合併号
地方創生で人手不足対策、地方企業の求人を支援
田舎への移住を考えたとき、仕事は住まいと並ぶ最大の課題。一方、受け入れる側の地方ではここ数年、人手不足が顕著になっている。コロナ禍からの回復で労働需要は地方でも増えているが、労働力人口は東京圏の南関東と近畿圏を除く地方で、横ばいか減少傾向が続く。地方からは「働き手が得られないのが原因で事業の継続を打ち切った」「担い手が不足して建設工事が滞った」といった声も聞かれ、地域存続の危機とさえいわれるほどの状況にある。
こうした危機感のもと、国と地方自治体は「地方創生」としてさまざまな事業に取り組む。人手不足に悩む地方の中小企業には、都道府県がマッチングサイトを用意して求人情報を無料で掲載。「ふるさと求人」として全国に配信する。また、企業の移住者採用のための活動経費を最大100万円助成。これまで求人といえば地域内だけ、それ以上にエリアを広げる余裕も意識もなかった地方の多くの企業に、UIターン人材を求める環境が整えられている。
WEB、窓口、支援金……地方の手厚い転職支援策
いま移住を考えるなら、各地域の求人情報に手軽にアクセスできる。まずは全国の「ふるさと求人※」のWEBサイトで気になる都道府県を検索。ここには大手の求人サイトにはない、中小企業の求人も掲載されている。さらにサイト内の情報から、各自治体の相談窓口や移住イベントに足を運んだり、リモートでの相談を利用したりすれば、WEB上にはない求人情報を得られることも多い。現職での経験や家族構成など、相談者の状況に応じた提案も受けられる。
希望すれば多くの自治体で、現地の見学のほか、先輩移住者や地域のキーパーソンに直接話を聞くことなどもでき、移住転職をより具体的にイメージできる。また、東京23区から地方への移住転職には、世帯に最大100万円を支給する内閣府の地方創生移住支援事業があるほか、移住転職について独自の助成を用意する自治体も多い。
国の地方創生予算案が前年度の2倍に迫る2025年度。「田舎で仕事」にはリモートワークなども含めて、追い風が吹いている
自治体の就職支援で転職すべき5つの理由
地方では大手の転職サイトに載らない求人情報が圧倒的に多い。そこで利用したいのが、自治体の就職支援。地域の細かな求人情報を得られるだけでなく、移住転職への支援金をはじめ、移住前から転居、移住後まで、さまざまなサポートも受けられる。
理由1|地方での就職は国の制度で最大100万円+αの支援金がもらえる場合あり!
「 地方創生移住支援事業」は国がデジタル田園都市国家構想交付金の1つとして都道 府県に交付するもの。東京23区に在住または通勤する人が、地方に移住して起業や就 業などを行う場合に、移住先の市町村から移住支援金が支給される。補助率は国1/ 2、都道府県1/4、市町村1/4。 2019年度にスタートした事業は年々利用者が増えて、2023年度までの5年間の交 付実績は全国で約1万6000人。2027年度の事業案では1万人の利用が見込まれてい る。支給額や要件は市町村によって異なるので、候補となる自治体の移住相談窓口に問い合わせを。
地方創生移住支援事業でもらえる金額
地方に移住&転職(就業)する場合の、支援金受給の主な要件
対象者移住前の10年間で通算5年以上かつ直近1年以上、東京23区内に在住ま たは東京圏※(1 条件不利地域※2を除く)から通勤している人
※1 東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県 ※2 東京圏内の人口減少率が一定以上(2010〜2020年の人口減少率が10%以上)の 市町村 移住先東京圏外または東京圏のうち条件不利地域の市町村 要件移住先では次のいずれかの要件が必要 ①地域の中小企業や農林水産業 などへの就業 ②地域課題の解決を目的とした起業 ③テレワークにより移 住前の業務を継続 ④市町村ごとの独自要件(市町村が地域や地域の人び ととかかわりがある関係人口として認める要件を満たすこと)
ここは注意!転職や他地域への転居には返還規定あり
移住支援金には自治体によって返還規定も設けられている。全額の返還は申請日から3年未満の間に転出した場合や、1年以内に移住支援金の要件を満たす職を辞した場合など。半額の返還は申請日から3年以上5年以内に転出した場合など。支給の申請期間は就業から3カ月が経過し、移住後1年以内なので、この間に地域や職場になじめるか見極める必要がある。
東京に住んでいない、条件に当てはまらない……そんな場合も諦めないで!
自治体によって対象要件・支援金額がかなり異なるので、まずは確認してみよう!
東京23区内に在住や東京圏から通勤じゃなくてもOK
長野県:愛知県、大阪府からもOK
福井県:一部の市町村で全国からの移住が対象となる独自制度あり
大分県:全国からの移住が対象宮崎県:名古屋、大阪圏、福岡県からもOKなど、いくつかの自治体が独自にエリア要件を緩和している。
最大500万円も?独自の支援金を加算
地域の事情に応じた独自の加算を設ける自治体も多い。宮崎県都城市では、市内でもより過疎化の進んだ中山間地に移住した場合、1人当たり20万円(最大100万円)を加算。これにこども加算(3人まで)を加えると最大500万円の給付額となる(対象は一部近隣地域を除く全国)。
※移住支援金の情報は2024年度の制度をもとにしており、2025年度は変更になる場合があります。詳しい制度の内容や、最新の情報は各自治体のホームページ、または内閣官房・内閣府総合サイトでチェックを。
理由2|忙しい人にぴったり! 現地に行かなくても相談・情報収集ができる
全国の自治体ではWEBサイトのほか、移住や転職相談窓口のスタッフと直接やりとりできる体制を整えている。各都道府県は現地はもちろん、多くが東京や大阪など都市圏に相談窓口を設けて移住イベントを開くほか、個別の相談にも応じている。例えば長野県の場合、東京、大阪、名古屋、長野の窓口での対面、電話、ZOOMでの相談がWEBサイトから予約でき、メールでの相談も可能。
理由3|地域の事情に通じた専門の相談員が、きめ細かにマッチングしてくれる
自治体の相談員は地元の事情に詳しく、希望に応じてさらに絞り込んだ地域や人も紹介してくれる。求人についても、「ふるさと求人」のWEBサイトで紹介されている企業だけでなく、独自のルートの情報を持っている場合もある。移住者に定着してほしいと考える自治体はマッチングに慎重。自治体の転職相談を利用し、経営者の人となりや社風まで考慮して紹介してもらったという話は、移住者の取材でたびたび聞かれる。
理由4|そのほかお得な助成金も漏らさず受け取れる!
地方創生移住支援事業のほか、市町村では独自に移住や転職にかかわるさまざまな助成制度を持つ。下見のためのお試し住宅利用、滞在費や交通費の補助、住宅の取得や新築、空き家の片付けやリフォーム、家賃補助など。なかには自動車教習所の費用補助や、温泉利用券の配布など、地域の資源を生かして工夫を凝らす自治体もある。相談を通じて自治体とつながりを持てば、受け取れる助成がわかるうえ、手続きも支援してもらえる。
理由5|住まい探しや地域生活の不安解消、移住後のフォローまでワンストップで対応
自治体の相談窓口では空き家や公営住宅などの住まい関連や、保育所や学校など教育や福祉についての情報も得られる。また、区費や集落の行事、ごみ出しなど移住先の地域のルールを教わったり、地域へのあいさつの場を設ける、移住者同士や地域のキーマンと交流する機会をつくるなど、地元になじむためのサポートを行う自治体も増えている。年々手厚さを増す移住・転職支援。利用するメリットは大きい。
文/新田穂高 イラスト/関上絵美・晴香